トップ
「時事ネタ」カテゴリーの一覧を表示しています。

2018.4.20

アナログビデオとデジタルビデオ

デジタル放送やデジタルビデオに囲まれた現代人はデジタル映像に眼が慣れてしまっていて、アナログ時代のような画質差を云々することはめっきり減ってしまった。しかし何かの理由で古いアナログビデオを見ると違和感を覚えてしまうし、それらと今日のデジタルビデオソースを一緒に扱わなければならなくなると困惑するものだ。それはアナログビデオよりもデジタルビデオの方が画質がよいと思われる場合が多いからだが、実は必ずしもデジタルの方がきれいなわけではない。
テレビ放送の国際規格を決める委員会をNTSCといい、アナログのコンポジット信号としてもおなじみの名前であった。ここで色域とかガンマなど映像の規格も決められていて、昔のブラウン管テレビに走査線が並んでいた画面は【BT.601】といい、今日のパソコンやスマホのRGBであらわすと、0-255の間の16-235までしか使っていない。だからアナログをデジタル化したものは非常に明るいところや非常に暗いところには情報がないままになってしまって、明度が中心に寄った締まりのない映像になってしまう。これをちゃんと補正するとデジタルに見劣りないものになる場合がある。

 

そもそもパソコンで広く用いられている【sRGB】というカラースペースは、アナログなNTSCの色域の72%をカバーするものと定義されていて、アナログのNTSCの方が鮮やかな色情報を持ち得る規格なのである。しかしアナログビデオを新品の磁気テープに保存して再生すると、最初はバッチリきれいでも、アナログ記録では再生を重ねるごとに画質が劣化していく。一方映像をデジタル信号にして保存すると、0か1かの組合わせの情報は変化せずにいつも同じなので、テレビカメラがデジタルなら、そこで得られた色信号は、視聴者の画面表示までずっと変わらないことになる。つまり色に関するカメラの特性と画面の特性が合っていれば、被写体に照明された色を視聴者が見ることが出来る。これがいわゆるデジタルの鮮明さの理由である。
この【sRGB】は【BT.709】というハイビジョンの規格に合せているので、パソコンとデジカメのjpgなどとハイビジョンはほぼ似た世界になっている。これがRGBを0-255の間の値にしているので、アナログビデオはそのままでは使いづらいことになってしまった。

 

印刷の世界ではカラースペースは【AdobeRGB】というのが使われていて、これは【sRGB】よりも緑方向が広く、NTSCに近いもので、デザイナさんや製版印刷関係の方にはおなじみなので、今のグラフィック制作の中心にもなっている。だからAdobeのグラフィックソフトを使っている方は、あまり意識せずにデジタルビデオとかデジタルサイネージの仕事もしているし、両者の差であまり問題になることは実際にはないように思う。
アナログの時代の家電売り場では、テレビの色味は機種やメーカーが異なっていると差が出ていて、どれが綺麗?という売り方/買い方があったのだが、デジタルではどこもだいたい似たものとなったのは、放送や家電では個々のシステムの色合わせの土台となる規格が築かれてきたからだ。かつてはWebでの通販の商品の色は信用できないのが相場だったのが、今ではスマホでアパレルが売れる時代である。これがデジタル化の大きな恩恵で、一度作成したビデオソースがいろんなことに使えるようになった。

 

しかし、このパソコンとデジタルビデオとグラフィックソフトの蜜月ともいえる関係は、今後ずっと続くものかどうかはわからない。それは4k8k時代の色の規格は【BT.2020】という【AdobeRGB】よりも色域が広いものが標準になっていて、「自然界に存在する色はほぼカバーしている」といわれている。4k8kは単にデカいだけでなく、色の世界の革新にもなり得るもののようだ。だが現状ではカメラから編集システムからプロジェクターを含めた再生環境まで完全に【BT.2020】に対応しているわけではなく、既存の機器やシステムも使いつつ4kのデモが行われているので、【BT.2020】の真価はまだ見ることができないのだろう。

参考:放送・シネマ最新規格ITU-R BT.2020
http://cweb.canon.jp/v-display/lineup/dp-v2410/feature-performance.html

参考:4K・8K超高精細度テレビジョン放送の標準化動向 – 日本ITU協会
https://www.ituaj.jp/wp-content/uploads/2016/01/2016_01_10_spot1.pdf

2018.4.13

画面が大きいと何がいい?

この10年のデジタルサイネージを振り返っても、32型→40型→55型と大型化する傾向にある。さらにマルチでその3倍4倍も簡単に設置できるようになってきた。映像ソースも4k8kに向かうのだろうが、こちらはコンピュータでCG制作するならよいのだが、カメラから編集までのところはまだ手ごろな価格にはなっていないので、相当予算のつくところでないと導入はできていない。

そもそも画面を大きくするのは何のためだろうか? 迫力? 目立つから? これにはちゃんとした研究開発の積み重ねがあって、むやみに映像のスペックを上げてきたのではないことがわかる。論文としては、「高臨場感を生んだハイビジョン画面効果の研究」(https://dbnst.nii.ac.jp/pro/detail/241)に事の起こりが書かれているが、要約すると次のようになる。
HDTV(High Definition Television)は1960年代に次世代テレビの研究としてNHK放送技術研究所で始まり、1980年になると前述の研究によって、テレビの画面を横方向に大きくして広い視野で映像を見たとき、画面内の映像から受ける心理的な感覚・知覚量が大きくなって表示された映像空間に引っぱられるような効果、即ち臨場感効果が得られることが明らかになった。
これは誘導効果と呼ばれた。当時シネラマという3本のフィルムを横につないで撮影・映写するものがあって、崖っぷちに人が立つ映像を見ると身のすくむ思いがするような臨場感があった。

これを数値的にとらえる実験が当時アナログな方法で繰り返された。画面の左右両端を見込む視野角が20度を超えると次第に映像の空間に主観的な座標が誘導されるようになり、前述のように映像の空間に入ったような感覚、つまり臨場感の効果を心理物理量として捉えた。これをもとにHDTVはこの効果が顕著になる視野角30度を、望ましい観視条件とした。この理屈は今の8kにも引き継がれている。画面の縦横比は映画の縦横比も考慮して9:16 に国際統一された。

画面両端の視野角が30度での視距離は、画面の高さの3.3倍となり、画面高さを75cmとすると、2.5mになる。視力1.0の人の視覚の分解能は1分といわれていて、それを越える縦画素数としてHDTVの縦は1080にされた。横画素数は計算すると1920となる。

4k8kはHDTVの延長上に、さらに視野角の広い映像を提供するもので、それによって誘導効果が高まる、つまり臨場感がマシマシ・モリモリになることを狙っている。だから画面が大きく高解像になっても、遠くから眺めていたのではその効果は発揮できず、映画を前列で観賞するような視聴環境に変えなければならない。

 

これに関連して比較すれば、ビル壁面のLEDビジョンは確かに大画面だが、人は離れて見ているので 視野角は広くならない。つまり臨場感を出すことを狙っているものではない。単に街角で目立つことで目的は達成されるのだろう。

屋内のデジタルサイネージを大型ビジョンにするには設置の困難さを伴うというか、結構邪魔扱いされたりするものだが、裏腹に大画面を近くでみるということで臨場感・没入感をだすようなコンテンツには向いているということになる。その意味で屋外の大型ビジョンとはコンテンツ制作の考え方は異なる面がある。