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2019.5.17

アナログからデジタルへ?

印刷媒体の減少と反比例するように伸びているデジタルの諸媒体ではあるが、デジタルの世界はデジタル媒体同志の自然淘汰が起こり、サービスを中止するものが次々に現れている。最初に世の中に登場した時には、素晴らしいなあ、とかカッコいいなあ、というインパクトが欲しいのだが、定着させるにはビジネスに叶ったものであるという納得性が重要になる。デジタルサイネージも納得性という点での評価をされるのはこれからであろう。

これは有名な品川駅の頭上にズラッと並んだサイネージで、地方の駅でもこういう設置をしているのをいくつか見かけるようになった。トンネル状の広い空間とマッチした設置の仕方であると思う。だがどちらかというと電車の車内広告の『ジャック』という手法で、ポスターでもあまり変わりはないのではないかという気もする。

これは電通が西武池袋の駅外に掲示した例で、まさに車内広告の『ジャック』の延長上にあるといえる。柱を巻いているデジタルサイネージの方が従になった感すらある。デジタルサイネージができたのだからアナログ媒体は無くすと決めつけるよりも、両方を組み合わせて、よりインパクトの高い演出をする方が賢いといえる。いや、場合によってはデジタルにする必要がないかもしれない、くらいに、デジタルサイネージの意味合いを問うべきだろう。

 

いつも、これでいいのかな? と疑問に思うのは、すでにターミナルではすっかり定着した柱ごとのサイネージである。

この写真の札幌駅は画面が天井近くの上部にあって、雑踏の中でも画面が見やすいという点では偉いのだが、どこの駅でも林立するサイネージにどのように映像を出していくのがよいのかについては、まだ雲をつかむようなところがあって、なかなか納得できるところには至っていない。そのことは広告の付き方からもうかがえると思う。

ある広告会社の話では、アナログ看板形式の以前の年単位の契約金額をデジタルでは稼げないという。それはデジタルの設備費の分だけたくさんの広告をとらなければならないからだが、元来アナログの交通広告は安く、デジタルにした場合に金額的に埋まらなければ値上げをしなければならなくなる。

しかし交通広告の需給バランスは場所によって昇降客数が大きく異なるために格差があり、アナログ広告をとるのも難しいところでデジタル広告に切り替えろというのは難しい。店舗においても同様で、アナログ・デジタル併用によるベストな提案が望ましいのだが、今まではデジタルサイネージの効用一本に絞って推すようなことが多かったのではなかったかと思う。

2019.5.10

チャンネル型コンテンツ

デジタルサイネージの用途として、かなり増えてきていると思われるのが、社内のコミュニケーションや社内連絡用のものである。こういう目的の手段は社内WEBもメールも社内SNSもあるのだが、それでもコミュニケーションは徹底しないものらしく、壁に電子掲示板を設置するところがある。自社ビルの場合にエレベーター内にディスプレイをつければ、ほぼ強制的に目にするようになるといわれたものだが、そんなに普及しているとも思えない。むしろ今は職場にいろんな国の人が居あわせるので、マルチリンガルコミュニケーションの一環として見直されている。この分野は日本での就労に関する共通のコンテンツも考えられるので、個別企業に代わる『専用チャンネル』的な需要があるのではないかと思う。

 

また衛星のトランスポンダがレンタルできるようになった時代に、その1チャンネルを借りて、医院の待合室など向けに専用のTV放送を流しているところがあったが、そういう用途は今はインターネット上のストリーミングになっている。衛星の時代にはアンテナの設置などが必要だったのが、特別に何も用意しないでも『専用チャンネル』というサービスができるようになった。受益者が費用負担をするeラーニングの世界ではかなり定着していると思われるが、医院向けなどは広告などで費用を埋めなければならなくなり、新たな難しさがある。

 

一般に無償でコンテンツを提供しているデジタルサイネージにおいては、ゼロからコンテンツを制作する予算をとっていないところが多く、むしろすでに放送やDVDやeラーニングをしているコンテンツホルダーと組まなければサイネージに流すことはできない。サイネージにおける利用例としては、画面を分割した中に通信社から提供されるニュースや天気予報などを流す仕組みがよくあるのに、サイネージの設置者は通信社に支払いたくない意向の場合が多い。民放はタダだから・・・みたいな意識があるのかもしれない。通信社はスポンサーつきコンテンツを無料で提供できるのだろうか?

 

コンテンツホルダーを上流とし、サイネージ設置場所を下流とすると、テレビなどと同じで、下流からは設備関連の費用しかとれなくて、広告もなるべく上流に仕組みを作らざるを得ない。例えばバスの停留所に雨除けのひさしのついたシェルターを無料で設置している業者があるが、これはどこでも取り付けてもらえるものではなく、基本は広告クライアントの全予算をおさえているところがOOHに幾らか割り振って、その予算範囲で場所を選んで設置しているだけである。

 

サイネージ関連業者は、設置されている場所の『媒体特性』とでもいうべき、どんな人が、どんな時に、どの程度見て、どうリアクションするか、それは他の媒体に比べてどういう特徴があるかというデータとかシナリオを広告会社に提供できなければ、こういう企画には参画できない。

これは無理難題ではなく、従来から紙媒体やWEB、モバイルの制作にかかわってきた人たちがやるべき仕事ではないかと思う。

そのうえで『媒体特性』に合わせた共通のチャンネル型コンテンツが考えられるだろうし、それをスポンサーシップによって無料で提供するようなモデルも出てくるだろう。

2019.4.24

インテリアとしてのデジタルサイネージ(埋め込み)

壁面全体をマルチ・ディスプレイで埋め尽くして、あたかもガラス張りのようにして景観を見せるとか、壁に大きな窓があるようにマルチ・ディスプレイをしつらえて、外国とか自然の中に居るような雰囲気をだすものは以前からあった。
2017年4月に松坂屋銀座店後の再開発としてオープンした銀座エリア最大の複合商業施設GINZA SIXでは、ブランド店が軒を並べるところで外観・内装ともに凝ったデザインが施されていて、その3階から5階部分を繋ぐ高さ12mのLEDビジョンが設置され、チームラボによるデジタルアート作品「Universe of Water Particles on the Living Wall」が常設展示されている。これはビデオを流しているのではなく、背後にコンピュータを置いて常時演算して表示しているそうで、日々の日没とともに様子を変える滝とか、クリスマス限定特別カラーとして滝が黄金に輝くようなことをしていたようだ。

またこのビルのデザインポリシーなのだろうが、なぜかエレベータの乗降口が矩形ではなく右肩上がりになっていて、その脇にあるフロア案内のデジタルサイネージも斜体になっている。

どうもフツーのものをそのまま置くわけにはいかないようで、とはいっても斜めのディスプレイを作るわけにもいかないから、矩形のサイネージの上下に直角三角形の覆いをつけていることになる。当然コンテンツ作りでもその三角形の部分は『余白』にしておかなければならない。

この場合のデジタルサイネージは最初から壁面のデザインの一部であり、サイネージの後付でこういう工事をするのは大変だ。でも逆にインテリアを考える際にデジタルサイネージのことを考慮することは今後増えていくだろう。

 

次は厳密に言えばエクステリアだが、渋谷駅から渋谷川沿いに『渋谷ストリーム』という店舗群ができていて、その入り口には壁面に横長ディスプレイを多数埋め込んだところがある。これも案内とか情報表示ではなく、渋谷川に紐づけての映像のインスタレーションのようになっている。この写真は川そのものを表示しているが、いくつかのパターンがある。今後もいろいろな表現が増えていくのであろう。

このような周囲に溶け込ませたディスプレイの使い方は、まだ始まったばかりで、これからもっともっと多様なデザインがされていくだろう。下の写真は展示会のものだが、正方形のディスプレイを市松状に配置していて、『渋谷ストリーム』と同様に全体として一枚の映像が流れるような使い方(非連続マルチディスプレイ)をしている。

その次の写真はディスプレイを縦に何台も連結して柱にしているもので、個別の表示というよりは全体でインスタレーションになるような見せ方ができる。

LEDビジョンのような輝度が高く大型のディスプレイが普及していく一方で、安い液晶パネルを使いながら、設置にデザイン性をもたせることで楽しい空間を作っていくという工夫も面白い。