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2019.3.1

広告は好意にみてもゼロサムではないか?

電通の『2018年日本の広告費』が発表された。国の統計がいろいろ議論されている今日ではあるが、この広告の統計も調査方法が暫時変化してきているので、数字の細かい点を通年で比較してどうとかは言いにくい面がある。今年も全体では、

『●日本の総広告費は、6兆5,300億円(前年比102.2%)となり、7年連続のプラス成長
●インターネット広告費は、1兆7,589億円(前年比116.5%)、5年連続の二桁成長となり、地上波テレビ広告費1兆7,848億円に迫る
●マスコミ四媒体由来のデジタル広告費※は、582億円(新設項目)』

とまとめられていて、元気な印象を与えるように作られている気がする。それは悪いことではなく、主体である4マス広告の沈下をオブラートに隠すのにインターネット広告を使っているように思える。それほどインターネット広告は伸びているということなのだが、そもそもインターネット広告の把握の仕方が曖昧で、ある意味どのような数字も作れる。一例ではECサイトで物を売るとなると、サイト内の仕組みを使ってプロモーションができる仕掛けが有料で提供されているが、あれは広告費に参入されていない気がする。今後もいろいろなネット上の広告を加えていけばまだまだネット広告は伸ばすことができる。

 

それはともかく、サイネージや映像は、『プロモーションメディア広告費』にカウントされている。

何とほぼ前年どおりで伸びはなく、内訳としてみると紙メディアが下がった分だけ映像系が増えたということかもしれない。その点ではやはり広告という視点ではゼロサムなのかなと思う。ところがそれ以上にサイネージの設置は増えている。

 

実際交通系は車内も駅周りも着実にデジタルサイネージの設置は増えているのだが、それは実は広告のためだけに推進しているのではない。事故などの際のダイヤの乱れを伝えるのに、従来は改札近辺の白板に書いていたことが、駅回りのサーネージにも出せるように変わりつつある。それもスマホに提供されている運転見合わせ区間の表示などが駅でも連動して表示できるような、インフラの整備が行われつつあることがわかる。

記事『案内システムのカオス』では、メトロの例をあげて、運行情報のサイネージには広告を出さないというものを紹介したし、丸の内界隈でも防災を考慮したサイネージは、いわゆるビル壁面や屋上の完全広告モデルとは異なる運用をしている例を挙げた。ツーリストガイドのサイネージも広告は載せてはいるが、経費の足しになればよいということで一定の場所や時間を広告に割り当てる例がある。どうも広告ビジネスとしては中途半端にならざるを得ないのが現状のサイネージのように思える。

 

今のところ広告が先導してサイネージが広まることができるのは、設置場所やクライアントをすでに抱えているという条件があってこそできることで、先にディスプレイを設置すれば広告が自然についてくるようなことにはなっていないということだろう。広告業界にとってもデジタルサイネージは、ポスターのように掲示すれば終わりというわけにはいかず、更新できることのメリットを出すには、今までにない努力とコストがかかることにもなるので、あまり身が入らないのかもしれない。

 

 

2019.1.11

テクノロジー vs 伝統

昨年暮れのクリスマスのイルミネーションを見ていると、どんどん派手になるのではなく、どちらかというとクラッシクな雰囲気に戻りつつあるのではないかと思えることがあった。地元吉祥寺駅前のイルミネーションは過去にいろんなLEDがどんどん増える方向にあったのが、近年は昔ながらのツリー状のものが定着しつつある。これはヨーロッパの街並みにも通じるような雰囲気がある。

一方で商店街のサンロードの方は天井にLEDが飾られてきたが、これもド派手なものではなく、線香花火に近い。いずれにせよサイン・ディスプレイが出しゃばり過ぎないような配慮がされているように思える。

 

一方ドバイやバクーやシンセンなど新興都市ではLEDでビル全体を囲んだような、プロジェクションマッピングにも似たディスプレイが増えていることを以前に書いた。こういった街々はそもそも低層ビルの屋上にネオンサインの広告がない。なにしろ何もなかったような土地に突如高層ビル群が現れた街なのだから当然である。かたや日本は低層ビルにネオンサインというのが元の姿なので、それを取り去ってまでビル全体をLED化するのは難しいだろう。

 

すでに日本でもLEDストリップによるビル壁面の大型ビジョンがあちこちにみられるようになってきた。しかしそこで表示されるものはきっと世界の新興都市にあるようなものとは異なったものとなるだろうと思う。

上の映像は新宿にあるものだが、スマホのカメラで撮ったらモワレが大胆にでてしまった。コンテンツはまだある意味ありきたりで、特段インパクトがないというか、むしろ1インチ間隔のLEDストリップの粗さがかえって目立ってしまうような絵柄を選んでいるのが気にかかる。つまりこのようなデバイスの場合はきれいな写真を再現しようということではなく、素朴なクリエイティブをした方が見栄えが良くなるのではないかと思った。

 

またこういった新技術の設置をした最初の段階は、技術デモンストレーションの印象が強く残っているので、新規なコンテンツを作りたくなるのだろうが、次第に景観との調和とか、商品・サービスとの調和の方が重要視されるようになって、クリスマスツリーが落ち着きを取り戻したように、無理のないコンテンツに収束するのだろう。

2018.11.29

LEDのサイネージ

デジタルサイネージの大型ビジョンというとLEDビジョンが鮮やかで屋外でもよく使われている。LEDビジョンは昔は女工さんが100万個とかのLEDをはんだ付けしていたのが、今はタイルのようなブロック構造になっていて、ロボットが組み立てている。YouTubeに製造現場の動画があったので引用しておく。

これと違うやり方がLED Strip をつなげたもので、製造工場の組み立て工程ははるかに簡単なものとなり、製品も平米あたり何万円かになってしまう。また、透過型とかシースルーといわれるような使い方ができることも書いた。ただいわゆる解像度的には1dpi~4dpi程度なので、あまり狭い空間での映像表現には向かない。店頭POPとかイルミネーションとかが適しているだろう。

LED Strip でもLEDがテープに直交して取り付けられているSide Bar の場合は、テープの間隔が狭くできて解像度は向上するので、より映像には向いたものとなるし、シースルー効果も高くなる。LEDのSide Bar を透明なプラスチックの枠にタイル/ブロック構造に組んだものが、軽いので扱いやすく、実装すると上の写真のようなものとなる。

 

ただ映像が流せる場所でも、通常のサイネージのHDMIとかVGAの映像信号をそのままもってきて使うわけにもいかない。LED Strip には画像・映像の1ラインづつをシリアル転送しなければならない。データ構造は単純なので、画像データからの変換は安いラズパイ(Raspberry Pi)やアルデュイノ(Arduino)でもできるのだが、HDMIのようなフレームレートでの表現はできないだろうから、かなりコマを間引いたパラパラ漫画の上等のような映像になってしまうだろう。

このコントローラーはみなさんまだ開発途上で、安直に使えるものは少ないかもしれない。LED Stripが1本ならばアルデュイノでできたとしても、1辺が何メートルの映像となるとLED Stripが何百本になり、それ専用に開発されたドライブ装置が必要となるからだ。

時代の流れとして、LEDブロックからLEDストリップへの移行は必然のように思える。またLEDストリップは自動車への装着に次いで、家庭などのLED照明も変えつつある。つまり従来の電球や蛍光灯を外して付け替えるようなものではなく、建材とか天井材そのものが発光し、それがコントロールできるという取り組みもされている。これも注目すべき分野になるだろう。

2018.10.24

こんなところにサイネージがあったら...

こんなところにサイネージがあったら、有効に使ってもらえるのに、と思うことはよくあるが、たいていは先方に予算がない。パソコンでコンテンツを作るデジタルサイネージなら、予算はなくとも自分たちでコツコツとコンテンツを溜めていくことは可能かもしれないが、そういう動機づけをするには忙しすぎるとか人事労務上の制約が大きい。もし責任者が自分でヤル気を出せばやれないことはないのだが。

 

例えば私の住んでいるところにも小さな規模の保育園が増えていて、マンション立ち並んでいるところでは、1区画に一つくらいは設置されるようになった。だいたいは閉鎖した商店の跡地だったりして十分な広さや設備はない。保育士さんの人手も足りないだろう。こういうたくさんある保育園はだいたいは同じ時間帯に同じことをしている。ならば共通の保育番組を作ってネット配信すれば、個別にコンテンツを作らなくても使える。サーバーで保育園のID管理をしていれば、地域情報や自治体からの連絡などの個別の情報も入れられ、保育士さんの助けになるような使い方もできるだろう。

予算がないなら広告モデルでサイネージを提供したらどうかという考えもあるが、場所によっては広告は嫌われるし、また財布を持っていない保育園児を相手に何を売りつけるのか疑問である。これが美容院とか単価の高いサービスなら関連した商品も多くあるわけだから、広告モデルには向き不向きがある。もし広告モデルが可能でも、それをベースにコンテンツ提供を行っていくのは不安定で長続きしないということで、先方から信用されないかもしれない。

 

保育園向けのコンテンツとは、子供の遊びに関するものと、交通ルールや朝昼晩の生活全般に関して楽しく教えるものがある。すでに幼児本はいくらでもあるので、サイネージのコンテンツも自作しようと思えばできるはずだ。でも幼児本に専門の出版社があるように、子育てに何らかのビジョンをもって一貫したコンテンツ提供ができるバックボーンも必要である。

マルチメディアが登場してもう30-40年になるが、紙の出版社がデジタルメディアを提供するとか、出版社と連携してデジタルメディアを制作することは大変困難だった。その第一は収入モデルが違うからで、デジタルコンテンツのほとんどは書籍のようにまとまった収入にはならず、小銭がチャリンチャリンとなるので、これでは投資の回収の目途がたたないと判断されてしまう。

 

コンテンツビジネスでは紙からネットに移行したモデルは、情報誌、地図、レシピ、など多くあり、これからもどんどん移行は進むだろう。デジタルサイネージもそれに合わせて新たな利用分野が生まれてくることになろう。

2018.10.5

デジタルサイネージはメディアになれるか?

デジタルサイネージを広告モデルで回そうという試みは増えているが、それができるのは元々駅周りとか人目に付くところに看板を設置していたような広告代理店によるものが多い。そこでは以前からポスター・看板のお客さんが居たわけだし、掲示場所の価値もお客さんには認識されされているから、デジタルのメリットを付加すれば新しいモデルはできるのだろう。表示灯株式会社の4K画面『ハイレゾ・ナビタ』などは開発コストもかかっているだろうが、駅広告における同社シェアに基づくとビジネスの算段はつくのだろうと思う。こういう背景も無しに技術先行で広告モデルをするのは無謀だろう。

掲示場所の価値というのは、どういう人にどれくらい見てもらえるかという露出数が鍵だが、ポスターなどの場合はアルバイト君が近くに座って通行人の数をカチャカチャとカウントしている姿に見覚えのある方も多いだろう。ビルの壁面の大きなLEDビジョンの場合はテレビカメラで通行人の様子をモニタできるようにしていて、今ではソフトウェアでどの時間帯にどれくらいの人が通るかを自動カウントするものもある。こういうデータ化をした媒体資料をもってプレゼンしないと大手の広告はとりにくい。

 

要するに広告メディアとしての価値は、ちゃんと露出数をカウントできるか、またその真正性は大丈夫か、過去にさかのぼってトレーサビリティ(雑誌の場合は印刷会社の印刷部数証明とか)はあるか、などの要件を満たせるかどうかで大きく変わってくる。昔から町の広告代理店でもいろいろな広告露出の開発をしていたが、多くは『きっと着目される』という期待で終わっていて、『効果がなかった』ということで打ち切られるということを延々と繰り返してきたと思う。デジタルサイネージの場合はディスプレイの近くにカメラさえつければ、監視カメラのアプリも進んでいる今日であるから、カウントはできるようになるだろう。そうなればメディアの仲間入りといえる。

 

しかし、広告の営業とか運用を考えると、個々に設置されているデジタルサイネージごとに広告営業をしていたのでは割があわず、また広告出稿する方も付き合ってはいられない。街の至る所にあるサイネージ設置のプロフィールを一覧化して、広告出稿と広告媒体側のマッチングが容易にできる仕掛けが必要で、以前はそれが広告代理店であったわけだが、ITの今日では Airbnb Uber といったような無人化したマッチングサービスが出てくることになるのではないか。

 

とはいっても、それはすぐのことではないから、今すぐ広告モデルのサイネージをするとなると、不特定多数の広告出稿主を相手にするのではなく、むしろ特定分野に限定して商品とコンシューマのマッチングをするところが成功している。紙の媒体でいえば専門誌とか業界紙といったものだろうか。こういう分野はすでにモバイルマーケティングで行われているので、それを引っかけてサイネージの設置ができないかと模索している動きもある。つまりニッチなモバイルマーケティングと手を組んで売り場や店舗のデジタルサイネージで最後のクロージングに持ち込むのが望ましい。

サイネージネットワークは広告ビジネスをするわけではないし、その仕組を作るわけでもないが、そういうところを一緒にモノを考えていくようにならないといけないだろう。(例えば…というのはまたの機会に)