トップ
「2019年5月」の一覧を表示しています。

2019.5.24

人いきれをつくりだす

デジタル広告においても発展途上国がアツい。ネット広告だけをみるとどの国のWEBもSNSも同じように広告がついているが、リアル広告においては日本は広告の売れ残りが多くなった。昔はビルを建てると屋上に看板スペースがとられることが多かったが、最近では看板のついたビルは少ない。記事『アナログからデジタルへ?』でも、アナログ広告がつかないような場所にデジタル広告も難しいことを書いた。

これが発展途上国だとあちこちに行列ができて、サイネージもやりがいがある。

サイネージの実証実験でも表示装置の横にカメラをとりつけて、顔認識をさせ、表示内容を切り換えようという試みがいくつかされたが、人がこなければ作動できないし、また来すぎてもうまくいかないだろう。何かに役立てるとすると、カメラ映像をもとに時間ごとの通行者数をカウントするくらいが関の山かと思う。

 

病院や交通機関の待ち会い場所も同じで、一見対象がターゲッティングできそうでいて、見てくれる総人数は限られている場合があり、『テレビをつけておけば十分』と考えるところが多い。たいていの人は待ち時間をスマホを見てつぶしているので、それよりも面白いデジタルサイネージのコンテンツを低予算で作るというのはハードルが高すぎる。

そのため、既存の広告ビジネスの延長にデジタルサイネージを考えられるのは、そもそも駅近くの雑踏とか、人いきれのある場所に限られてしまっている。昼間の住宅街に人影がまばらなように、マンションのエントランスであっても昼間は行き交う人は非常に限られる。そこに雑踏の街角と同じようなモデルはもってきにくいだろう。日常的に重要なお知らせがそうあるわけでもなく、自治体広報のようなものも振り向かれにくいだろう。

これといったアイディアとか先例があるわけではないが、マンションや学校など限られた人が出入りする場所では、コミュニティ性のあるコンテンツによって、ちょっと立ち寄ってみてみたいと思わせるような開発がありえるのではないかと思う。

例えば jimoty の『売ります・あげます』なら毎日変わるコンテンツを地域ごとに検索して表示できる。簡単なCMSツールを使って、同一マンションの住民がスマホでアップした情報が、スマホとサイネージの両方に出るような仕組みもできるだろう。

今はポスティングなどもやりにくくなっているマンションが多いので、試供品がピックアップできるコーナーなどを併設すると、若干の収入になるかもしれない。つまり何らかの『人いきれ』を創り出しつつ、サイネージの活用につなげるようなことも考えてみると面白い。

 

 

 

2019.5.17

アナログからデジタルへ?

印刷媒体の減少と反比例するように伸びているデジタルの諸媒体ではあるが、デジタルの世界はデジタル媒体同志の自然淘汰が起こり、サービスを中止するものが次々に現れている。最初に世の中に登場した時には、素晴らしいなあ、とかカッコいいなあ、というインパクトが欲しいのだが、定着させるにはビジネスに叶ったものであるという納得性が重要になる。デジタルサイネージも納得性という点での評価をされるのはこれからであろう。

これは有名な品川駅の頭上にズラッと並んだサイネージで、地方の駅でもこういう設置をしているのをいくつか見かけるようになった。トンネル状の広い空間とマッチした設置の仕方であると思う。だがどちらかというと電車の車内広告の『ジャック』という手法で、ポスターでもあまり変わりはないのではないかという気もする。

これは電通が西武池袋の駅外に掲示した例で、まさに車内広告の『ジャック』の延長上にあるといえる。柱を巻いているデジタルサイネージの方が従になった感すらある。デジタルサイネージができたのだからアナログ媒体は無くすと決めつけるよりも、両方を組み合わせて、よりインパクトの高い演出をする方が賢いといえる。いや、場合によってはデジタルにする必要がないかもしれない、くらいに、デジタルサイネージの意味合いを問うべきだろう。

 

いつも、これでいいのかな? と疑問に思うのは、すでにターミナルではすっかり定着した柱ごとのサイネージである。

この写真の札幌駅は画面が天井近くの上部にあって、雑踏の中でも画面が見やすいという点では偉いのだが、どこの駅でも林立するサイネージにどのように映像を出していくのがよいのかについては、まだ雲をつかむようなところがあって、なかなか納得できるところには至っていない。そのことは広告の付き方からもうかがえると思う。

ある広告会社の話では、アナログ看板形式の以前の年単位の契約金額をデジタルでは稼げないという。それはデジタルの設備費の分だけたくさんの広告をとらなければならないからだが、元来アナログの交通広告は安く、デジタルにした場合に金額的に埋まらなければ値上げをしなければならなくなる。

しかし交通広告の需給バランスは場所によって昇降客数が大きく異なるために格差があり、アナログ広告をとるのも難しいところでデジタル広告に切り替えろというのは難しい。店舗においても同様で、アナログ・デジタル併用によるベストな提案が望ましいのだが、今まではデジタルサイネージの効用一本に絞って推すようなことが多かったのではなかったかと思う。

2019.5.10

チャンネル型コンテンツ

デジタルサイネージの用途として、かなり増えてきていると思われるのが、社内のコミュニケーションや社内連絡用のものである。こういう目的の手段は社内WEBもメールも社内SNSもあるのだが、それでもコミュニケーションは徹底しないものらしく、壁に電子掲示板を設置するところがある。自社ビルの場合にエレベーター内にディスプレイをつければ、ほぼ強制的に目にするようになるといわれたものだが、そんなに普及しているとも思えない。むしろ今は職場にいろんな国の人が居あわせるので、マルチリンガルコミュニケーションの一環として見直されている。この分野は日本での就労に関する共通のコンテンツも考えられるので、個別企業に代わる『専用チャンネル』的な需要があるのではないかと思う。

 

また衛星のトランスポンダがレンタルできるようになった時代に、その1チャンネルを借りて、医院の待合室など向けに専用のTV放送を流しているところがあったが、そういう用途は今はインターネット上のストリーミングになっている。衛星の時代にはアンテナの設置などが必要だったのが、特別に何も用意しないでも『専用チャンネル』というサービスができるようになった。受益者が費用負担をするeラーニングの世界ではかなり定着していると思われるが、医院向けなどは広告などで費用を埋めなければならなくなり、新たな難しさがある。

 

一般に無償でコンテンツを提供しているデジタルサイネージにおいては、ゼロからコンテンツを制作する予算をとっていないところが多く、むしろすでに放送やDVDやeラーニングをしているコンテンツホルダーと組まなければサイネージに流すことはできない。サイネージにおける利用例としては、画面を分割した中に通信社から提供されるニュースや天気予報などを流す仕組みがよくあるのに、サイネージの設置者は通信社に支払いたくない意向の場合が多い。民放はタダだから・・・みたいな意識があるのかもしれない。通信社はスポンサーつきコンテンツを無料で提供できるのだろうか?

 

コンテンツホルダーを上流とし、サイネージ設置場所を下流とすると、テレビなどと同じで、下流からは設備関連の費用しかとれなくて、広告もなるべく上流に仕組みを作らざるを得ない。例えばバスの停留所に雨除けのひさしのついたシェルターを無料で設置している業者があるが、これはどこでも取り付けてもらえるものではなく、基本は広告クライアントの全予算をおさえているところがOOHに幾らか割り振って、その予算範囲で場所を選んで設置しているだけである。

 

サイネージ関連業者は、設置されている場所の『媒体特性』とでもいうべき、どんな人が、どんな時に、どの程度見て、どうリアクションするか、それは他の媒体に比べてどういう特徴があるかというデータとかシナリオを広告会社に提供できなければ、こういう企画には参画できない。

これは無理難題ではなく、従来から紙媒体やWEB、モバイルの制作にかかわってきた人たちがやるべき仕事ではないかと思う。

そのうえで『媒体特性』に合わせた共通のチャンネル型コンテンツが考えられるだろうし、それをスポンサーシップによって無料で提供するようなモデルも出てくるだろう。