軒下のサイネージでも防水を!

サイネージネットワークは設置や設備まわりのお仕事は専門業者のキラカスタムサポート株式会社(URL http://kirasapo.jp/)にお願いして、一緒に打ち合わせに行ってもらったり、お互いに相談して提案をすることを行っている。設置に関しては店の外にデジタルサイネージを置きたいというところが多いので、屋外設置の事についていろいろとお話を伺った。
室内ではパソコンに大型モニターをつないだだけという使い方でサイネージを使っておられるところもある。この写真ではモニターの後ろにパソコン本体とキーボードとマウスとテーブルタップが押し込まれていて、大丈夫かと思ってしまった。当然屋外はこれではダメだが、軒下などの半屋外、またドア横の通路などでも、器具が外れたり線がひっかかったりすると具合悪いだろう。電源線もせめて配線カバー(モール)はつけたいものだ。

さて、本題の屋外設置に関しては、経費的にも大変そうだ。液晶パネルよりも、風雨に耐えられる筐体の方がおおげさだからだ。しかしそれも幾分スマートになってきて、下の写真はDNPの以前の屋外用サイネージと、今都バスなどに使われ始めているものの比較で、新しい方は奥行きが15cmくらいになっている。

防水・防塵の保護等級

筐体が大げさになるのは、国際電気標準会議にて標準化されているエンクロージャによる保護等級(Degrees
of protection provided by enclosures(IP Code)/IEC 60529)にあてはまるものを使わなければならないからだ。これは一般に「IP68」とか表示されるもので、その意味は防塵等級6級、防水等級8級になる。日本では「JIS保護等級」でもあり、JIS C 0920として、防水や防塵の程度について家電品のカタログや説明書などで使われている。

等級の意味は、少し古い表現の方がたとえがわかりやすいので引用すると、次のようになる。

防塵等級(6段階)
0級:特に保護がされていない
1級:直径50mm以上の固形物が中に入らない(握りこぶし程度を想定)
2級:直径12.5mm以上の固形物が中に入らない(指程度を想定)
3級:直径2.5mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
4級:直径1mm以上のワイヤーや固形物が中に入らない
5級:有害な影響が発生するほどの粉塵が中に入らない(防塵形)
6級:粉塵が中に入らない(耐塵形)

防水等級(8段階)
0級:特に保護がされていない
1級:鉛直から落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴I形)
2級:鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防滴II形)
3級:鉛直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない(防雨形)
4級:あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない(防まつ形)
5級:あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない(防噴流形)
6級:あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない(耐水形)
7級:一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水することがない(防浸形)
8級:継続的に水没しても内部に浸水することがない(水中形)

デジタルサイネージでいえば、IP54とかIP55があり、IPに続く「5」は防塵5等で、有害な粉塵が中に入らないことをあらわし、次の「4」とか「5」が防水等級で、「飛沫の影響がない」とか「かけ流しの影響がない」となる。サイネージではIP56はないそうで、前述のDNPのものでもIP55相当としている。

温度管理

このように防塵防水で密閉された筐体では、内部の機器からの発熱やら、直射日光による温度上昇があり、内部温度が数十度以上になるとCPUやLSIが気絶することがある。また冬に外部がマイナス十数度になると液晶が映らない。そこでこういったケース用の小さなエアコンをつけて内部の温度を一定に保つっている。そのために月に1回はエアコンのフィルターを掃除するようなメンテナンスが必要になる。ちょうど自動販売機のメンテと同じでホコリをはたくくらいのことを屋外設置ではしなければならない。

直接日光があたらない半屋外の設置でも、室内利用に比べると明るさが足りなく感じるのは、バックライト光源のLEDが小さいとか数がすくない屋内型を使った場合だ。デスクトップパソコンやノートPCの液晶ディスプレイでは、画面の上下とか左右の辺にあたるところに光源がある。40型のモニターでも室内用の400-600カンデラのものは同様のエッジ型LEDであるが、屋外用の2000カンデラクラスでは直下型という画面の全面にLEDが数百個並んだものが使われて、明るさを出している。これ以上の明るさを求められるとRGBカラーLEDがびっしり敷き詰められた「LEDビジョン」にする必要がある。

屋外用はこのように光源の電力が大きいものになり機器の発熱も多くなるし、生産台数も少ないので割高感が出てしまう。とはいっても10-20万円プラスくらいだろうから、防水やエアコンに比べると大したコストアップ要因ではない。むしろ大量に出ている屋内型にはマルチメディアプレーヤーが内蔵されていたのに、高輝度モデルにはそれがなかったとか、機能面やオプション面での違いがあり、必ずしも室内用の延長で屋外に増設できるわけではないことも注意だ。

 

冒頭の、お店の外にサイネージを出したい要望については、IP55でなくてもIP54の筐体を使った方が良いことが結論だ。

実際には未だこれらの防塵防水のことは意識されずに、屋内用をキャスタ付のスタンドに設置して、開店時に前に出して閉店時にしまうところもあるが、通路に出すには私道・歩道の区別や行動の場合は警察の許可も必要になり、別の課題がある。これについては改めて書きたい。

 

 

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