駅などに設置されている大型のデジタルサイネージにはテレビコマーシャルに匹敵するような綺麗な動画が流され、デジタルサイネージの魅力をアピールしているとともに、サイネージを導入したい意欲に駆られるかもしれないが、実際に店舗などに設置してあるサイネージでは、ほぼポスターと変わらないものが多く、両者のギャップは非常に大きい。
JR東日本のトレインチャンネルでも、最初の頃はオリジナルコンテンツを工夫していたが、最近は8割方がテレビコマーシャルのような別動画の流用であるという話も耳にする。テレビコマーシャルが立派な映像を流しているのは制作にお金をかけているからだとすると、予算が無いところで魅力的なデジタルサイネージは無理なのだろうか?
こんな疑問を乗り越えるために、始めるシリーズ②ではコンテンツ再利用の契約条項のことや、始めるシリーズ④では売場に近いところでもコンテンツ作成をすることを提案した。つまりお店の中の非常に限られたスタッフにサイネージの企画・制作・運営を押し付けることは無理難題であって、サイネージ導入の話が持ち上がったとしても、当事者はその大変さを察するから導入に二の足を踏むということもあるだろう。実際に数年前にスタンドアロンのデジタルサイネージを導入したものの、コンテンツの入れ替えはできず、効果も有るのか無いのかわからず、そのうちにハードウェアが不調になって、デジタルサイネージを撤去してしまったというところも結構多い。だから導入後の運用面の面倒を見てもらえるようにならないと、巷での広範なデジタルサイネージ普及は起こらないだろう。
幸いなことにネット・クラウドの時代になったので、しばしばお店に足を運ばなくても、離れた会社からのサービスとして上記のような面倒見はできるようになっている。そもそも動画であれ印刷物であれ、それらが企画・制作されているプロの世界ではとっくの昔にネット利用がされていて、消費者にメッセージを提示する広告や販促の段階のネット化が遅れていたのが、やっと全体がネットでつながるようになりつつある。これはすでにスマホやタブレットを日常使っている人からすると、エッ!というほど前時代的に思われるかもしれないが、こんな時代錯誤が起こるのはネット経由で広告・販促のお手伝いをする業者があまりにも少なかったからだ。いいかえるとこれからネット・クラウドの活用で、今まで手が回らなかった少人数のお店でもデジタルサイネージの運用が可能になると思っていただきたい。
お店がデジタルサイネージ活用に関してやりたいことの代行というのは、いわゆるアウトソーシングにあたり、毎月いくらかの費用はかかるものの、今まで発注していた広告・販促物の見直しや、社内でのそれらに関る内部コスト、今までできなかったことが解決できるメリットなどを総合的に判断すれば、新しいデジタルサイネージは決して余計に費用がかかるものでもないはずだ。むしろ出費が抑えられるように、社内の担当は何をして、どこを外注するのかを上手に切り分けることが重要であって、そういった相談にも乗ってくれるところに、運用面のアウトソーシングをするのがキモになるだろう。
数年前のデジタルサイネージ導入は、とりあえず入れてから考える、という面が強かったように思うが、これからは商品サイクルに合わせた年間の目標を定めて、コンテンツの追加・更新という運用を含めた月次計画をたてて、それを社内担当・アウトソーシングの両者が相談しながら分担して進めていくことで、広告・販促の届かなかったところを埋めていくことができる。導入の規模として考えると、電光看板(参考)でも毎月のリース料がかかっているだろうから、何店舗かがまとまるのであれば、その発展的リプレースとして、ネット集中管理のデジタルサイネージのアウトソーシングが割にあうのではないか。