1月23日にデジタルサイネージコンソーシアムの都内ツアーに参加して、丸の内/八重洲/渋谷/新宿における見どころを案内してもらった。前回の投稿でも、昨年からディスプレイのリプレースで新しい設備にも入れ替わって見栄え・迫力が増してきていることを書いたが、ハードウェアの進歩とは対照的にソフト面ではほとんど投資がされていないで、利便性も上がっていない面も見られた。
施設・フロアの案内とかツーリストインフォメーションのようなものは増えてもあまり利用されていないのだが、いろんな面で分かりにくさや、デジタルサイネージ特有のやりにくさというのがある。例えば地図を表示して現在地から目的地まで誘導するような場合に、まるでスマホのアプリのようなものを無造作に大形液晶に表示しているものが多い。
この写真の場合に、サイネージを見ている人の右側には鉄道が通っているのだが、サイネージは南を向いて設置されているので、中に表示される地図は北が上になっているために、現在地の左に鉄道が通っているようになる。だから見る人は、天地逆の位置関係を翻訳しながら地図の中を探したり、道順を考えることになる。
もしスマホならば、自分の体を回転させて、地図の天地と目の前の光景の位置関係を揃えることができるが、デジタルサイネージは回転させることはできない。
ここで利用されている地図は専門の会社から提供されている汎用のものだが、果たして南を上に表示するようなコンテンツの回転機能はあるのだろうか? 親切なことにこのサイネージでは目的地までの順路の表示もされるものの、何しろ目の前の光景とは天地逆の順路が示されるので、本当に役に立つのだろうかと心配になる。普通の人はやっぱりスマホに頼ることになるのではないか。
そもそもなぜこのサイネージが南向きに設置されたのかは想像ができる。北向きに設置すると南からの日照をまともに受けて液晶が非常に見づらくなるからだろう。このことはどこにでも共通する課題である。もし本気で北向きの地図案内をデジタルサイネージで行いたければ、バックライトではなく反射型液晶を開発しなければならない。それは技術的には可能だろうとは思うが、ニーズが少なくては普及はしにくい。Kindleのような電子ペーパーも太陽光のもとで見やすいのだが、地図のようにどの方向にもスクロールする用途には向かない。
また建物内のフロア案内などのデジタルサイネージでも、地図に相当するものは建築図面の平面図のようなものが多く、目的地を表示されてもどっちを向いて何を手掛かりに進めばよいのかわかりづらい。やはりコンテンツが貧弱な感じが否めない。
今日では実際に人々が日常で案内情報として頼りにしているのは、Googleの地図にストリートビューを加えた、3Dに近いもので目的地までの順路をシミュレーションできることであって、そのことと現状のデジタルサイネージの案内図とのギャップが非常に大きく感じられた。だからと言ってわが社で回転できる地図が開発できるわけでもないので、ボヤキに近いものだが、何かサービス開発をするとすると、やはりスマホ連携にならざるを得ないと思う。