トップ

2019.2.8

ビジネスにサイネージを組み込む

年度末になると会計処理の理由から利益を出しすぎるよりも何かに投資をしようということで、デジタルサイネージをまとめて発注するような会社も過去にはあった。その後どのように使っているのだろうかと思っていたら、倉庫に眠ったままであることもよくある。

また最初は予算がとれて、気の利いた見栄えのするコンテンツを作ってもらっても、その後同等の予算がとれなくなって、紙のポスターとあまり変わらない使い方になる場合もある。社内で新コンテンツを作って更新するはずだったのに、グラフィックソフトを使える人が移動になってしまって、後任がいないところもある。

 

どうも日常のビジネスの一環として社内でサイネージの更新に取り組むことは難しいようだ。そこでメーカーはサイネージのテンプレートやグラフィック素材、またカンタン制作アプリなどをハードウェアのおまけとして売っているのだが、それだけではまだ何かが足りない。

実は写真やショート動画を売場とかそれに近い人が現場で撮って、若干の加工をすることくらいは難しくない。カンタン制作アプリも同様である。難しいのは媒体設計なのである。下のようなチラシは分解すれば商品名と写真と若干の説明コピーと値段で成り立っているので、それくらいは現場でもできそうだが、それをどのようにレイアウトするのか、優先順位をつけて必要ものを一定の紙面にぴったり収めるというところに経験とかノウハウがものをいい、そのデザインをしてもらうと10万20万という費用がかかるだろう。

レイアウトの前提として、見る人の視線の移動や、文字の大きさ太さの使い分け、などの知識が必要になる。その部分だけでもなんとかテンプレート化して、チラシレイアウトの迅速化を図りたいという取り組みは昔からあった。

 

今のWebやモバイルのショッピングでは、原稿をデータベース化して自動でレイアウト処理させることで、前述の現場の人が情報発信を自分でできるようにしている。これが可能なのは、画面の解像度がまだ紙に比べて粗くてレイアウトの制約がいっぱいあるからで、もし4k8kになるとチラシそのものを表示できるようになって、レイアウトの自由度が高くなるから、自動レイアウトできない表現も増えるかもしれない。

今のデジタルサイネージというのは、このちょうど中間に位置するようなツールで、データベースよりはクラフト的なものが求められている。だから完全に自動でレイアウトするのではなく、緩くテンプレート化したやり方の方が向いていると思う。

つまり、印刷やWEBでテンプレート化した平面レイアウトをしているようなことを、動画の時間軸に素材を並べることにも適用させていけば、映像やコピーの部分変更などはやりやすくなる。こういったテンプレートを作るノウハウはチラシのデザインと似ていて、最初にかなり設計なり試作なりに手間ヒマをかけなければならず、コンテンツの一発制作よりも回りくどいことになるから、若干費用はかかってしまう。しかしできてしまうと、更新コストはおそらく10分の1になる。

これなら現場でも対応できるかもしれないし、外注・アウトソーシングしても大した値段にはならない。この方法がお得になるのは、前述の前提では一つのテンプレートが10回以上は使いまわされる時であるので、毎月更新するものには1年に1テンプレートを作るとか、毎週更新するなら季節ごとにテンプレートを変えるなどのルーチン化を想定するのがよいだろう。

この方法のメリットは制作代を抑えることにもなるものの、情報発信をビジネスにリンクさせやすく、何よりも更新の機動性が高められるところにある。