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「2018年3月」の一覧を表示しています。

2018.3.30

設置・工事のことも忘れずに

30年近く前に、4階建て2棟の職場の各フロアにイーサネットのケーブルを敷設することになって、工事立会いのために日曜出勤をしたことがあった。すると下の写真のような感じでトラックがイエローケーブルのドラムを積んでやってきて、工事の人が各床から天井裏にドリルで穴を空け、天井には点検口の穴を空け、各フロアをぐるぐる廻って、一筆書きのようにイエローケーブルを設置していった。ケーブルのところどころには機器を接続するための装置をつけて、いわば電気のコンセントのようなものをつくるわけだが、イエローケーブルは床をブチ抜いて下から生えてくる場所もあれば、天井から下がってくるところもあった。それらをカバーする工事も行われた。

今日の有線LANというのは、電話のケーブル工事に間借りするつもりで線材や接続口が考えられているので、イエローケーブルのような大げさな工事は不要になったが、30年近く前は線を敷くだけの工事に200万円かかってしまった。有線LANになってからも何度も工事というのは必要になって、もう電話の配管スペースに通信線が入らなくなってしまい、屋外に配管ダクトのようなものをつけなければならなくなったとか、HUBの増設に次ぐ増設やフロア配置の変更などなんだかんだで、2~3年に1度は通信工事も考えないと、線がぐちゃぐちゃな環境になったものだ。今では無線LANが主流になったので、配線はだいぶ人目にはつきにくくなった。

 

無線LANとはいっても機器には電源が必要なので、今度は各フロアの4隅にアクセスポイント置きたかったので電気のコンセントが必要になった。今日では監視カメラとか見えない所でも電源工事が必要なことが増えている。デジタルサイネージも御多分に漏れず、機器以外に電源線とか無線LANのアクセスポイントの電源などが必要になる。もし大きなディスプレイパネルを何十台も使う場合には、電源の契約から見直さなければならないかもしれない。

 

冒頭のイエローケーブルの話も、インターネットの話ばかりしている時には工事のことなど頭になかったのが、稟議が通ってから結構大変なことになりそうだということで慌てた記憶があり、何とか予算に納まるような業者を探し回った。また日曜出勤して工事に立ち会ったこともよい勉強になった。イエローケーブルというのは簡単には曲がらなくて、当初考えていた場所に接続口が設置できないということもあった。工事が伴うことに関しては事前に専門家に見てもらってからプランを作った方がよいことがわかり、後の有線LAN・無線LAN・電気コンセントの付け替えなどがスムースに進んだ。

 

デジタルサイネージを1台だけ導入するのなら大型テレビを購入するのとさほど変わらないが、人の集まるところや展示をする場所を対象とするならば、まずどこらあたりに何台ほどという配置の『密度』を考えなければならないし、それが一度に設置できるのか、段階的に増やしていくのかというプランも必要かもしれない。いずれにせよ、ある程度先のことも考えておいた方が工事が2度手間にならなくて済むことにはなりそうだ。
またインテリアとか室内の見栄えという点からもどういう工事をするかは変わってくる。デジタルサイネージのコンテンツとは別に、設置の見栄えをクライアントがどう考えているかも知っておく必要がある。

 

サイネージネットワークでは、設置と付随する工事に関するお仕事は専門業者のキラカスタムサポート株式会社(URL http://kirasapo.jp/)にお願いして、一緒に打ち合わせに行ってもらったり、お互いに相談して提案をすることを行っている。またキラカスタムサポートさんは365日24時間全国どこでも対応ができるネットワークをもっておられるので、北海道から沖縄まで対応するサイネージネットワークにとっても、運用開始後の変更やメンテナンス面でも安心できるパートナーさんである。
むしろサイネージネットワークはコンテンツ制作会社のグループなので、設置に関しては相談相手になっていただいているといった方がいいかもしれない。いろいろな事例をお持ちなので、それらも追って紹介していこうと思うが、単なる工事屋さんではなく、プロジェクト全体に関して、それを良い方向にもっていくように、事前に調査やヒヤリングの段階から協力してもらえ、発注者に安心してもらえるような仕事をしておられる。

仕事の規模では、展示施設にタッチモニタ30台を置いて、展示に関する写真・画像・インタビュー映像を流すような仕事もされた。後のメンテナンスのために、地元の業者によって設置・電気工事の対応してもらうとか、サーバー経由でのコンテンツの一括管理・運用とか、機器販売よりも実稼働後のことに配慮した方法で、うまく仕事をされておられる。

実際にはどんなプロジェクトも予算の範囲でどのように配分するかで悩むと思うが、デジタルサイネージに関しては最初にハードウェアを決めて残りの予算でコンテンツや工事に割り当てることが多かった。しかしハードウェアの価格が下がってきて、またサポート体制のある主要メーカー間の差がなくなってくると、むしろハードウェアの発注先は最後に決めて、流動的なコンテンツと設置から考え始める方が長い目で見るとスムースに行くのではないかと思う。いいかえると、どんな目的で、どんな内容を、どのように表示するか、などであり、これらに迷った時にはぜひご相談ください。

2018.3.23

マルチディスプレイの悩み

デジタル映像出力の規格DisplayPortは、VGA→DVI→HDMIよりも高機能で、4k8kといった高解像度表示の利用を見据えたものとなっているが、逆に今までの用途では必ずしも必須とはいえなかったかもしれない。強いてメリットをあげると、ディスプレイを数珠つなぎにしてマルチディスプレイをやりやすくしているところだろうか。かつてマルチディスプレイをするは何らか専用のコントローラが必要であった。それが単なるパソコンである程度のことができるようになったからだ。

でも、どうもDisplayPortも進化しており、パソコンのハード側、OS側と、またディスプレイ側の対応が合わないと思い道理の動きはしないみたいで、よく見かけるのはJRの新車両にもあるような3台接続である。今のところはパソコン・OS・ディスプレイ全部新調するのならテストをして始められるが、すでに設置されているものを使いながらのマルチディプレイ化はリスクが高い。

 

折角特別な装置が不要になるはずの規格なのに活かせるところは限られるようにも思える。下の写真は東芝のディスプレイの例だが、ABDCの4台のディスプレイをDisplayPortで数珠つなぎにして、パソコンから4k映像を送って分割表示をさせている。パソコン側は何も細工はしていなくて、ABCD4台の1920 x 1080ディスプレイの側で、それぞれ表示するのを映像の『左上』『右上』『左下』『右下』と分担させているだけである。こうすると80~100インチに4kを出すものがいとも簡単に作れるのでナイスアイディアだと思うが、こんな設定がどのディスプレイにも可能かどうかは確かでない。

安全なつなぎ方としてはDisplayPortのHUBを使って4面にだすことだろう。ディスプレイの設置場所に普通のデスクトップパソコンを置くわけにもいかないから、弁当箱のようなパソコンを使って、信号はWiFiで受けて、マルチディスプレイをしているようだが、表示を面白くするために複雑なコントロールをするとなると、やはり何がしかの専用のアプリが必要になる。

 

またそうなるとDisplayPortでなくHDMIでも構わないはずだ。ただし実はHDMIの方が後発だから、DisplayPortを対象にマルチスクリーンのコントローラが先に開発されていたというのが現実なので、今マルチスクリーンを考えるなら素直にDisplayPortに向き合った方がいいのかもしれない。

 

DisplayPortとHDMIは似たようなもので違いが分かりにくいが、最初は出身地の問題だった。DisplayPortはPCの世界から起こり、グラフィックボードでの採用となった。伝送方法はHDDを4台並行に動かしているような4レーンの伝送であり、通信方法はパケット化方式なので、送受に高度な処理が必要になり、使うチップの原価も高い傾向にあった。

後発のHDMIはAV機器出身で3レーンの伝送で、比較すると単純な技術を使っていたので相性問題はほとんど起きないようだ。しかし両者とも4k8k時代に向かって新しいバーションが次々出てきていて流動的だし、今売られている機器類の組合わせの可否も悩ましいものとなる。しばらくはこんな悩みが続くと思うので、このブログでも設置のプロの業者のノウハウやアドバイスも紹介していきたいと思う。

2018.3.20

トレンドセミナー盛況裏に終了

私たちの扱う デジタルメディア やコミュニケーション・ツールの世界にはどのような変化が起ころうとしているかを探り、ビジネスチャンスを見つけるためのセミナーを飯田橋東京しごとセンター講堂で3月19日に開催しました(後援:東京グラフィックコミュニケーション工業組合)。

第1部は『Webに代わるAIを使った自動応答システム』と題してソフトバンク(株)山田泰三氏から、IBMのWatson がコミュニケーションツールとしてすでに幅広く活用されている話と、(株)キャメルの太田伸吾氏から音声/Line/webいずれからでも使え、またマルチリンガル対応のAIチャットボットediaについて、Webなどと比較してログが宝の山となるので、サービスが進化していく様子をお聞きしました。

 

(株)キャメルのedia

人々が常に強力な情報端末を持ち歩いていて、最新情報が簡単に手に入ることが当たり前となったために、会社の情報システムも広告やマーケティングの手法も、DX(デジタル・トランスフォーメーション)と呼ばれる変革のさなかにあることが感じ取れました。この時代に則さない古いメディアやユーザーインターフェースは衰退し、代わってネットワークやAIを駆使した方法に期待が集まっています。

 

第2部では、サイネージネットワークの3社、熊本の(株)アートプロセス 本田和敬氏、香川の(株)ミヤプロ 宮嵜佳昭氏、東京の(株)二葉企画 小林右季氏から、この1年の事業報告として成功も失敗も忌憚のないお話が聞けました。その後のパネルディスカッションでは、まだ利用モデルが確立していないデジタルサイネージなので、単純な新規開拓はなかなか難しく、ソリューション提案や総合プロデュースによって、顧客/パートナーとともに近未来を切り拓く努力がされていることを感じました。

 

 

 

2018.3.16

あると便利な小物

ビデオ信号のコネクターや規格は時代とともに進展してきているので、複数の機器をつないで使う時は、結局いくつもの違うコネクターの変換器とか変換ケーブルが必要になる。各コネクターの規格についてはWikipediaなどを見ればわかるので省略するが、時代の変遷という点では以下の図のようになる。HDMIとDisplayPortのケーブルは似ているので要注意だ。

ただし、HDMIやDisplayPortはこれら以外にスマホやタブレットに使うミニとかマイクロのものが複数あって、その大きさの変換もいくつか用意しなければならないので結構大変だ。

上記の変遷は技術の進歩によるもので、当然ながら後からできた方が機能が高くて、それ以前の規格をカバーしているはずだが、なかなかDisplayPortは広がらず、HDMIが主流になっている。両社の変換器や変換ケーブルも必須だろう。

 

USBを差し込んだりWiFiで個々のディスプレイに映像を送っているものはよいのだが、STBからディスプレイにケーブルで映像を送っている場合は、設置と共にケーブルの引き回しの課題が生じる。

例えば上の写真のように、どちらからくる通行人にも見てもらえるように背中合わせで両面に設置するとか、店舗の出入り口が複数ある場合には、同じ画面を出したいのでSTBからのケーブルを分配器で複数にわける。

またデジタルサイネージだけでなく、テレビ(ビデオ)やパソコンの出力も映したい場合には、セレクターが必要になる。これらは家庭で使うような1000~何千円の安価なものと、業務用の高いものがあって、とりあえずの実験では安価なものでよいだろうけれども、モノによっては相性が出てしまって、接続する相手によってうまくいったり、いかなかったりする場合があるので、安価なものは異なる種類のものをいくつか用意しないと、問題が起こった場合の切り分けがやりにくい。

以上の小物よりも若干高価なのが、ケーブルを延長するエクステンダーで、下記のような安いものでも(VGAやDVIなら型落ちで安い)2~3万円はするだろうし、業務用なら10万円以上する。これらはLANのケーブルを使って伸ばすので安物でも50メートル、業務用なら100メートル以上可能なものがある。店舗が2つの道路に面しているとか、2フロアに置きたい場合などに使う。

いくらLANケーブルなら扱いやすいとしても、どうしてもケーブルで延長しなければならないところは最小限にしたいから、もし離れているところが複数箇所あるなら、無線で飛ばす方式がふさわしくなる。

2018.3.9

サイネージの図版  コンテンツシリーズ⑦

街に設置されている多くのデジタルサイネージは通行人に対して何らかのアピールをする目的なので、短時間のうちに人の目を止めなければならない。そのために何かと刺激的なグラフィックスを表示しがちだが、逆効果も考慮しなければならない。スピード感のある映像は、見る人をハッとさせるが、ずっと見入ってもらえるとは限らない。だからそれらは一瞬だけ使って、その後はちゃんと認識できるものを表示するなどの組み合わせを考える。

また必ずしもポスターのような写真の魅力に依存するよりも、モーションをつけるとか、イラスト化するなどの工夫のことも、コンテンツシリーズ⑥ で書いた。

ネットを見ていたら、アメリカンコミックのキャラクターと、それを元にした実写版映画のキャラクターを比較した写真があった。ストーリーをじっくり鑑賞するなら実写の魅力は十分に発揮できるのだろうけれども、一瞬のうちに人の姿を認識するには、イラストの方が手っ取り早いなあと、あらためて思った。

しかし、アナログなドローイングであるコミックをスキャンするとかデジカメで撮ったものは、例えば左上の女性ヒロインの顔を全画面に拡大すると、モザイク状のギザギザになってしまって、デジタルサイネージで縮小拡大移動のモーションを付けるようなわけにはいかない。

これは企業のロゴマークなどでも同じで、スキャンしたものを拡大するような加工をするようなことはせずに、Adobe Illustrator(や以前はFlash)などでベクター化したものを使うのが常識になっている。そうしないと画面が汚くなるからだ。今ならCADやCGからベクターグラフィックスを取りだして使うこともある。縮小拡大時にギザギザが出ないことでシャープさと力強さが出ることがベクターグラフィックスの強みである。

上のようなイラストは、写真や絵をスキャンしたものを下敷きにして、濃度の異なる領域をパスで囲むような作業をし、そこに着色するという、絵の作り直しの作業を経て出来上がっている。これは結構面倒な作業ではあるが、要するにアナログ描画も一旦ベクターグラフィックスにすれば、縮小拡大変形が自由になるので、ロゴやマークや製品写真、キャラクターなどで日常的に使いまわされている。

さらにベクター化した素材はアニメーションにも向いていて、以前主流だったFlashといわれたソフト(今はAdobe Animate 下のYouTube参照)以外でも、簡単なアニメなら多くのグラフィックソフトでも作成できるようになっている。

 

What is Adobe Animate CC (October 2017) Adobe Creative Cloud

 

こんな凝ったアニメはデジタルサイネージでは使わないにしても、一瞬スピード感のあるキャッチーな映像を出したければ、ベクター化したグラフィックスにモーションを付けるのが適している。縮小拡大や速度や尺をいろいろ変えてみることが自由にできるからだ。