サイネージの図版  コンテンツシリーズ⑦

街に設置されている多くのデジタルサイネージは通行人に対して何らかのアピールをする目的なので、短時間のうちに人の目を止めなければならない。そのために何かと刺激的なグラフィックスを表示しがちだが、逆効果も考慮しなければならない。スピード感のある映像は、見る人をハッとさせるが、ずっと見入ってもらえるとは限らない。だからそれらは一瞬だけ使って、その後はちゃんと認識できるものを表示するなどの組み合わせを考える。

また必ずしもポスターのような写真の魅力に依存するよりも、モーションをつけるとか、イラスト化するなどの工夫のことも、コンテンツシリーズ⑥ で書いた。

ネットを見ていたら、アメリカンコミックのキャラクターと、それを元にした実写版映画のキャラクターを比較した写真があった。ストーリーをじっくり鑑賞するなら実写の魅力は十分に発揮できるのだろうけれども、一瞬のうちに人の姿を認識するには、イラストの方が手っ取り早いなあと、あらためて思った。

しかし、アナログなドローイングであるコミックをスキャンするとかデジカメで撮ったものは、例えば左上の女性ヒロインの顔を全画面に拡大すると、モザイク状のギザギザになってしまって、デジタルサイネージで縮小拡大移動のモーションを付けるようなわけにはいかない。

これは企業のロゴマークなどでも同じで、スキャンしたものを拡大するような加工をするようなことはせずに、Adobe Illustrator(や以前はFlash)などでベクター化したものを使うのが常識になっている。そうしないと画面が汚くなるからだ。今ならCADやCGからベクターグラフィックスを取りだして使うこともある。縮小拡大時にギザギザが出ないことでシャープさと力強さが出ることがベクターグラフィックスの強みである。

上のようなイラストは、写真や絵をスキャンしたものを下敷きにして、濃度の異なる領域をパスで囲むような作業をし、そこに着色するという、絵の作り直しの作業を経て出来上がっている。これは結構面倒な作業ではあるが、要するにアナログ描画も一旦ベクターグラフィックスにすれば、縮小拡大変形が自由になるので、ロゴやマークや製品写真、キャラクターなどで日常的に使いまわされている。

さらにベクター化した素材はアニメーションにも向いていて、以前主流だったFlashといわれたソフト(今はAdobe Animate 下のYouTube参照)以外でも、簡単なアニメなら多くのグラフィックソフトでも作成できるようになっている。

 

What is Adobe Animate CC (October 2017) Adobe Creative Cloud

 

こんな凝ったアニメはデジタルサイネージでは使わないにしても、一瞬スピード感のあるキャッチーな映像を出したければ、ベクター化したグラフィックスにモーションを付けるのが適している。縮小拡大や速度や尺をいろいろ変えてみることが自由にできるからだ。

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