品質のばらつきを抑える

ひとつのデジタルサイネージをいくつかの店舗で相乗り利用をすることが、駅とかショッピングモールのような複合商業施設ではよく行われている。商店街も同様であるが、特有の課題がある。実際に出来上がったものを見てみると、店舗や入居者によって内容に大きな格差がでてしまう。これは作品としてではなく、そもそも業種や業態などやっていることの違いからくるもので、Webで町の店々を紹介していても同様のことが起こる。

無料のサービスならば表現の格差が起こってもほっておけばよいかもしれないが、月々幾らかをいただくとなると問題だ。商業施設などの場合は管理会社が間に入ってサイネージ広告の取りまとめもし、管理代金にオプションとして費用の徴収をしてくれることもあり、サービス提供側としてはありがたいのだが、ほっておいては順次脱退されていくかもしれない。やはり個々の店舗にとって役立って必要と思われるものに改善していかなければサイネージのサービスも続かない。

つまりコストに見合った最低限の品質レベルを維持できるようなサービスにする必要がある。店舗の側ですでにホームページをもっているとか、カタログ・パンフを制作しているとか、どこかに広告を出稿していて、グラフィック素材や広告のコピーをもっておられるところなら、それらからいくらでもデジタルサイネージの制作は可能だ。しかしワードで作ったペラの営業案内を用意するのがやっとのところもある。

しかしこういうところも、アピールする内容がないわけではなく、メニュー・店内・厨房・食材について取材していけばサイネージのコンテンツは構成できる。もちろん制作費用を払ってもらえるなら、全部お任せで引き受ける制作会社はあるだろうが、問題はそういう費用を勘定していない場合である。つまりこういったサイネージを広く普及させる鍵は、いかにイージーオーダーのコンテンツ制作ワークフローを創り出すかだろうと思う。

Webの場合は、SNSでも簡単制作アプリというのが提供されて、それで動画編集をする若者もいて、もしその店の知り合いにアプリを使える人が居るなら制作を依頼すればよいと思う。それらをサイネージの素材として提供してもらえればよいが、あまり期待できないかもしれない。

それらの代わりになるものを制作側で用意すれば、あとは店舗側で何点かの写真・動画をとってもらって構成することはできる。一番単純なのはjpgやmp4のファイルをどこかのフォルダに入れておけば、順次再生するスライドショウ的なもので、各素材の順番や時間をコントロールするアプリのついているものがある。

こういった感じでもっとテンプレート化を進めて、オープニングから最後までの展開とシーンチェンジ、またテロップの出し方などを、うまい具合にデザインしておいて、中の写真・動画・文字の素材を入れ替えれば、いろんな店舗に適用できるものを開発すると、品質の底上げはかなりできるようになる。

経験の積み重ね

デジタルサイネージはここ15年ほどの歴史しかない比較的新しいメディアであるが、そのコンテンツ制作に携わる方は映像・画像・ドキュメント・情報システムなどなどに経験を持つところが主体である。経験があることは長所でもあり短所でもある。長所としては試行錯誤を重ねて時間や費用の無駄使いをすることが経験によって少なくなっていくことだ。短所は逆に試行錯誤を上手にすることができず、コストを考えるとリスクを下げることが優先になって変化に適合しにくくなることだろう。

 

7payの決済がオンラインの手続きに不備がみられたのも、店舗での客対応は得意としても、ネットでの客対応の経験が少なかったことをあらわしていると思う。今までモルタルのビジネスがECも始めようとした際に初歩的なミスをしがちであるとか、ネットでの使い勝手が向上しないとかの例は数限りなくある。そこにベンチャーのチャンスもあるのだが、経験の少ない新興勢力ができたことができないはずもなく、要するに既存勢力の新事業に対する努力不足と思われることが多い。

 

デジタルサイネージはデバイスとしては新興勢力でも、コンテンツ制作では既存勢力の面がある。つまりベンチャーとして他の既存勢力の領域に喰いついていかねばならない点と、独自ノウハウを活かしていく点がある。以前の記事に書いたがチラシという紙媒体はいろんなノウハウやカラクリがあるので、なかなか廃れない。つまりチラシの代替をサイネージでやろうとしても苦労するであろう点が多い。一方でポスターのようなものは、印刷後に貼りっぱなしで何も管理していないようなことが多く、あまり利用面でのノウハウがあるとはいえない。(コルトン電飾看板電飾フィルムなどは広告として管理されているが

 

放置プレイのポスターと違って、店内のメニューを頻繁に入れ替える場合は、何を、何時、どのようにプッシュする、という経験が培われているので、デジタルサイネージのようにコンテンツの入れ替え自由なメディアが役に立つ。もう10年くらい前からマクドナルドでカウンター上のメニューをデジタルサイネージにするという話がでていたのに、いろいろ紆余曲折があったようで、近年になって実現されている。

写真上はデジタルサイネージ以前のもので、少し曲面になっているが、手で回転させると3面を切り替えられるような仕組みの電飾フィルムである。これは3面以外の内容を貼ろうとすると付け替えをしなければならない。おそらく朝昼晩用などを3面に割り付けていたのだろうと思う。店長さんがこのいくつかの三角回転体を手で回していたのを見たことがある。

 

それらが最近デジタルサイネージに置き換えられたのだが、何をどこに表示するのかという面の使い方は以前とほぼ同じである。つまり3面電飾フィルムの利用経験の延長上でデジタルサイネージを使っているわけで、おそらくサイネージに切り替えて省力効果があるとともに、運用上で売り上げにマイナスのことは起こらなかったのではないかと思う。

 

もし放置プレイのポスターをサイネージに置き換えても、以前のポスターがどんな効用があったのかもわからなければ、サイネージになって何がよかったのかもわからない。つまりサイネージを導入する前には、いくつかのポスターを手で貼り替えながら、どんなコンテンツをどのタイミングで見せるべきかということを整理しておいた方がいいのではないかと思う。これはサイネージで予定しているコンテンツをいくつか、先行して大判のプリントにして用意すればいいことである。しかも2面だったら表裏にしておけば手で簡単に切り替えられる。またわざわざサイネージしないでポスターのままでも構わないものも見つかるかもしれない。

 

 

 

 

 

テーマ曲が必要になったら

デジタルサイネージでは、駅など音が出せない場合も多いが、自社の店頭などでは音がついていたほうが着目率は上がる。とはいってもうるさいだけのBGMになってしまうと逆効果だ。ネットでも不意に変な音楽が大音量で流れ出すと、内容を見るどころかコンテンツを消すアクションにいってしまう経験があるだろう。だからコンテンツのイメージあう、コンテンツを盛り上げるようなBGMをつけることが多い。またシーンの切り替わりのメリハリとか、着目点を際立たせるためにキーワードにはジングルを入れるなどをする。特にどうしたいという意向がないコンテンツでは無料の音の素材をネットでダウンロードして使うこともある。これらは今では多くのサービスがあり、むしろ選ぶのが大変なくらいだ。利用目的によっては料金がかかるとか、パブリックドメインと聞いたのに後からどこかに訴えられたという話も聞いたことがある。曖昧な使い方をしているうちに係争になったら驚くような金額を請求されてしまう場合もある。

企画に力を入れたコンテンツ作りでは、むしろ最初から音と映像はセットで考えないと、時間も費用もかかってしまうし、統一感のあるすぐれたものにはならない。とはいってもオリジナル曲を頼むのでは、どんなものが出来上がるのか心配であるし、費用もかなり掛かることが予想される。社歌などは何十周年の記念行事に合わせて作ることがあるが、そういう時しか予算がとれないからであろうと思っていた。
ところが先日CM音楽制作のプロダクションBISHOP MUSIC (http://www.bishop-music.com/)さんと話していて、意外にオリジナルを安く作れるものであるとわかった。

何年か前にデトロイトの教会のゴスペルのチームが来日した際に、牧師さんがビックカメラのテーマソングが気になって仕方がないと言っていて、実際店舗に行って何かを買っていた。実はあのテーマソングは日本人にとっては「たんたんたぬきの金時計…♪」であるけれども、元歌は19世紀中ごろの讃美歌『Shall We Gather at the River』で、それが牧師さんの脳裏にはあったのであろうと想像した。

ヨドバシカメラのテーマソングはアメリカの『リパブリック讃歌』の替え歌として知られている。要するによく知られているパブリックドメインを替え歌にした方が人々には親しみが湧くものとなることがあるということだ。

 

BISHOP MUSICさんは、オリジナル制作を手掛けると同時に、パブリックドメイン楽曲のアレンジ制作もされていて、作例がホームページにもあがっている。この方法だと、オリジナル曲を頼む際の不安がなく、また数多くのサンプルを聞きながら決めていくことができる。STEMファイルのサンプル音源が用意されているので、それを使う場合にはドラムのステム、ベースラインのステム、ハーモニーのステム、リードのステムといったような要素を分けて利用することができ、これらの部分入れ替えだけでオリジナリティを付加するリミックスという方法で制作すれば、かなり安く早く仕上げることができるという。
替え歌としてオリジナルのボーカルを入れるのも、楽器パートを追加するのも、音楽スタジオを借りることなく、デスクトップ上の操作とネットのやり取りでもできるからである。

フリー素材はネット上にたくさんあるものの、権利処理がしっかりされているのかとか、気に入るものを素人が探すのがたいへんなのが現実で、そういう意味では企画意図を伝えればサンプル候補を絞ってもらえる専門家が一緒に仕事をしてくれないと、クオリティの高い映像制作を効率的に行うことは難しいのだと感じた。

 

融合メディアとしてのサイネージ

かつては放送と通信では世界が異なって別々の法規で運用されていたタテワリであった。歯医者さん向けに衛星放送で番組を流していたことを書いたことがあるが、なんらか放送法の制約を受けたはずである。また電波を使うとなると用途の制約というのもいろいろ起こってくる。一つの電波にさまざまなサービスを載せることは困難だ。しかしインターネットがブロードバンドになったことでこれらメディアに関するタテワリ行政に風穴があいて、特に動画の利用局面はものすごく広がったといえる。
デジタルサイネージでも『番組』『チャンネル』など放送をイメージさせる使い方もあるが、単にインターネットで動画ファイルを送って、リピート再生しているだけである。それでも巷ではYouTuberさんたちはTV放送以上に見られている人たちがいる。動画のビジネスもまだまだ伸びるはずである。

 

しかしまだ放送や通信の法規は残っているので、既存メディアを流用・利用する際には不都合が多くある。よく待合室にはテレビがつけっぱなしにしてある。これをサイネージに置き換えたいことがある。とはいってもサイネージのコンテンツには限りがあるので、テレビも見れるようにしたいなと考えても、サイネージの画面内にTV映像を合成するわけにはいかない。TVの画面の中にPicture In Pictureとかワイプとしてサイネージコンテンツが割って入るのだったらいいのかもしれない(未確認)。台風・集中豪雨そのた自然災害の恐れがあるときには、サイネージにも情報を流したい気はするが、勝手に放送は使うことはできない。

モニターが1台だけなら画面(あるいはHDMIケーブル)を手動で切り替えればよいのだが、面数が多いとサーバー段階で内容を入れ替えなければならない。HTML表示ができるデジタルサイネージなら、ネット上の災害情報を表示させやすいが、必ずしもサイネージを前提に編集されているわけではないの、誰かが内容を見張っていなければならないのは同じだ。
今日のデジタルサイネージの配信サービスを行っているところは、たいてい通信社から提供される天気予報やニュースをオプション(月間何千円か、リコーは基本料に含まれる)で使えるようにしているので、こういったサービスが充実してくれば巷のサイネージもリッチになると思う。

 

また配信サービスも現在のような、『プレイリスト』→『番組表』『スケジュール表』というスタイルではなく、臨時の配信に対応した使い勝手の良いものが求められるようになるだろう。スーパーの内部でイベントをする場合があるが、その実況中継をデジタルサイネージに出すなどの用途が考えられる。

今までの紙のポスターの流用とか、販促ビデオの流用をしているようでは、インパクトのあるメディアにはなりえず、現場の活気や、まさに今を伝えるような工夫ができればよいなと考える。

サイネージに販促効果はあるのか?

デジタルサイネージを扱っている立場からは『効果はない』とはいえないが、サイネージに情報を表示すれば必ず効果があるという単純なものではない。サイネージの役割は昔のAIDMAでいえば、通りすがりの10~20秒目にするだけでは『A』が中心で、よくても『AI』どまり、だからあとの『DMA』にうまくつながったかどうかで効果がある無しの判断ができる。それには最初から既存の販促メディアや販促グッズと連携を考えたデジタルサイネージの計画を作っておかなければならないことを意味する。サイネージを見た人が、それ以前、またそれ以後に見聞きするものと重ねあわせて、何らかの行動に結びつくように考えているだろうか? そういう意識をしていても、なかなか計画を作って検証するところまでもっていくのは大変だ。

 

東京ではこの間にサイネージや販促の展示会がいろいろあったが、まだ両者に有機的な連携はあまり見られない。以前に学校や職場で必要な告知を掲示板や回覧板だけでなく、メールでしても、Webやモバイルに載せても、なかなか徹底せず、どのメディアも省略できないで何重もの情報伝達をしていることを書いた。
販促もただ露出回数を増やすだけでは事業者の負担になるだけなので、複数メディアをうまく使い分けることで、相乗効果を生むことを狙いたい。しかし現実には複数メディアを扱う手間が増えることをクライアント(現場の方々)は嫌がるだろう。それも引き受けるということで、更新や運用もサービスにすることが求められているし、サイネージネットワークでもそれを積極的にウリにしていきたい。

 

一般には複数メディアの制作順序というのがあって、どのように素材をリレーしていくかがだいたい決まっている。昔でいえば印刷用DTPデータからWebの素材にまわすとか、出版物の校正済みデータを電子書籍の方にまわすなどであるが、今は必ずしも紙メディアが最初に作られるわけではなくなっている。効率を考えると、例えばたいていの紙の漫画は電子書籍と同時に作られてしまう。
販促においても既存コンテンツの再加工をして使いまわすという『派生』のリレーのようなことがされている。これが手間なのだが、複数メディアの制作を一括で任されているならば、素材管理のレベルで一元的に整理できるから都合がよい。究極的には複数販促メディアにまたがる更新や運用の管理システムができればよいのだが、それを作るのは大変なので、現実的にはWeb・モバイルを起点に素材『派生』のリレーが始まるように、デジタルサイネージのワークフローもするのがよいだろう。

 

いいかえると、Web・モバイルで販促をすでに行っているところが、デジタルサイネージの活用に踏み切るのが、サイネージの販促効果を上げるもっとも近道であろう。例えば食品を扱っているとして、紙のチラシに対してWeb・モバイルでは目玉商品に関するレシピ情報にリンクを貼ることができるし、サイネージの方は調理法をショート動画で見せられる。DIYなら利用方法のショート動画かもしれない。こういう連携によってAIDMA的な販促の総合的強化ができればよいのであって、各単一メディアだけを取り上げて効果のうんうんは難しいだろうと思う。つまりすでに行っている販促に対して、さらに売場なりの最終局面でダメ押しするのにデジタルサイネージを使ってみてください、というようなストーリーがあり得るだろう。

アナログからデジタルへ?

印刷媒体の減少と反比例するように伸びているデジタルの諸媒体ではあるが、デジタルの世界はデジタル媒体同志の自然淘汰が起こり、サービスを中止するものが次々に現れている。最初に世の中に登場した時には、素晴らしいなあ、とかカッコいいなあ、というインパクトが欲しいのだが、定着させるにはビジネスに叶ったものであるという納得性が重要になる。デジタルサイネージも納得性という点での評価をされるのはこれからであろう。

これは有名な品川駅の頭上にズラッと並んだサイネージで、地方の駅でもこういう設置をしているのをいくつか見かけるようになった。トンネル状の広い空間とマッチした設置の仕方であると思う。だがどちらかというと電車の車内広告の『ジャック』という手法で、ポスターでもあまり変わりはないのではないかという気もする。

これは電通が西武池袋の駅外に掲示した例で、まさに車内広告の『ジャック』の延長上にあるといえる。柱を巻いているデジタルサイネージの方が従になった感すらある。デジタルサイネージができたのだからアナログ媒体は無くすと決めつけるよりも、両方を組み合わせて、よりインパクトの高い演出をする方が賢いといえる。いや、場合によってはデジタルにする必要がないかもしれない、くらいに、デジタルサイネージの意味合いを問うべきだろう。

 

いつも、これでいいのかな? と疑問に思うのは、すでにターミナルではすっかり定着した柱ごとのサイネージである。

この写真の札幌駅は画面が天井近くの上部にあって、雑踏の中でも画面が見やすいという点では偉いのだが、どこの駅でも林立するサイネージにどのように映像を出していくのがよいのかについては、まだ雲をつかむようなところがあって、なかなか納得できるところには至っていない。そのことは広告の付き方からもうかがえると思う。

ある広告会社の話では、アナログ看板形式の以前の年単位の契約金額をデジタルでは稼げないという。それはデジタルの設備費の分だけたくさんの広告をとらなければならないからだが、元来アナログの交通広告は安く、デジタルにした場合に金額的に埋まらなければ値上げをしなければならなくなる。

しかし交通広告の需給バランスは場所によって昇降客数が大きく異なるために格差があり、アナログ広告をとるのも難しいところでデジタル広告に切り替えろというのは難しい。店舗においても同様で、アナログ・デジタル併用によるベストな提案が望ましいのだが、今まではデジタルサイネージの効用一本に絞って推すようなことが多かったのではなかったかと思う。

インテリアとしてのデジタルサイネージ

デジタルサイネージを設置してもコンテンツの更新ができないとか、番組表がなかなか埋まらないなど、日常運用の悩みを持たれる方は多いだろう。複合商業施設のような多くのテナントが共用でサイネージコンテンツを提供している場合は、全体がスライドショウになっていればそれなりの変化は出ているが、1軒で運用している場合は単なるスライドショウでは飽きられる恐れがある。しかし絵画や紙のポスターでも見飽きないような絵ならば長期間の掲示に耐えられるのだから、よい作品を選ぶことに気を配れば何とでもなると思える。

 

もしある店の主人が写真の趣味をもっていれば、自分の作品から毎月なり毎週なり選んで差し替えていき、また親しい人とは表示されている写真をネタに会話をすることもできる。旅行やスポーツが趣味である場合も同様で、そのうち知人の撮った写真も表示するルールを作って、店の壁面をギャラリーのようにすることもできるかもしれない。自分で能動的に写真を撮ったり、旅行・スポーツ・その他の趣味にのめりこんでいない場合でも、興味のある分野のフリー素材をネットで探して、定期的に差し替えるようなことをしていけばよい。

例えばユネスコ世界遺産の画像を無料で使いたいなら Pixabay というサイトがある。Pixabayは著作権のない画像や動画を共有するところで、すべてのコンテンツはクリエイティブコモンズCC0の下で公開されていて、店内装飾のような商業目的であっても、許可が不要で安全に使用できる。しかし、画像に映っているものの中に商標やパブリシティ権、プライバシー権などに抵触するものが含まれている可能性はあるので、自分で注意して使う。難点は画像検索は日本語よりも英語でした方が便利なところくらいだろうか。

もっと手間をかけずに安直にしたければ有料だがデジタルサイネージに世界遺産を配信するサービスもある。これは自販機にサイネージをつけてドリンクの売り上げで運用するサービスをしているアイティ・ニュース株式会社のもので、他にもNHK動画ニュース配信サービス、緊急地震速報配信などなども配信している。この世界遺産映像は写真ではなく標準で1分間のmp4のようだ。
似たようなサービスはいろいろあるもので、名画付大型デジタルフォトフレームというのも売っていて、額縁つきの政界の名画スライドショーなのだが、これは逆にサイネージとして運用するのは無理かもしれない。

以上はいわゆる環境映像的なものだが、こういう要素は他のサイネージでもあったらよいように思う。例えば窓口での番号案内というのは役所や金融機関や病院には必ずあり、LEDの番号表示の頃と同じ使われ方が液晶パネルになっても行われている。

この場合は番号を知らせる以外の余計なことはするな、というポリシーがあるのかもしれない。私の通う病院では番号表示とともにやたらに諸注意事項が出てきて全然楽しくないのだが、こういう場合でも提案の余地はあると思う。それは画面内での表示提案ではなく、室内のインテリアとしての提案として行ってはどうかということだ。(→次回に続く)

通信で活用が広がるサイネージ

デジタルサイネージってどんなものかを知ってもらうには、とりあえずスタンドアロンでUSBを挿せばスライドショーが始まるものが説明しやすい。しかし使う台数が増えたり、それも設置場所が離れ離れになってくると、内容の変更・更新をするのが煩雑になってしまい、サイネージを活用しようという意欲も失われるかもしれない。そして更新がされないと着目もされないという悪循環に陥る。ただし特定商品の横に置かれる小型の電子POPのように、同じ商品説明をループ再生する場合は更新があまりないので、スタンドアロンで使われている。

 

USBのサイネージは今でも多いのだが、それは最初の1台で足踏みしているところが多いことでもある。今ではクラウド型とかサーバーからコンテンツを通信回線経由でダウンロードして使うサイネージがいろいろ出ているのだが、これが多種多様であることから、2台目以上の展開が進まない原因にもなっているように思える。クラウド型ではコンテンツ制作以外に通信費やシステム費用などがかかるものの、管理面では大きな進展があるのだが、もともと販促とかコミュニケーションの管理があんまりされていないところが多いので、クラウド型の価値がわかってもらい難い。

しかし通信環境とかネット上の管理システムはこの10年の間にも大変な充実をみているので、実は通信やシステムの負荷はあまり気にしないでもクラウド型のデジタルサイネージはできるように変わりつつある。だから簡易なクラウド型から始めて、サイネージの活用方法が身に付くとともにシステム的なサイネージに移行していく考え方がよいだろう。

 

通信と管理アプリ

クラウド型というのは、インターネット通信と、データのやり取りをするアプリからなる。インターネットは既存の回線を使う場合と、サイネージのために別の回線を用意する場合とがある。企業がセキュリティの観点でインターネットを利用を制限している場合は、サイネージのためには別回線を引かざるを得ないが、サイネージ程度ならモバイルルーターとか4GスマホのディザリングのWiFiで使うこともある。最近ではあまり有線LANを敷く話は聞いたことがない。
通信端末とメディアプレーヤーを兼ねて専用のSTBを使うような方法が先行して普及していて、その方が高機能であり、操作面でもすべきことが少ない。一方でPC/タブレット/スマホでインターネットとつないでサイネージに表示する場合は、ある程度それらの操作は利用者がしなければならないことになる。後者も新規に購入すると費用がかかるので、いっそのこと専用STBを使う方が初心者にはわかりやすくなる。値段はどちらも同じようなものである。

 

アプリとかクラウドの使用料というのもピンからキリで、単にスライドショウのような場合は無料のものもあるし、コンテンツ管理やスケジューリングの機能をもつと月額何千円かの費用がかかる場合もある。これにはWebサイトを管理するCMSのようなレベルのものと、さらに上には放送局の番組の送出システムのような番組の編成やスケジューリングが自由自在なものまである。億の単位のサイネージにはそのような大がかりなシステムが使われていたりするが、一般的にはCMSみたいなレベルのものが使われている。

 

管理

管理すべきは、①ファイルと表示に関することと、②番組表やスケジュールに関することと、③IDとか利用者グループに関するもの、などがある。

もっとも単純なスライドショウの場合は、どこかにフォルダに画像ファイルを入れておけば、それらを順次表示することで、USB媒体がネット上のフォルダに代わっただけである。スライドショウでもアプリが備わっていれば、表示順が変えられたり、トランジション効果が選択できたり、開始終了時間の設定をする。まずはこの程度のサイネージから使いだすのが最もわかりやすいだろう。クラウドといってもサイネージ専用のものではなく、Facebook、Instagram、GoogleDrive などのすでに一般に使われているものを利用して、そこにアップされた画像をサイネージに順番に出すようなものも出てきているので、これらはほとんど管理費用がかからない。

 

スライドショウでは表示を変えるときはフォルダの内容を入れ替えなければならないので、ファイルの表示を決めるをプレイリスト作って管理するのが②で、同じ素材を使いまわしながら複数の似たプレイリストが管理できる。そのプレイリストをスケジューラーで時系列に配置して番組表とする。これで、平日と休日とか、朝は「おはよう」夕は「お疲れさま」といったバージョンが作れる。昼のランチ用、夜のバー用、などいろいろ考え付くのだが、まだそのような使い分けがされている例は少ないだろう。つまり②が当面のチャレンジ目標であろう。むしろ初心者に最初からこういったことを押し付けるのはハードルが高すぎるのかもしれない。

 

①②がクラウド上でコントロールできると、全世界に散らばったディスプレイに対しても1か所でコントロールできるのが通信利用のスゴさである。実際は本社・支社とか、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)、などでは、チラシを作るにしても扱う品目が異なって、販促物の手配には手間暇がかかるのを、③の機能があればネット上でかなり解決できるようになるはずなのだ。まだサプライチェーンマネジメントとサイネージの配信が連動しているような例は稀かもしれないが、デジタルサイネージの将来はどんどん広がっていくのだと考えられる。

ビジネスにサイネージを組み込む

年度末になると会計処理の理由から利益を出しすぎるよりも何かに投資をしようということで、デジタルサイネージをまとめて発注するような会社も過去にはあった。その後どのように使っているのだろうかと思っていたら、倉庫に眠ったままであることもよくある。

また最初は予算がとれて、気の利いた見栄えのするコンテンツを作ってもらっても、その後同等の予算がとれなくなって、紙のポスターとあまり変わらない使い方になる場合もある。社内で新コンテンツを作って更新するはずだったのに、グラフィックソフトを使える人が移動になってしまって、後任がいないところもある。

 

どうも日常のビジネスの一環として社内でサイネージの更新に取り組むことは難しいようだ。そこでメーカーはサイネージのテンプレートやグラフィック素材、またカンタン制作アプリなどをハードウェアのおまけとして売っているのだが、それだけではまだ何かが足りない。

実は写真やショート動画を売場とかそれに近い人が現場で撮って、若干の加工をすることくらいは難しくない。カンタン制作アプリも同様である。難しいのは媒体設計なのである。下のようなチラシは分解すれば商品名と写真と若干の説明コピーと値段で成り立っているので、それくらいは現場でもできそうだが、それをどのようにレイアウトするのか、優先順位をつけて必要ものを一定の紙面にぴったり収めるというところに経験とかノウハウがものをいい、そのデザインをしてもらうと10万20万という費用がかかるだろう。

レイアウトの前提として、見る人の視線の移動や、文字の大きさ太さの使い分け、などの知識が必要になる。その部分だけでもなんとかテンプレート化して、チラシレイアウトの迅速化を図りたいという取り組みは昔からあった。

 

今のWebやモバイルのショッピングでは、原稿をデータベース化して自動でレイアウト処理させることで、前述の現場の人が情報発信を自分でできるようにしている。これが可能なのは、画面の解像度がまだ紙に比べて粗くてレイアウトの制約がいっぱいあるからで、もし4k8kになるとチラシそのものを表示できるようになって、レイアウトの自由度が高くなるから、自動レイアウトできない表現も増えるかもしれない。

今のデジタルサイネージというのは、このちょうど中間に位置するようなツールで、データベースよりはクラフト的なものが求められている。だから完全に自動でレイアウトするのではなく、緩くテンプレート化したやり方の方が向いていると思う。

つまり、印刷やWEBでテンプレート化した平面レイアウトをしているようなことを、動画の時間軸に素材を並べることにも適用させていけば、映像やコピーの部分変更などはやりやすくなる。こういったテンプレートを作るノウハウはチラシのデザインと似ていて、最初にかなり設計なり試作なりに手間ヒマをかけなければならず、コンテンツの一発制作よりも回りくどいことになるから、若干費用はかかってしまう。しかしできてしまうと、更新コストはおそらく10分の1になる。

これなら現場でも対応できるかもしれないし、外注・アウトソーシングしても大した値段にはならない。この方法がお得になるのは、前述の前提では一つのテンプレートが10回以上は使いまわされる時であるので、毎月更新するものには1年に1テンプレートを作るとか、毎週更新するなら季節ごとにテンプレートを変えるなどのルーチン化を想定するのがよいだろう。

この方法のメリットは制作代を抑えることにもなるものの、情報発信をビジネスにリンクさせやすく、何よりも更新の機動性が高められるところにある。

 

 

 

サイネージ観光案内は大丈夫か?

1月23日にデジタルサイネージコンソーシアムの都内ツアーに参加して、丸の内/八重洲/渋谷/新宿における見どころを案内してもらった。前回の投稿でも、昨年からディスプレイのリプレースで新しい設備にも入れ替わって見栄え・迫力が増してきていることを書いたが、ハードウェアの進歩とは対照的にソフト面ではほとんど投資がされていないで、利便性も上がっていない面も見られた。

施設・フロアの案内とかツーリストインフォメーションのようなものは増えてもあまり利用されていないのだが、いろんな面で分かりにくさや、デジタルサイネージ特有のやりにくさというのがある。例えば地図を表示して現在地から目的地まで誘導するような場合に、まるでスマホのアプリのようなものを無造作に大形液晶に表示しているものが多い。

この写真の場合に、サイネージを見ている人の右側には鉄道が通っているのだが、サイネージは南を向いて設置されているので、中に表示される地図は北が上になっているために、現在地の左に鉄道が通っているようになる。だから見る人は、天地逆の位置関係を翻訳しながら地図の中を探したり、道順を考えることになる。

 

もしスマホならば、自分の体を回転させて、地図の天地と目の前の光景の位置関係を揃えることができるが、デジタルサイネージは回転させることはできない。

ここで利用されている地図は専門の会社から提供されている汎用のものだが、果たして南を上に表示するようなコンテンツの回転機能はあるのだろうか? 親切なことにこのサイネージでは目的地までの順路の表示もされるものの、何しろ目の前の光景とは天地逆の順路が示されるので、本当に役に立つのだろうかと心配になる。普通の人はやっぱりスマホに頼ることになるのではないか。

 

そもそもなぜこのサイネージが南向きに設置されたのかは想像ができる。北向きに設置すると南からの日照をまともに受けて液晶が非常に見づらくなるからだろう。このことはどこにでも共通する課題である。もし本気で北向きの地図案内をデジタルサイネージで行いたければ、バックライトではなく反射型液晶を開発しなければならない。それは技術的には可能だろうとは思うが、ニーズが少なくては普及はしにくい。Kindleのような電子ペーパーも太陽光のもとで見やすいのだが、地図のようにどの方向にもスクロールする用途には向かない。

 

また建物内のフロア案内などのデジタルサイネージでも、地図に相当するものは建築図面の平面図のようなものが多く、目的地を表示されてもどっちを向いて何を手掛かりに進めばよいのかわかりづらい。やはりコンテンツが貧弱な感じが否めない。

今日では実際に人々が日常で案内情報として頼りにしているのは、Googleの地図にストリートビューを加えた、3Dに近いもので目的地までの順路をシミュレーションできることであって、そのことと現状のデジタルサイネージの案内図とのギャップが非常に大きく感じられた。だからと言ってわが社で回転できる地図が開発できるわけでもないので、ボヤキに近いものだが、何かサービス開発をするとすると、やはりスマホ連携にならざるを得ないと思う。

 

 

 

 

案内システムのカオス

東京駅周辺は、日本のデジタルサイネージが最初に大規模に使われだしたところであり、今ではどちらを向いても何らかのサイネージが見受けらえるほど面数も増えている。また昨年からディスプレイのリプレースで新しい設備にも入れ替わって、きれいな表示も多くみられる。

とはいってもデジタルサイネージの完成されたモデルかというと、どうもそうでもないようだ。いくつかの課題が見受けられて、それは今後デジタルサイネージが普及するであろう他のところにとっても悩ましい問題になりそうだ。

 

まず観光案内とか、施設・フロアの案内に使われるデジタルサイネージは、未熟さを隠せず、実際に人がどんどん利用しているようには見えない。この問題はあらためてとりあげる。

第2はデジタルサイネージ以外の表示物とデジタルサイネージの役割分担についてであって、サイネージが増えるとともに似たような情報があちらこちらに出てしまうことと、それでもデジタルサイネージが勝ち残ればよいのだが、むしろ何のためにデジタルサイネージにしたのかわからないものとなると、かえってデジタルサイネージが撤去されてしまうかもしれない危惧もある。

上の写真は丸ノ内線東京駅の改札だが、左端のサイネージは東京メトロが路線図や運行情報を表示させるために設置したもので、広告は載っていないのだが、左端に時刻や天気予報などの載せている。

その右には日付曜日を見せて、下に広告を取っているボードがある。その右には事故情報を書き入れるホワイトボードがある。改札の位置から見ると、一番重視されているのがホワイトボードで、デジタルサイネージが最も遠い位置にある。これはどうしたことか? 日付曜日付広告よりも分が悪い。

 

デジタルの情報表示システムなんだから、大体これらは一つの運行案内にまとめられそうなものだが、関係者がそういう大きな見直しをする前にデジタルサイネージの発注がされてしまったのであろう。つまり事故対応とか広告とか個別の事情とかしがらみの中でデジタルサイネージも動いているわけだ。

大義名分としてはデジタルサイネージにすると災害時にNHK緊急放送が流せることであるようだが、そのために日常はあまり活用されなくてもよい、とうのは筋が通らない。

 

次の写真も『世に貼紙のタネはつきまじ』と共通する問題だが、ビルの入り口には何かと案内板が増えていく例である。こういうことが起こる事情というのも十分分かるのだが、それでもデジタルサイネージがちょっとでも解決に近づくような例であってほしい。

おそらく左の大画面が最初に作られたのであろう。これは丸の内エリアにある108のサイネージに共通に流している『番組』のようなものであって、広告媒体というよりは、それぞれの時期に合わせたイベント案内や、作りこんだコンテンツが流れている。そして災害時にはここにどのようなものをどういうルールで流すかという緊急オペレーションも決まっていて、NHK緊急放送も流せる。

だがしかしこのパネルがはめられているビルの案内はここにはなく、右の掲示板や別のデジタルサイネージによる館内案内が置かれている。我々はスティーブジョブズではないので、統一的な美観を最優先にして、現状のしがらみを問答無用に切り捨ててしまうことはできず、複数のサイネージがあってもしかたないか、程度には思うが、来館者への案内について関係者の間に統一的なポリシーができていくような話し合いを始めないと、上記2例のような雑然とした、どこをどう見ればよいのかわからない案内システムのカオスに落ち込んでいくのだろう。

世に貼紙のタネはつきまじ

数年前に新築移転した某総合病院は、来館者の受付から最後の支払いまで、ほぼ自動販売形式で事務の省人化していて、かなり人の流れはスムースになっている。来館者の案内・誘導もいくつかのデジタルサイネージとか表示システムになっている。さすがだなあ、と思っていたが、このところ次第に紙の貼紙が増えてきている。

ここのデジタルサイネージは大別して2種あり、上記写真のような診察の案内は、予約システムと入館時のカード処理などから自動化して表示されている。一方で通路に縦型のデジタルサイネージがあり、そこには以前は紙の貼紙であった諸案内がローテーションで表示されている。それは交通案内とか路線バスの時刻表とか、フロアマップとか、ほぼ内容が変わらないようなものである。これは全く手作業でJPGとかを張り付けていると思われ、動画は基本的にはない。

 

こういうデジタルサイネージに対して、追加されている貼紙は、個々の検査室や診察室など、全館対象ではない追加事項とか、短期間の案内や変更が多い案内などアドホックな内容である。技術的には診察案内のところにアドホックな内容も表示できるので、そうすれば診察待ちでヒマな人はきっと読んでもらえるはずだ。

しかし診察案内のシステム化したデジタルサイネージには、アドホック的な案内が追加しにくいかできない構造になっているのだろう。アドホックな貼紙は、それぞれの部署の判断で貼ったり付け替えたりしなければならないから、システム的なものに情報登録する方法とは運用上の相性がよくないのだろう。

 

一般にデジタルサイネージの配信システムでは、割り込み表示の機能などがあって、スケジューリングやプレイリストの設定をこえて、一時的に別の表示を出せる仕組みがある。防災情報などのことも考慮しているからである。

問題はシステム的な案内表示にそのような割り込み表示があるかどうかと、その割り込みの仕方が簡単かどうかだろう。貼紙をするかどうかの判断は医師がするのだろうが、実際の掲示は事務担当者がするのだろうから、どの事務担当者でも操作可能なアドホックの表示機能があればよいことになる。おそらくこのことは企業や学校の内部のデジタルサイネージにも共通していると思われる。

テクノロジー vs 伝統

昨年暮れのクリスマスのイルミネーションを見ていると、どんどん派手になるのではなく、どちらかというとクラッシクな雰囲気に戻りつつあるのではないかと思えることがあった。地元吉祥寺駅前のイルミネーションは過去にいろんなLEDがどんどん増える方向にあったのが、近年は昔ながらのツリー状のものが定着しつつある。これはヨーロッパの街並みにも通じるような雰囲気がある。

一方で商店街のサンロードの方は天井にLEDが飾られてきたが、これもド派手なものではなく、線香花火に近い。いずれにせよサイン・ディスプレイが出しゃばり過ぎないような配慮がされているように思える。

 

一方ドバイやバクーやシンセンなど新興都市ではLEDでビル全体を囲んだような、プロジェクションマッピングにも似たディスプレイが増えていることを以前に書いた。こういった街々はそもそも低層ビルの屋上にネオンサインの広告がない。なにしろ何もなかったような土地に突如高層ビル群が現れた街なのだから当然である。かたや日本は低層ビルにネオンサインというのが元の姿なので、それを取り去ってまでビル全体をLED化するのは難しいだろう。

 

すでに日本でもLEDストリップによるビル壁面の大型ビジョンがあちこちにみられるようになってきた。しかしそこで表示されるものはきっと世界の新興都市にあるようなものとは異なったものとなるだろうと思う。

上の映像は新宿にあるものだが、スマホのカメラで撮ったらモワレが大胆にでてしまった。コンテンツはまだある意味ありきたりで、特段インパクトがないというか、むしろ1インチ間隔のLEDストリップの粗さがかえって目立ってしまうような絵柄を選んでいるのが気にかかる。つまりこのようなデバイスの場合はきれいな写真を再現しようということではなく、素朴なクリエイティブをした方が見栄えが良くなるのではないかと思った。

 

またこういった新技術の設置をした最初の段階は、技術デモンストレーションの印象が強く残っているので、新規なコンテンツを作りたくなるのだろうが、次第に景観との調和とか、商品・サービスとの調和の方が重要視されるようになって、クリスマスツリーが落ち着きを取り戻したように、無理のないコンテンツに収束するのだろう。

顧客のことを知る努力

営業の際に顧客の視点で提案するのは当然としても、無責任な提案をしている例が多く見受ける。それは顧客の気を引くために何か新鮮な話題を提供しなければならないという思いからくるのかもしれない。“デジタルサイネージはこんなにスゴい!”という主旨の某書籍には、小売店のPOSレジのデータを使って、品薄なものと余り気味なものを分析して、余り気味なものの販促をデジタルサイネージでリアルタイムでするとか、気温によってプッシュする商品の表示を変えるような提案がある。こういうアイディアをいっぱい話し合うことの意味はあるのだが、それで商談が進むようには思えない。

上記の提案は、商品仕入れや在庫の調整の話であって、そこにデジタルサイネージが割り込んで引っ掻き回すわけにはいかないだろう。もし上記のような販促メカニズムを既に考えている小売ならば、すでにPOPやノボリなどアナログな方法で対応しているはずである。

もしデジタルサイネージの営業が小売店を観察していて、そこで行われている販促のノウハウに気付いたならば、それに関連したデジタルサイネージの活用を提案するのは正しい。つまり起承転結の「起」と「結」だけをくっつけたような提案にすると無責任と思われてしまう。

 

この問題を整理すると、①今すぐ効果があること、②次ステップで何をするべきか、③将来にわたってめざすところ、というのを混同させないことだ。つまり目標を直近、来期、中期にわけて整合させて作っていく必要があるので、それぞれのスコープにおいて、顧客の販売計画、戦術戦略、企業理念を理解したうえでないと、顧客が身を乗り出して親身に検討する良い提案にはならないはずだ。

難しいように思えるかもしれないが、これらのアバウトなことは平たく考えれば顧客のWebサイトとか会社案内、決算資料などからざっとは読み取ることができる。提案のアイディアが浮かんだとしても、やはり顧客のことを知る努力をしてから提案を練る必要がある。

 

大きなお世話、に注意

昔から、コンサルティング営業とか提案営業とかいわれ、客先のビジネスの助けになるようなストーリーをからめて自社製品やサービスを売り込むことが行われている。もっと進むと『ソリューションを売る』というような顧客の問題解決に踏み込むビジネススタイルがある。しかしあまり提案の風呂敷を広げすぎると逆効果になるだろう。「いったい何の権限があって、人のビジネスに口出しするのか?」と思われてしまうからだ。

そもそも提案営業の基本は顧客をよく知ることから始まるもので、よく知りもしないで押し売り提案しても無駄である。他社のサクセスストーリーやコンサルタントの講義などで見えないのは、どのように顧客と接して会話し、情報を整理しているかのところであって、そこを割愛した話を聞いてそのあとのソリューションの部分だけに「なるほど」と思っていまうことには注意しなければならない。

どこでもお客さんの接待はしていて近況はつかんでいるのだろうが、それと情報分析は別である。お客さんの同業社、特に競合社がどういう状態で、何をしようとしているのかなども客観的に抑えておく必要がある。おそらく最も顧客の意識の中に強くあるのが競合との差別化のことだろう。つまりお客さんがなぜそんなことを言っているのかの意味が理解できるような情報の下地をもつことである。

 

大きなお世話にならない提案というのは、起承転結の『起承』の部分において、顧客の心の内を代弁するようになっている必要がある。言い換えると、起承の部分で顧客が「そのとおりだ。ウチのことをよく理解してもらっている」と思ってもらえれば、その先の転結の提案部分も耳を貸してくれるが、最初の起承の部分で、「ウチの事情も業界の事情も知らんくせに、勝手なことを言っている」と思われると、その先の提案がいかに優れたものでもウソ臭いものに思われてしまう。

 

顧客の競合社のことを露骨に表現しなくても、顧客が競合社のことを思い浮かべるようになっていればよい。そのような要素を提案に入れるためには、当然ながら顧客と競合社の比較研究をしなければならない。ただそれは競合社を負かすという視点ではなく、それぞれの進む道がずれている場合も多いので、各社の個性を伸ばすという視点の方が無難である。もしかすると競合社ともビジネスをする日が来るかも知れないからだ。

 

 

 

LEDのサイネージ

デジタルサイネージの大型ビジョンというとLEDビジョンが鮮やかで屋外でもよく使われている。LEDビジョンは昔は女工さんが100万個とかのLEDをはんだ付けしていたのが、今はタイルのようなブロック構造になっていて、ロボットが組み立てている。YouTubeに製造現場の動画があったので引用しておく。

これと違うやり方がLED Strip をつなげたもので、製造工場の組み立て工程ははるかに簡単なものとなり、製品も平米あたり何万円かになってしまう。また、透過型とかシースルーといわれるような使い方ができることも書いた。ただいわゆる解像度的には1dpi~4dpi程度なので、あまり狭い空間での映像表現には向かない。店頭POPとかイルミネーションとかが適しているだろう。

LED Strip でもLEDがテープに直交して取り付けられているSide Bar の場合は、テープの間隔が狭くできて解像度は向上するので、より映像には向いたものとなるし、シースルー効果も高くなる。LEDのSide Bar を透明なプラスチックの枠にタイル/ブロック構造に組んだものが、軽いので扱いやすく、実装すると上の写真のようなものとなる。

 

ただ映像が流せる場所でも、通常のサイネージのHDMIとかVGAの映像信号をそのままもってきて使うわけにもいかない。LED Strip には画像・映像の1ラインづつをシリアル転送しなければならない。データ構造は単純なので、画像データからの変換は安いラズパイ(Raspberry Pi)やアルデュイノ(Arduino)でもできるのだが、HDMIのようなフレームレートでの表現はできないだろうから、かなりコマを間引いたパラパラ漫画の上等のような映像になってしまうだろう。

このコントローラーはみなさんまだ開発途上で、安直に使えるものは少ないかもしれない。LED Stripが1本ならばアルデュイノでできたとしても、1辺が何メートルの映像となるとLED Stripが何百本になり、それ専用に開発されたドライブ装置が必要となるからだ。

時代の流れとして、LEDブロックからLEDストリップへの移行は必然のように思える。またLEDストリップは自動車への装着に次いで、家庭などのLED照明も変えつつある。つまり従来の電球や蛍光灯を外して付け替えるようなものではなく、建材とか天井材そのものが発光し、それがコントロールできるという取り組みもされている。これも注目すべき分野になるだろう。

コンテンツは誰が作る?

前回紹介したデジタルサイネージの本では、サイネージ分野を3つの業界から見ている。それらがデジタルサイネージコンソーシアムの核でもある。

あえて言えばエンドユーザーというか、サイネージを使う主役のことは外して議論している感があった。JR東日本などではデジタルサイネージは定着しているが、すでにマスメディアに匹敵するようなものになったことを書いた。ドア上の場所は運行情報を流す場所であったわけだから、実際にはJRが主役のはずで、JRの考え方とか利用の予定を聞いてみたいものだ。

きれいな広告は出るようになっても、人身事故や天候不良での遅れの情報、代理輸送案内などはサイネージで出るようになるのだろうか? 夏には高円寺阿波踊り、錦糸町河内音頭などの行事があるように、もし各駅を中心にイベントを開催していて、その情報を流したいとなったら、沿線においてサイネージを使った案内に便宜を図ってもらえるのだろうか?

 

デジタルサイネージの別の本に、『儲けを生み出す!魔法の映像看板 デジタルサイネージのすごい広告効果』というのがあって、そのp164には、『●コンテンツは店のスタッフがつくるのがいい』という文がある。

「映像看板のコンテンツは、店の販促戦略に合わせて時々刻々変えていく必要がある。そうなるとコンテンツをつくるのは、そのときどきの店の環境がわかっている人、つまり店のスタッフがベストだ。」ということで著者の会社では導入実験などを除き、基本的にコンテンツ制作を店側に任せ、その素材提供とかサポートに徹するという姿勢をとっているという。

それが可能なのはネットの利用とPhotoshopなども含めてパソコンで誰でもどこでもできるからで、オペレータを派遣している例はないし、リモートコントロールもほとんど行っておらず、「広告制作の主役は店である」という理念があるという。

 

このことは全く異論がなく、そうでなければ実際には役に立たないと思うが、それができるところはすでにデジタルサイネージでもネットのマーケティングでも行っていて、これから営業をするとなると、オウンドメディアに関しては自信のないクライアントを相手にすることが多いので、担当者の育成が鍵になる。

それで思い出したのだが、あるところがナイトクラブのチェーン店のWebを受注して店長Blogを目玉にしようとしたことがあった。とはいっても放っておいてBlogを書いてもらえるわけではないので、Web会社の営業は深夜の閉店時間に店を訪問して、店長一緒にBlogをどう書くかの相談にのっていた。そこまでするのはどうしてもこの事案を成功させたかったからだが、ずっと続くとなると営業の体がもたない。

 

現実のクライアント事情をかんがみると、素材提供も重要だが、最初の半年なり1年なりは、月間いくらかのサポート料をいただいて、手取り足取りでコンテンツ制作能力向上をお手伝いします、というビジネスがあってもいいのではないかと思う。

サイネージと広告ビジネス

10年ほど前に出版された『デジタルサイネージ戦略(アスキーメディアワークス2010.4)』は、扉に「デジタルサイネージの現在と未来」とあるように、かなり幅広く当時のサイネージの取組み状況と、これからの発展の方向について、非常に多くの関係者の話が載っている。大雑把にいえば当時はデジタルサイネージの過渡期であるという指摘と、Webも利用スタイルが定まるまでに時間がかかったというようなトーンで書かれている。この書籍はデジタルサイネージコンソーシアムの活動のまとめのようなものであろう。

第2章ではいわゆる導入事例の話が集められ、第3章はマーケティングとか広告の視点でまとめられている。さすがに8年ほど経っているので今では導入事例は数えきれないくらいになっているのだが、マーケティングツールとしてのデジタルサイネージの役割を考えてみると、まだ過渡期のままであるように思える。つまり誰にでもわかるような利用スタイルというか、広告媒体としての認知が広告業界にもできていないのではないか。
それはもっともな話で、デジタルサイネージはマスメディアのような同じ情報を大量に伝達する手段ではなくて、それぞれのローケーションやターゲットにあわせてコンテンツを用意するような、非常に分散的なメディア(ミニコミのようなもの)を指向したので、画一的な効果測定や料金化というのは難しい。

唯一マスメディア化したのは電車の車内広告で、JR東日本などのページビューはローカルTV・CATVなどよりも多いだろう。しかもアクテェイブな人々が対象なので、車内広告の価値は高くなっている。一方でそのコンテンツは初期においては独自のものが開発されていたのが、今ではTVのCF流用のようなものが主流になっている。つまりデジタルサイネージといってもテレビ広告の延長のようになっていて、過渡期ではなく安定したメディアになったと思える。
先行するWeb広告も紙メディア以上に成長したが、ロングテールの広告を成立させたのはGoogleとかオークションサイトくらいで、どちらかというとWeb広告もマスメディア化しているといえる。

ではいろいろな分野でのデジタルサイネージが過渡期を超える時には、マスメディアに近づいていくのだろうか? やはりミニコミというかネット用語ではロングテールのメディアを開発しようという動きはある。GoogleはYouTubeというロングテールに向いたメディアをもっているので、デジタルサイネージにおいてもロングテールなコンテンツ提供をする方向である。しかし他のところではYouTubeのような仕掛けには手も足も出ない。
以前に専門情報誌が成立するようなニッチな分野では広告モデルのデジタルサイネージが成り立っていることを書いた。WebではBlogが簡単に解説できるように、専門情報のサイネージ配信を簡単にできる仕組み(プラットフォーム)が出てくれば、広告管理を含めたシステム構築を個別に開発する必要はなくなり、いろいろな分野ごとでの広告モデルデジタルサイネージが登場するかもしれない。

今でもクラウド型デジタルサイネージではコンテンツの編成から配信に関する管理をネット上で行えるようになっているが、広告の申込み・受付からトランザクション・レポーティングの仕組みが無いので、外側で別途構築しなければならない。日本の広告業界がこういったニッチ分野には関心を持っていないからプラットフォームがないのだろうが、海外ではどうなっているのか調べてみたい。

デジタルサイネージはオウンドメディアの第一歩になる

愚痴を言うわけではないが、アメリカで登場したデジタルとネットによる新たなコミュニケーションツールが日本では十分活用されなかった状況を多く見てきたので、アメリカと同じような宣伝文句で日本のメディアビジネスをすることの限界を感じる。そうはいってもコミュニケーションのIT化に遅れるとビジネスでも教育でも大変なビハインドになることはわかっているので、その日本固有の障害を探して突破しなければならない。

そもそもコミュニケーションのツールをデジタル化する技術的なことは世界共通なので、日本にハンディはないのだが、コミュニケーションしようという志向が日米で大きく違っているのだろう。Webのオウンドメディアのことを以前も取り上げたが、日本の企業には広告代理店に外注する部門・担当はいても、顧客とコミュニケーションしようという担当は少ないために、日本のオウンドメディアが高評価されないのではないか。

この画面キャプチャーはコカコーラのサイトで、コークについて検索するような人が対象ではなく、コカコーラ社がどういう会社なのかを理解してもらうことを主眼にしていると思える。そのためにどこかに同社に関連したエピソードとか記事を掲載しているのだが、編集部には10人ほど居るようだ。日本の会社でそういう広報的な実務部隊を社内に抱えているのは、今ならオウンドメディアで有名な会社くらいなのかもしれない。

 

別の言い方をすると、オウンドメディアができない会社は、広告代理店に外注したありきたりの広報しかできない。それでも広告代理店は一流のクリエーターを抱えているので、お金さえ払えば消費者に魅力的なコンテンツは作れるのだが、コンテンツが魅力的であることとビジネスの成否はイコールではなく、儲かった企業が税金対策で広報活動に金をかける場合もある。業績が下降するとすぐに広報予算がカットされることでもある。

では予算のない組織ではどうすればよいのか? これは今日では難しいことではなく、そこで働いている人の日常をメディア化する訓練をすればよいのである。つまり美味いメシを食う時にはスマホで撮影してインスタに上げる習慣のある人なら、自分の扱う商品の良い点を撮影する習慣をつける。仕事がうまくいった時の社内のよい雰囲気も撮影して残しておきたい。扱う商材について仕入先から聞いた面白そうなエピソードもその都度SNSに上げておくのがよい。お客さんから褒められたうれしい話も社内で共有できるようにするのがよい。このようにして一人一人がソース情報を溜めこむことがよいコンテンツ作りの土台になる。

社長や偉い人が威勢のよい話をすることをデジタルサイネージで流しても、きっと振り向いてもらえないだろうが、消費者目線で面白いコンテンツというのは現場の人が感じているはずで、その人たちの訓練をする場として考えると、デジタルサイネージはオウンドメディアの第一歩になるといえる。

いまだコンテンツは手探り状態

街には多くの動画表示がされてはいるけれども、それをメシの種にしようとしている人から見ると、あまり納得のいくデジタルサイネージには行き当たらないのではないだろうか。サイネージのハードウェアを購入したところは、コンテンツとして動画を流すか、支給されたテンプレートの写真や文字を差し替えて流すことが多かっただろう。特にスタンドアロンの店舗用サイネージの場合は、購入時にいろんな業種のいろんなシチュエーションに合わせたテンプレートファイルがいっぱい提供されていて、それを参考にすれば誰でも簡単にコンテンツを作れると教えられた。

だがこの次のステップとして、本当に自分のビジネスのためには、どんなコンテンツを作ったらいいのだろうかと考えると、先には進めなくなってくるところが多い。場合によってはサイネージの効果がわからないから止めてしまい、それ以前のポスターや掲示でもいいではないか、という逆行も起こっている。

 

これはデジタルサイネージを導入の際の基本設計が曖昧なことからきているのだろう。だからコンテンツ制作に於いて何を満たせばよいのか?というのが分からなくなってしまう。そもそもサイネージを売る側は、いろんな使用法や事例を紹介して、いいとこどりのプレゼンをしているのかもしれない。しかし必要なのは利用者が自分にとって必須のことを明確に意識しているかどうかだ。

街のサイネージを見ると、そのシステム出身によってそれぞれの利用分野がある。これらが大雑把なサイネージの用途でもある。それを考えるだけでも自分にとって必要なサイネージが何かが浮かんでくるように思える。

家電からは大型テレビ

番組をスケジュールして配信する放送局の送出システムに似せて配信管理のシステムが作られた。広告配信のようなもので制作面と運用管理は別である立場だろう。クラウド型サイネージはこれに近いものが多い。

電子POP

商品とともに棚に収まるような7~10インチの小さな液晶を使い、特定商品の説明的な内容を反復していて、もともとは販促ビデオなのでコンテンツもその延長にある。コンテンツはSDカードの入れ替えなので特に知識は不要。

表示器

銀行や病院では表示装置として他のコンピュータシステムから更新情報を受け取って表示する用途がある。その合間に他のコンテンツを反復表示しているが、ベースが専用システムであるために、販促的サイネージとしての運用の利便性はいまいちかもしれない。

案内用のタッチパネル

問合せを画面タッチで行うインタラクティブ型のサイネージがある。誰も操作しないときは他のサイネージと同様にコンテンツを流せるが、画面にタッチして操作してもらう工夫が必要だ。ボタンなどの選択肢を絞らないと、通りすがりの人に操作してもらうのは難しい。

一方で次のような見方もできる。

・大型テレビ

営業時間全体にわたってコンテンツの適切なスケジューリングをするには、多くのコンテンツを埋め込まなければならず、そこまでの販促は店舗レベルではなかなかやりきれない。

・電子POP

数が多くなると取り扱いが大変になる。通常ハード・ソフトともいろいろなところからの持ち込みであるため、ネットワーク化して一元的な運用はやりにくい。店舗側では効果があるのかないのか、わからず放置しているところもあるだろう。

・表示器

システム屋さんが作ったものが多いので、コンテンツもWindowsで簡便に作るように考えがちであり、クオリティの高い広告にはなりにくい。HTMLコンテンツを扱えるようになっていると自由度は高まる。

・タッチパネル

複雑な操作は向かないし、コンテンツごとにユーザインタフェースも変わって不統一になりかねない。ここでユーザインタフェースで苦労するくらいなら、いっそQRコードでも表示してスマホにバトンを渡した方が利便性は高いかもしれない。ということで今後は一般化して広がるかどうかは疑わしい。

 

というような現状なので、一つ動画コンテンツを作っておいて、いろんな局面に利用してもらうようなふうにはなかなかいかない状態でもある。