2019.6.21
サイネージに販促効果はあるのか?
デジタルサイネージを扱っている立場からは『効果はない』とはいえないが、サイネージに情報を表示すれば必ず効果があるという単純なものではない。サイネージの役割は昔のAIDMAでいえば、通りすがりの10~20秒目にするだけでは『A』が中心で、よくても『AI』どまり、だからあとの『DMA』にうまくつながったかどうかで効果がある無しの判断ができる。それには最初から既存の販促メディアや販促グッズと連携を考えたデジタルサイネージの計画を作っておかなければならないことを意味する。サイネージを見た人が、それ以前、またそれ以後に見聞きするものと重ねあわせて、何らかの行動に結びつくように考えているだろうか? そういう意識をしていても、なかなか計画を作って検証するところまでもっていくのは大変だ。
東京ではこの間にサイネージや販促の展示会がいろいろあったが、まだ両者に有機的な連携はあまり見られない。以前に学校や職場で必要な告知を掲示板や回覧板だけでなく、メールでしても、Webやモバイルに載せても、なかなか徹底せず、どのメディアも省略できないで何重もの情報伝達をしていることを書いた。
販促もただ露出回数を増やすだけでは事業者の負担になるだけなので、複数メディアをうまく使い分けることで、相乗効果を生むことを狙いたい。しかし現実には複数メディアを扱う手間が増えることをクライアント(現場の方々)は嫌がるだろう。それも引き受けるということで、更新や運用もサービスにすることが求められているし、サイネージネットワークでもそれを積極的にウリにしていきたい。
一般には複数メディアの制作順序というのがあって、どのように素材をリレーしていくかがだいたい決まっている。昔でいえば印刷用DTPデータからWebの素材にまわすとか、出版物の校正済みデータを電子書籍の方にまわすなどであるが、今は必ずしも紙メディアが最初に作られるわけではなくなっている。効率を考えると、例えばたいていの紙の漫画は電子書籍と同時に作られてしまう。
販促においても既存コンテンツの再加工をして使いまわすという『派生』のリレーのようなことがされている。これが手間なのだが、複数メディアの制作を一括で任されているならば、素材管理のレベルで一元的に整理できるから都合がよい。究極的には複数販促メディアにまたがる更新や運用の管理システムができればよいのだが、それを作るのは大変なので、現実的にはWeb・モバイルを起点に素材『派生』のリレーが始まるように、デジタルサイネージのワークフローもするのがよいだろう。
いいかえると、Web・モバイルで販促をすでに行っているところが、デジタルサイネージの活用に踏み切るのが、サイネージの販促効果を上げるもっとも近道であろう。例えば食品を扱っているとして、紙のチラシに対してWeb・モバイルでは目玉商品に関するレシピ情報にリンクを貼ることができるし、サイネージの方は調理法をショート動画で見せられる。DIYなら利用方法のショート動画かもしれない。こういう連携によってAIDMA的な販促の総合的強化ができればよいのであって、各単一メディアだけを取り上げて効果のうんうんは難しいだろうと思う。つまりすでに行っている販促に対して、さらに売場なりの最終局面でダメ押しするのにデジタルサイネージを使ってみてください、というようなストーリーがあり得るだろう。