サイネージのニーズ変化を考える

タイムセールとは和製英語で、time sale と表記しても欧米人には伝わらないらしいが、毎日スーパーなどでは行われている販促である。正確に表現しようとすると時限セールということだろうか。どこか地域を指定すると、いつどこでどんなタイムセールをしているのかを調べるアプリが出るほどに盛んである。店舗だけでなくECでも行われている。

ECの場合は公開時間をあらかじめスケジューリングしておくだけのことだから準備は楽だろうが、スーパーのようなところだと、在庫のはけ方によって、また当日の天候などによって、時限セールに出すものや、売り方の調整を日ごとにしなければならない。扱うitemについては予定があって、POPなども事前にある程度は用意はできるのだろうが、デジタルサイネージにすると『あと何個!』というカウントダウンに近い表示まで可能かもしれないことを以前に書いた。

 

つまり競合店と時限セールの競争が起こった時に、デジタルサイネージのようなダイナミックな表現手法を持っているところが優位に立つかもしれない。たいていのオンライン型とかクラウド型サイネージはスケジューリング機能をもってはいるが、コンテンツを作ってアップロードするところとかはシステムにはなっていない場合が多い。もし時限セールの競争が起こりだしたら、ここをなんとかしたいという要望がいろいろでてきそうだ。

単純なところではスマホで撮影して即サイネージにアップしたいとか、それも売り場の動画をサイネージの画面に埋め込みたいとか、既存のCMSでは不可能なものが考えられる。今のところ例外的画面はHTMLで作って、フルHDのブラウザで表示するとすると、ほぼ何でもできる。それがCMS・配信システムに取り込んでサイネージコンテンツの一部として表示できないにしても、HMDI切替機などを使って、ソース映像の切り替えをしてしまえば手動/半手動でできる。

しかしこんなサイネージの実験をしてくれる業者がどこにいるのだろうか? この1年の間にサイネージネットワークにかなりあった問い合わせは、『コンテンツはあるのだが、更新作業をやってもらえないか』というものだった。だがコンテンツ制作については料金の目安もある程度一覧化できるものの、更新作業のような運営面については今のところ料金の尺度はない。昔から取引をしているお客さんであれば、実際に作業にかかった工数を理解してもらえて、料金の提示もできるのだが、ネットやメールのやり取りだけでは費用面の交渉が行いにくい。そこでコンテンツの加工も含めてどのくらいの程度と頻度があるなら、月間いくらという丸めた運用代行のサービスを考えていた。

 

おそらく運用代行が軌道に乗ったならば、その運用をさらに効率化とか迅速化するために、次なるシステム的な運用提案をすることになって、そこで前述のような今までにない実験も可能になるのではないかと思う。この場合は運用を請け負う側が、クライアントの仕事の性質をすでに知っているので、必要な品質・タイミングを実現できるだろう。もし過去に取引がなかったならば、クライアントのお仕事に対するヒヤリングから始めなければならない。もしろん今でも求められればそのようにできるのだが、更新作業の代行を問い合わせて来られる方は、そこまで大げさには考えておられないと思える。

 

デジタルサイネージの普及とともに、表示内容も表示方法も運用も多様化してきて、メーカーのソリューションの押し売りでは対応できない局面が増えていく。サイネージネットワークとしては、料金が幾らなら引き受ける/引き受けない、という杓子定規なビジネスではなく、クライアントとともに試行しながら、クライアントの独自性の発揮できる運用方法を開発していきたいと思う。

コンテンツ制作のディレクション

デジタルサイネージのコンテンツは販促ビデオの流用であったり、ポスター・掲示物の借用など、制作のコストも考えてなければ、何の企画も思いつかないままの、無目的といってもよいような場合もあり、効果もないわけだから、そのうち当事者も飽きてサイネージ自体をやめてしまうようなことも過去にはあった。
逆に何らかのインパクトを与えるメディアとしてデジタルサイネージを位置づけるならば、目的に沿ったディレクションをすることは必須であるが、尺の短いサイネージを短期間に更新し続けるとなると、ビデオ映像を作るような専門家に頼んで手間や費用かけて制作することはできない。

 

デジタルサイネージのクライアントの方も、よくて印刷物の発注経験があるかどうかだろうから、コンテンツ制作のディレクションは不案内だろう。ビデオのように映像専門家を間に挟む場合は、クライアントも制作現場もディレクターの意見を聞いていればよいわけだからまとまりやすいが、そんな人が居ないとなるとクライアントと制作現場が相談しあって進めることになる。以前の記事『動き方を指す用語』はそんな中で使ったものであった。制作側の営業マンがディレクターの代役をする場合もあるが、今後のデジタルサイネージの活用を考えると、クライアント側もディレクションに関する能力を高めた方がよいだろう。

 

とはいって格段にハードルが高いわけではなく、ディレクションの要素は映像制作以外でも参考になるものはいろいろある。新たなサイネージのコンテンツを作るプロセスは、ビジュアル素材を作る/用意することとは別に、①あらすじ(プロット)を考える → ②絵コンテを作る ことが必要になる。この両者は相互に関係しているので、尺が短いサイネージでは進行とビジュアルを同時に考えてしまうことが多いだろうが、勉強するという点では分けておいた方がよい。

 

一般の人にわかりやすい教材としては、漫画の描き方がよいのではないかと思う。Webの『まんが家養成講座』を見ると、次のような項目がある。

まんが家養成講座
ストーリーはどうやって作るのか?(1)
http://shincomi.webshogakukan.com/school/2007/01/1_7.html

絵コンテ(ネーム)を描く
http://shincomi.webshogakukan.com/school/2007/07/post_5.html

これに限らず同様の教材は多くあるようだ。①のあらすじは起承転結のようなものを考えればよい。②の絵コンテは、映像にかぶせる文字や図形の大きさ・位置関係・速度なども横に注釈として書いておくようにすれば用が足りる。

これは前述サイトの漫画の絵コンテなので右ページから左ページに流れるが、デジタルサイネージの場合は同じサイズの画面が並んでいる用紙を作っておいて、シーンチェンジのところを描いていく。絵を描くのが難しいと思われるかもしれないが、若い人では授業中でもノートの端にキャラクターを描いた経験のある人は多いように、意外にできるものである。

 

制作に際しては、このシーンチェンジのところは丁寧に作らなければならない。以前CG映画を作るプロセスを聞いたのだが、重要なシーンはあらかじめphotoshopで静止画としてポスターのように丁寧に作りこんでおいて、そのイメージをターゲットにCGパーツや組み合わせ表現の作業が分業で行われるというものだった。つまりサイネージでも絵コンテのラフスケッチをベースに、制作側が重要シーンをしっかり作ってから、その前後を処理していくのが、迷走しないためのよい方法かなと思ったものだった。

動き方を指す用語

デジタルサイネージに動画を貼っているだけの場合はよいが、実際には静止画を使って動きのデザインをすることが多い。その場合の動かし方の表現は、やはり映画のカメラの操作から来ている用語を使うことが一般的なようだ。つまり静止画を動かす作業をする人は、映像のカメラマンになったつもりで仕事をすると、より動画らしくなるともいえる。

以前に用語説明に使った資料があったので、貼っておきます。クライアントと制作現場と営業との間で、プリントや印刷物をベースにして、動きが速いのか遅いのかを含めて、指示の書き方も大まかには決めておいた方がよいでしょう。

 

フェイドイン・アウト

不透明度を、0%から100%に、またその逆

 

チルトアップ・ダウン

カメラのレンズを上下させるイメージ

 

ズームイン・アウト

 

 

フレームイン・アウト (画面への出入り)

 

パン (視線の移動)

風景をパノラマのように見せる場合もある

 

ワイプ

画像が入れ替わる。

STBって、何ですか?

ネットで動画が頻繁にみられている現代において、デジタルサイネージの用語として出てくるSTBに違和感を覚える人もいる。なぜそのようなものが必要なのか? スマホなどが発達していなかった時代には魔法の機械のように思われ、何十万円したかもしれないが、今ではSTBのない(あるいは見当たらない)クラウド型サイネージもあり、STBの存在感は薄れているようにも思う。

 

そもそもSTBとはSet Top Boxの略で、CATVや衛星放送を見るのにテレビにつけるアダプターを指していた。文字通りテレビの上に置く箱であった。その後にテレビもアナログからデジタルに移行して、しかもインターネットにもつながるような時代になり、CATVのSTBの内部はコンピュータが制御するものとなった。

一方、デジタルサイネージはUSBやSDカードを使うオフライン利用から始まったが、動画の再生をするメディアプレーヤーが必要であって、Windowsパソコンを組み込んだり、また専用のハードウェアーとしてメディアプレーヤーが作られていった。

デジタルサイネージがネット利用になると、インターネット通信の機能とメディアプレーヤーの機能を持ち合わせたものとして、デジタルサイネージ専用のSTBが登場した。これは最初は何十万円していたものが、今では一般には数万円になっている。テレビのSTBとの違いは、テレビが通信しながら映像を出すストリーミングであるのに対して、サイネージの場合は映像ファイルをダウンロードして、メモリにある映像を繰り返し表示している点であろう。

サイネージ専用という場合、コンテンツの作成や組み合わせ(Playlist)と配信スケジューリングの機能を持たせていて、そのために制作・配信アプリ、再生アプリにそれぞれの特徴が出ている。例えば映像をテンプレートと素材に分けたままにして、再生アプリがそれらを組立てて映し出すようにすると、内容更新が楽だし、通信の負担も少なくなる。また制作。配信のアプリをどこかのパソコンにダウンロード・インストールして使うか、クラウド型にしてログインできればどこからでも作業できるようにするか、という違いもある。最近ではマルチ画面のコントロールをどうするか、タッチパネルでの制御をどうするか、というのもSTBの機能と関係していて、今は実に雑多なやり方が混在しているといえる。

 

サイネージのコンテンツは基本的には動画作成に過ぎないのだが、利用面の多様さを考えると、アプリが作りやすい方が進歩する。そうするとSTB機能はパソコンにやらせた方が柔軟に対応できるので、小型パソコンをSTBと称して使う場合も多い。そのサイズはだんだん小さくなっていき、10cm角強になるとか、大型液晶パネルの背面にスロットインできるなどで、あまり目につかない。

パソコンSTBはOSに関してWindows10(IoT)を使う場合と、Androidを使う場合がある。映像を再生する機能というのはメディアプレイヤーというアプリを使うにしても、音や動画のデコードはOS寄りの仕事なので、OSのよって若干仕様が異なる面がある。それが嫌なら独自にデコーダーも含んだ再生アプリを使うことになる。これはパソコンによるDVD再生アプリがいろいろあるのとほぼ同じ状況だ。

 

パソコンはどんどん小さくなって、デジタルサイネージにもスティックPCをSTBに使う場合がある。これもWindows10とAndroidがあって、Androidの方が安いのだが、両者ともサイネージ専用STBと比べて値段はちょっとしか下がらない。しかもスティックPCの中には無理に小型に詰め込んだがために、熱に弱くて死んでしまいがちのものもある。

スティックPCほど小さくなると凄い技術じゃないかと思う人もいるかもしれないが、実はスマホのCPUやGPUと同等の技術でできていて、何千円(の低い方)の部品の流用であるので、これが技術の先端ではない。

むしろスマホやタブレットでフルHD動画の再生ができるのならば、タブレットにSTBに必要な機能をアプリとして持たせてしまえば、どこでもデジタルサイネージになるのではないか、という発想のベンダーも出てくる。

ソフトバンクのQuickSignageはタブレットをSTB/メディアプレーヤーとしても使えるもので、インターネットまわりの設定を何もしなくてもクラウド型のサイネージなる。ただし、メディアプレーヤーはあくまでタブレットに備わっているものなので、タブレットで再生できない動画や音は出ないから、オーサリングの段階で仕様を合わせておく配慮が必要になる。でも現実的にはタブレットで見れない動画というのはマルチ画面くらいしかないのではなないだろうか?

 

サイネージの年間計画化

ホームページ経由で見積もり依頼をいただく場合というのは、依頼先の事情としていつまでに何をしなければならないという逼迫したものがあって、どんな素材があって、どんな尺で、など外見上の仕様に合わせて提出する場合が多い。その値段が相場の範囲なら、具体的に営業がお会いして打ち合わせをすることになる。ある意味では、依頼先からすると、とんでもない見積もりが出ないことを確認するために、一般的な仕様でいくらになりそうか聞いているのだろうと思う。

今日では、『動画制作 3万円から・・』のような広告は山ほどあり、またそういう仕事をしているところからの売り込みもよくある。しかし実際に新規に動画を作るとなると、何度も打ち合わせのやりとりが起こって、むしろ制作作業時間よりもそちらの方が長くなるもので、単純に何万円でどの程度ができるとは言い難い。おそらく『3万円から』のような場合はすでにテンプレートがあって、ネームや写真を差し替えるとか、トリミングやマージやフォーマット変換程度の編集なのかなと考えてしまう。

 

ちょうど昔からあったチラシの図案集のようなものが、パソコンの場合にPOP制作になり、それが画面用に電子POP化した世界として、10年前くらいにデジタルサイネージの黎明期があったように思う。デジタルサイネージを導入すると何百という販促デザイン素材がついてくるというのもあった。しかしそういうのは紙のポスターや印刷物に戻っていったものもある。つまり『3万円』でも『2万円』でもデザインを安くしていきたければ、やりようがあるものの、本当に顧客が求めているのは、ただ安くすることではないはずだ。

デジタルサイネージの営業が依頼先にお会いすれば、依頼先のビジネスがどういうものであるのかが分かってくる。必要なものがスライドショーに毛が生えただけのようなものなら『3万円』もかからないだろう。撮影からやりなおした方がよい場合もある。いずれにせよどんな目的で使うのかが見えてくれば、価格的に適正な提案というのは可能になるが、突然のホームページからの依頼では客先のビジネスがみえないので、単純見積り以上の提案は行いにくい。

例えば、今必要なものはスポットで制作するとしても、それと似たものが年に何回かあるとか、来年もほぼ同様なものが必要になるのならば、かなりテンプレート化・規格化した設計にしておいて、後から文字や写真の差し替えを簡単にできるように作った方がよい。今スポット制作費用ではそのような段取りはできないとしても、需要が見込めるならば無理してでも最初に作ってしまうことはある。当然価格はスポットのものであっても、リピートがあったら割が合うようにはできる。

 

印刷物発注の場合は、長年どこかの印刷会社と付き合っていて、過去の制作物が印刷会社には保管してあって、毎年それを更新するようなやり方が多いが、デジタルコンテンツの場合はそのような習慣はあまりない。こういう習慣があると、自然にPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)の管理サイクルを回すことになって、徐々に改善していくマネージ型になりやすいと思う。過去10年のデジタルサイネージが息切れしていったのは、PDCAを回すようなやり方にできなかったからだろうと反省している。

小売業では各業種ごとに販促カレンダーをお持ちであるので、それらと連動して、販促の一環としてデジタルサイネージの計画もするようになっていれば、限られた年間予算枠をもっとも生かしたコンテンツ制作ができるだろう。費用の掛かるクリエイティブな部分はその都度制作するのではなく年間単位で使いまわして、年内の各イベントはいくつかのテンプレートに分類して各回の制作費をおさえ、さらにタイムセールなどは現場で写真を撮って載せることで出費をなくし、しかも週単位で新鮮な情報が提供できるように、トータルな提案がさせてもらえればお互いにハッピーなのだが。

 

 

 

 

サイネージの立ち位置

サイネージネットワークは、印刷物制作の前工程として文字や画像の処理をしていた業者が集まってスタートしてもので、今でも印刷するための情報加工を多く行っているが、印刷と同時にデジタルメディアをも作りたいという要望は2000年以降強くなってきた。その典型は電子書籍で、漫画本の印刷と同時にeBookも作成されている。しかし意外に広告宣伝印刷物はデジタルへの転用が進んでいない。ポスターを作るならデジタルサイネージのデータも同時に求められるのではないかと思ったが、まだそこまで行っていない。

一方印刷物の市場は縮小を続け、最近は折込チラシがかなり減っているように思えるが、統計的には昨年に比べて5%くらいのダウンである。チラシは10年で3割以上減ってしまっている。これは新聞をとらない世帯が増えたことにもよるが、だからといって代替のメディアがそれほど活躍しているようにも思えない。有名なのはスーパーなどのチラシを電子配信しているシュフーであり、ネット上のサービスもいろいろ増やしている。しかしチラシという情報がぎっちり詰め込まれたメディアをパソコンの画面で見るとか、さらに小さいスマホで見るのは無理強いの感があり、もっと使いやすい何かを開発せざるを得なくなる。

現在のところ宅配してくれるネットスーパーというのがモバイルとの親和性のよいサービスなので、シュフーのような電子チラシもゴールをネットスーパーに結びつけるようなことをしている。しかし本来ならば電子チラシからも店舗への誘導をしたかったはずである。

ドンキホーテなどはネット上のWebチラシでクーポンによる値引き広告を打っている。クーポンを使うにはスマホで登録をしてもらって、客は店頭にあるクーポンの発券機を使って自分でクーポンを印刷し、モノと一緒にレジに持っていくことで割引になるような使い方である。この場合は来客増の効果は期待できるし、クーポン発券機のまわりにデジタルサイネージも設置されている。クーポン対象品はあくまで目玉商品であって、それほど点数が多くはないことも、スムースに仕組みが回ることに貢献していると思う。

 

そのほか2000年ころからチラシとネットと組み合わせたいろんな販促が試みられ、サイネージでも目玉商品やタイムセールの案内をしてきたが、なかなか効果があって定着したものは多くはないだろう。その理由はやはり過去からの印刷物による販促を土台にしていたために、デジタルサイネージといえども、紙の2番煎じから抜け出しにくかったからではないか。今ではむしろモバイルマーケティングを土台にして、店舗と連動する方向で考えた方がよいだろう。

昨年シュフーはCookpadと相互の広告や店舗の電子popとの連携をしたモデルを出していたが、これを進めていくと次第に紙のチラシから離れていくだろう。なぜならチラシに載っているアイテムのうちCookpadに関したものしか扱えないからだ。きっと食材以外とかホームセンターとかも何らかの方法でモバイルマーケティング化することになるだろうが、それは新しいモデルを編み出す力がいるだろう。

統計に内訳が現れるマスメディア広告やネット広告は広告全体の半分に過ぎず、チラシやPOPやポスターやデジタルサイネージは実態がわかりにくい。いいかえると広告として独立しているのではなく、クライアントのビジネスのやり方に即していろんな姿をとるものである。ビジネスのやり方が変わったら連動して広告や販促のやり方も変えていかなければならない。そのために大手の広告会社が手を出しにくい領域にもなっているが、クライアントの現場と密着してビジネス仕しようとする会社にはやりがいのある分野だろう。

 

 

オウンドメディアとして素顔を見せる

ちょっと考えればわかることだが、デジタルサイネージを置いただけで何らかの効果があるわけがない。まだチラシやDMなら、1000に一つでも反応がでるかもしれないのだが、デジタルサイネージはお店ならエクステリア・インテリアの一部にしか過ぎない。だから店舗設計なり販促キャンペーンなりの考えに基づいて、その中の一部の役割を果たすものとしてサイネージはあるといえる。例えば最新のサイネージが置かれていても、店がボロボロだとか、品ぞろえがイケてない、接客の態度が悪いなどなら、効果は出るとは考えられない。

これとは逆に、外の通行人からは分からない良さが店の中にあるのなら、それを表現する方法としてサイネージは使える可能性がある。いいかえると、どんな点で自慢したいことがあるのだろうか、というのを煮詰めてデジタルサイネージのコンテンツを考えればよい。よくこだわりのラーメン屋が客のいない時間帯に手間暇をかけて豚骨スープをつくっているようなテレビの紹介番組があるが、そういったコンテンツを自分でつくることは可能だろう。別にテレビの真似をするのがよいのではなく、今すぐできることから始めて、徐々に良いコンテンツに改善していくつもりなら、あまり費用をかけないでもサイネージのコンテンツはできる。

 

ビデオを撮るのが苦手ならば、イメージ写真の組み合わせでもよい。商品ならば、購入後の使い方とか、料理なら素材から調理の様子から盛り付けるまでの間の何カットかの写真があればスライドショーのようなものはできる。それにちょっと気の利いたコピーを工夫してかぶせければよい。その過程では家族や出入業者や制作会社に相談するなり意見を聞くなりする必要はある。そのような簡単な画像・映像の表現はYouTubeで検索すれば、たいていどんなジャンルでも見つけることはできる。要するに現在人々がYouTubeで見ているような手づくりコンテンツのようなもので、自分たちしか出来ないようなものを目指すのが良い。店主の想いが伝わるようにするには、まず店内の様子を伝え、店主の顔が良く見えるようにすることを心がけるべきだろう。

よく店の前の路面に看板スタンドがあって、店名・ロゴなどのほかに、写真やカラーコピーが貼り付けてあるが、デジタルサイネージはその延長でアピールする点を増やしていける。看板スタンドの面積は限りがあって小さな写真しか貼れないとしても、サイネージなら時間軸に並べていくので、多彩な表現ができる。大企業なら接客のイメージを向上させるために、きれいなモデルさんをつかって、お客さんに微笑んでいるような映像をとるだろうが、そのようなものが必要なわけではない。接客に自信があるなら実際の店員さんが素顔で働いている様子を映せば、それでも過去に店に入ったことがあるひとが、また店のことを思い出してもらうには十分だろう。他のメディアに比べて見てもらえる人が限られているデジタルサイネージではあるが、逆手にとってリピート客を増やす策に使えるのではないかと思う。

また、コンテンツを作り慣れたならば、タイムセール・特売などのアピールにはデジタルサイネージは向いている。この場合、実際の在庫の変動に合わせて、サイネージの方も値段の上下調整とか販売打切りができるようにしておく。

例えば『完売!ありがとうございました』というような画像もあらかじめ用意しておいて、臨場感を出すことができるだろう。こういう経験を経て販促キャンペーンを考える際にデジタルサイネージの出番が作られていくことになるはずだ。

 

 

動画のフォーマットは変換がたいへん

前回の『サイネージを身近なものとして使いこなす』では、Windowsフォトストーリーで作ったWMVビデオファイルが、mp4などに変換するのに苦労するということを書いた。一般に動画ファイルを授受する場合には、movだ、flvだ、mpgだ、ということで話しがわかったような気がするのだが、それが動画編集の鉄壁であるAdobePremiereでも開かないことがある。うちあわせをする相手が動画フォーマットのことを良くわからずに話している時は多いので、受け取った側で詳しい人がツールでフォーマットの解析をして、使える・使えないの判断をしなければならない。

それほど動画フォーマットが分かりにくいのは、ファイルが何重かの構造になっているからで、mp4だ、flvだ、mpgだ、wmvだというのは動画を運ぶための入れ物を指すに過ぎず、その中に音声と映像の情報が入っていて、これは下の表のように入れ物が異なっても同じ規格であるとか、逆に入れ物が同じでも異なる規格である場合がある。

この音声と映像の記録・再生のものをコーデックといい、ファイルを受け取った方に該当するコーデックが存在しないと再生ができない。Windowsフォトストーリーのwmvの場合は、音声の規格がWindowsMediaPlayerでしか再生できない独自なもののために、『開けない』とか『変換できない』ことになる。それでWindows系のソフトでこれを扱えるアプリを探して、独自の音声の部分を入れ替えれば変換できるようになる。

 
拡張子 よみ 音声 映像
MP4 .mp4/.m4a エムピーフォー AAC/MP3/Vorbis H.264/MPEG-4/Xvid
MOV .mov/.qt エムオーブイ AAC/MP3/LPCM H.264/MPEG-4/MJEG
MPEG .mpeg .mpg .vob エムペグ AAC/MP3/LPCM MPEG-2/MPEG-4/MPEG-1
AVI .avi エーブイアイ AAC/MP3/LPCM H.264/MPEG-4/Xvid
AFS .asf .wmv エーエスエフ MP3/AAC/FLAC H.264/MPEG-4/Xvid
WMV .wmv .asf ダブリューエムブイ WMA/MP3/AAC WMV9
WEBM .webm ウェブエム Vorbis/Opus VP8/VP9
FLV .flv エフエルブイ MP3/AAC/ADPCM H.263/H.264/VP6
MKV .mkv エムケーブイ MP3/Vorvis/LPCM H.264/MPEG-4/Xvid

ちなみに、Windows環境で短い動画加工の場合はaviファイルを使うことが多い。Macならmovが主流である。両者はフリーの加工ソフトも対応している。これらは低い圧縮率で使われる。逆に最終商品に使われるものは高圧縮率のmp4、wmv、flvなどになる。高圧縮のファイルから取り出した映像はどうしても品質が落ちるので、できれば編集途中のavi、movから加工することが望ましい。

 

他のフォーマットでは、MPEGはDVDに使われ、FLVはストリーミングに使われることが多かったが、今ではストリーミングもmp4が多くなった。

コーデックではデジタル放送にも使われているH264が主流になっていて、いろんなフォーマットでも使われている。名前も別名がいろいろあり、MPEG-4/AVCというのもコレである。

これから広まるかもしれないのが、Windows10から対応しているMKVで、従来のフォーマットに対するいくつかの改善がされている。またGoogleのChromeブラウザ向けのものがWEBMといい、パソコンやモバイル機器にインストールしてあるコーデックとはちがって、プラットフォームの如何を問わずに再生できるので、ネット対応としては伸びていくかもしれない。

 

現在ビデオ編集のプログラムでは読めないフォーマットでも、ネット上にはフォーマット変換のフリーソフトもいっぱいあるので、いろいろやってみることで解決することも多い。しかしある程度知識が無いとうまくいかないかもしれないし、だいたい数秒のクリップが必要なのに何十分のビデオを変換する手間もバカバカしい気がすることがある。そこで奥の手としては、一度画面に再生させておいて、HDMIの信号から必要部分だけをデジタルキャプチャーして使うという方法である。よくPSや任天堂のゲームをやっている様子をビデオ化しているのがあるが、アレである。これについては改めて別にとりあげたい。

サイネージを身近なものとして使いこなす

大型商業施設にあるデジタルサイネージはテレビのコマーシャルのような動画を流していて、おそらく他の映像広告の流用ではないかと思う。こういったきれいなモデルさんやプロのカメラマンに依頼しなければできない映像は、店舗の日常活動の範囲でできるものではない。しかし環境映像ぽいものや、静止画・写真をゆっくり動かしている動画は、お店の予算の範囲で出来る可能性があるし、もし写真に興味のある店長やスタッフが居れば、たまには自分でやってみることもできる。

WindowsXPの時代に、絵本の読み聞かせをパソコンのプロジェクタで行うために、絵本をスキャンして、各ページの中をスクロール(パン)・ズームして、スライドショーのように展開するものを、Windows Photo Story というMicrosoftのフリーソフトで作ったことがある。
これは大変便利なソフトで、覚えやすいし、仕上がりもなかなかのものだったが、WindowsがXPから7,8へと変わっていく中で使えなくなっていた。ところがWindows10になって、このPhoto Story 3というのがまた使えるようになっているという。どこかのだれかがYouTubeにアップしているものを参考としてあげておく。

 

名前は「Microsoft Windows フォト ストーリー 3」になっているようで、Windowsユーザーであればここでダウンロードできる。写真をスライドショーにしてテロップ(キャプション)やBGM(ナレーション)をいれる一通りの機能は揃っているが、写真のレタッチはPhotoshopなどの専用ソフトの方がやりやすいだろう。むしろ完成された写真をベースに、スライドショーの展開を作りだすのが得意なソフトだ。

Windows用のフリーソフトということで、Windows Media Player で再現することを前提に、最後はWMVというビデオフォーマットで動画ファイル保存をする。そのために他のところで使うにはmp4などにフォーマット変換をしなければならないが、ここで作られるWMVは特殊なもので、一般にはmp4には変換できない。そのために一旦ウィンドウズムービーメーカーなどでBGMの入れ直しをしたWMVにしてからmp4への変換をすることになる。要するにこういったWindows世界に相当首を突っ込まないと使いまわしのできる動画にならない点がフォト ストーリーの普及を妨げていると考えられる。

 

また当然ながらAdobePremiereのような凝ったことはできず、単にJPEG、ビットマップ、GIFなどの静止画しか扱えないが、その点が簡便さをもたらす大きなメリットでもある。基本機能はスライドショーであり、個々の写真に文字を好きなフォントで入れられて、ナレーションや効果音を録音することもできる。

「パン」や「ズーム」は[アニメーションのカスタマイズ]という機能でPhotoshop のアニメーションと同じように最初と最後の位置を指定して設定する。

トランジションに相当するのは[切り替え効果]で、写真と写真の切り替えの「フェード」や「スライド」「ページカール」などの約50種類のトランジションが用意されている。

保存は他の動画編集ソフトと同じ様に、[プロジェクトの保存]と、Windows Media ビデオ ファイル(WMV) の書き出しとがある。ビデオファイルでは修正はできないが、プロジェクトファイルがあることで、後々写真を文字の変更が容易になる。

全体として素人が作ったようなフリーウェアよりはずっと安定感のあるソフトに仕上がっている。

 

文字や図形をアニメーション化するにはPowerPointが使われているが、こちらはPowerPoint2013頃からは標準でmp4出力、オプションでwmv出力になっている。

ただしPowerPointのアニメーションとは、文字や図形要素に何らかの動きを付加するだけのものなので、Adobe Flashやその後続のAdobe Animateと比べられるようなものではない。だから頑張って使いこなそうなどと思わずに、単に文字やグラフを動かすくらいに考えておいた方がいいだろう。

これら、単なる静止画からちょっと動かす程度のツールはいろいろあるので、現場でビジネスに合わせて内容更新の対応が必要な部分は、社内の誰かが出来るようになっていれば、サイネージはうんと身近な表現ツールになる。

 

 

 

売る工夫がやりやすいデジタルサイネージ

印刷物の場合は、こう企画・デザイン・制作をするとか、販促ビデオならこう企画・デザイン・制作をする、というような定番の作り方は、まだデジタルサイネージにはない。デジタルサイネージの専門制作業者というのは稀であり、ポスターを画面に表示している場合もあれば、販促ビデオを流している場合もある。それでいいのだろうかという疑問がいつもある。

頑張ってオリジナルな表現を考えてお客さんに提示しても、だいたいはピンと来ないものとなってしまう。そんなもの今まで見たことが無いのに、良し悪しを判断できるわけがない。大手広告代理店で高名なクリエータがーが提示したならば、大先生の言うことだから任せてみようと思うお客さんも居るだろうが、名前を聞いたことが無い会社が提案するものにはなかなかOKは出ない。そこで結局は無難な線として、デジタルサイネージの導入はポスターや販促ビデオのようなものから始めざるをえなくなる。

しかしそこに留まっていては未来はない。数年前から取り組まれたデジタルサイネージで撤去されてしまった例は、特段サイネージ化しなくても、従来の掲示物で済んでしまうと考えられるからだ。机上のシミュレーションとしては印刷物や他の販促物の費用と、サイネージの費用を比較して、経済メリットを訴求することがあるが、サイネージにした効果を数値化できないと、従来のアナログな販促の手ごたえの方が安心できるという逆戻りになってしまう。

 

つまり最初はポスターや販促ビデオでデジタルサイネージを始めるとしても、その先のステップに進めるように考えておくことも大事だ。先のステップというと、どこかでお試しをして評価をしてもらって、台数を増やすとか他店舗への面的展開のことを思い浮かべるだろうが、それは結果であって、まずどういう評価があるのかを予測できるだろうか?

目標としたいのは、商機にタイミングよく表示出来たとか、取り扱いの簡便さ、という評価だろう。商品が売れる売れないはデジタルサイネージのせいではなく、売る工夫がやりやすいことがデジタルサイネージの評価にならなければならないということだ。つまり、どのタイミングでどんなアピールをするのか、例えばクロスセルとかアップセルのシナリオができているなら、そのシナリオの検証にデジタルサイネージが使えるわけだからだ。

現場でただでさえ手が足りないなかで、クロスセルとかアップセルの仕込みをデジタルサイネージにしなければならないことが大きなハードルになるので、コンテンツの差し替えやスケジューリングといった面の取り扱いの簡便さがデジタルサイネージに求められることになる。この2点の評価が得られればデジタルサイネージは有用であるといえる。

 

そしてその先には、いわゆる差別化というかオリジナリティのあるコンテンツや使い方に進むことを考えておいた方が良い。これは紙の販促物でも共通で、身の丈を越えたきれいな印刷物を作ってしまうと現実から遊離してしまって、来た人にガッカシ感を味わせてしまうことと似ていて、デザインを凝ることよりは、店の特徴をあらわすとか経営姿勢をあらわせるように考えていく。言い方を変えるとオウンドメディアとして発達させられるのがデジタルサイネージのよいところなのだ。

[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.26に日間賀島という離島の飲食店のオーナーが自分でスマホアプリを使って手作り感が満載のコンテンツでデジタルサイネージをしていることのレポートがあった。この内容は都会の商業施設にはふさわしくないだろうが、slow life, slow food にはぴったりくる。

別にSlow business に限らずに、身の丈にあった表現ができることは、売る工夫を試行錯誤する中で、何か思いついたその時にアクションをとれる手段であることに意味がある。デジタルサイネージは、店内装飾の延長のように現場で売る工夫をするためのメディアとして定着する事になるのではないだろうか。

 

デジタルサイネージは相談相手が少ない

デジタルサイネージを売っているところには、最新技術を使ったソリューションパッケージを強みとしているところがいろいろあるが、サイネージネットワークはどんな技術が使われても必要になる表現力の方でお手伝いすることをウリにしている。
とはいっても技術が関係ないわけでもなく、お客様の要望をお聞きして、このような技術や機材の組み合わせが合理的ですよ、という提案もしているので、ハード・ソフトおよびシステム・コンテンツのトータル提供とかトータルプロデュースというスタンスでビジネスをしている。

 

しかし『トータルに見積りします』では成約し難い面も多い。特に初期導入のお客さんは、予算面でハードの比重が高いので、見積もり合わせの場合にハードがちょっとでも高めになってしまうと、システムやコンテンツの比較が霞んでしまいがちだからだ。『内容はいいけど、金額が…』という場合のほとんどは、ハードで負けている。

本当は望ましいのは、ハード・システム・コンテンツについて、それぞれお客様が一番良いと思うものを選んで組合わせできることだが、まだそこまでデジタルサイネージは成熟していない。こういうことはアンバンドリングと呼ばれ、ケータイ電話の頃はキャリア・装置・サービスが一体であったのが、スマホ時代になって、どの機種でどのキュリアでも同じサービスが受けられることが増えたような進展がデジタルサイネージにも求められる。

サイネージネットワークも『トータルに見積りします』といった場合に、バンドリングという『込み込み』の弊害に巻き込まれやすくなってしまう。このことはお客さんの方からみると、見積もり合わせにおいて部分比較ができにくいとか、もっというとそれぞれの提案者の本当に得意としているところが何なのかわかりにくくし、ベストの組み合わせを考え難くしているともいえる。

 

そのために推測ではあるが、デジタルサイネージの購入は実はすでに決まっているにもかかわらず、見積もりを依頼してこられるとことがある。おそらく他の会社の意見を聞きたいとか、お客さんがやろうとしていることが間違っていないことを確認したいために、別業者の見積もりを求めているのである。これは別のお医者さんにセカンドオピニオンを求めるのと似ているが、業者側の正式な業務でもない情報目的の見積もりだ。

こちらもうすうす気づきながら将来のことを考えて対応しているし、できることならハードやシステムは何でもいいからコンテンツ制作とか運用管理を任せてもらいたいなと考えるわけだが、デジタルサイネージに特化した話になってしまうと、そういういろいろな業者を取りまとめるところがないので、お客様はトータルパッケージとしていずれかの業者を選ばざるを得ない。

サイネージだけではなく、販促全般をどこかがとりまとめているならば、メディアによって制作会社を変えるわけにもいかず、ハード・システム・コンテンツのアンバンドリングをせざるをえなくなるはずだが、まだ販促の中にデジタルサイネージがきちんと位置付けられるところまでもいっていない。

サイネージネットワークへのお問合せは、ムリムリ見積依頼の形をとらなくても、どんなやり方が考えられるのか、という相談の形で、見積もり以前の構想段階からぜひ持ちかけてください。

 

最初の1台

もしデジタルサイネージがタダで導入できるとしたら、どう使いますか? というようなことを、街のお店に唐突に投げかけてみたら、どういう反応が得られるだろう? おそらく役に立つような使い方が思いつかないから、今は遠慮するところが多いだろう。その意味ではデジタルサイネージはLED文字の電光看板やコルトンフィルムの電飾看板よりもとっつき難いものではないだろうか?

逆に、そんな使い方の判らないものを売っているメーカーがいろいろ存在することの方が不思議だ。売る方はうまく使っている会社の事例を挙げて説明していると思うが、うまく使えている要因はなかなか伝わらないのではないか。だいたい商売がうまくいくところは、バランスよくいろんな能力を持っていて、またサイネージを導入するとなると、そこで新たに必要となる能力も調達することができる会社である。これはWebやモバイルの活用、店舗レイアウトの最適化、メニューの刷新など、何に於いてでもうまく人材再配分ができる管理能力の高い会社といえる。

 

とっかかりとしてのサイネージ

 

そういう完成した会社とは対極的に、現状のいろいろな課題を何とかしたいと思っているところが多くある。しかしそこには販促の担当できる人が居ないか、忙しすぎて今以上の事ができないでいる。デジタルサイネージ以外にも販促メディアはさまざまあるものの、費用面以外にも準備の手間暇で着手するのが難しいとしたら、デジタルサイネージの特徴は、簡単に情報発信ができること、簡単に変更・更新ができることがウリにできるはずだ。

冒頭のタダでのサイネージの設置は難しいとしても、もし準備の手間暇がかからない目途がつくなら、とりあえず安いサイネージを導入して、試行錯誤しながら他の販促メディアよりも経済的に販促力を高めていくことができるだろう。

手間暇をかけないとはいっても最低限の準備はしなければならない。それは商材に関するものと、ビジネスのタイミングに関するものである。つまりそれらの用意があれば、まずサイネージから初めて、他の販促メディアにも展開していきやすいだろう。

 

例えば弊社サイネージネットワークに導入の相談を持ちかけていただくなら、商材に関しては今使われているカタログ・チラシなど主要な印刷物、ロゴマーク・商品写真などのなるべく品質の高いもの、またタイミングに関しては、年間の販売計画やキャンペーン・イベントのサイクル、などがベースの資料としていただけるとスムースに進む。またこれからどんなことをしたいかを伺えれば、毎月のテーマを予測することができる。これは販促カレンダーを作るようなカンジである。

販促カレンダーとは、例えば朝日オリコミのサイトには月別のものがあり、前年データとして、天候、出来事、行事が記され、新聞折込広告の会社なので日別の1世帯平均枚数実績までも載っている。また、今年予定されている行事、記念日があり、販売の重点テーマとして、例えば6月の父の日ではどのような商品に動きがあるのかも載っていて、自分の会社の販促プランの参考にできるようになっている。 販促カレンダー6月分

こういったものは業界別などさまざまなものが作られているので、自分に合ったものを選んでいただいて、制作側と共有していくと話し合いも行いやすい。

 

まずは漕ぎ出すことから

 

サイネージネットワークのような制作会社では、商材の素材と販促テーマさえいただければ、その先のレイアウト・デザイン・ビジュアル化に進めるので、デジタルサイネージの最初の1台に漕ぎ出すことができます。はじめのうちはコンテンツ制作に費用のかからない、既存の写真やカタログイメージを使いまわして、従来の販促をサイネージでも再現するところから始めたとしても、そんなサイネージを身近なところに置いて日々接することによって、『もっと、こうしたい!』という新たな方向性がきっと出てきて、販促意欲が高まってくると思います。その想いを毎月少しづつ表現していけば、その積み重ねがオリジナルな販促活動になっていくでしょう。

サイネージネットワークでは、以上のような準備に負担がかからず廉価なデジタルサイネージのスターターキットのサービスを近いうちに始めようと計画しています。

 

画面が大きいと何がいい?

この10年のデジタルサイネージを振り返っても、32型→40型→55型と大型化する傾向にある。さらにマルチでその3倍4倍も簡単に設置できるようになってきた。映像ソースも4k8kに向かうのだろうが、こちらはコンピュータでCG制作するならよいのだが、カメラから編集までのところはまだ手ごろな価格にはなっていないので、相当予算のつくところでないと導入はできていない。

そもそも画面を大きくするのは何のためだろうか? 迫力? 目立つから? これにはちゃんとした研究開発の積み重ねがあって、むやみに映像のスペックを上げてきたのではないことがわかる。論文としては、「高臨場感を生んだハイビジョン画面効果の研究」(https://dbnst.nii.ac.jp/pro/detail/241)に事の起こりが書かれているが、要約すると次のようになる。
HDTV(High Definition Television)は1960年代に次世代テレビの研究としてNHK放送技術研究所で始まり、1980年になると前述の研究によって、テレビの画面を横方向に大きくして広い視野で映像を見たとき、画面内の映像から受ける心理的な感覚・知覚量が大きくなって表示された映像空間に引っぱられるような効果、即ち臨場感効果が得られることが明らかになった。
これは誘導効果と呼ばれた。当時シネラマという3本のフィルムを横につないで撮影・映写するものがあって、崖っぷちに人が立つ映像を見ると身のすくむ思いがするような臨場感があった。

これを数値的にとらえる実験が当時アナログな方法で繰り返された。画面の左右両端を見込む視野角が20度を超えると次第に映像の空間に主観的な座標が誘導されるようになり、前述のように映像の空間に入ったような感覚、つまり臨場感の効果を心理物理量として捉えた。これをもとにHDTVはこの効果が顕著になる視野角30度を、望ましい観視条件とした。この理屈は今の8kにも引き継がれている。画面の縦横比は映画の縦横比も考慮して9:16 に国際統一された。

画面両端の視野角が30度での視距離は、画面の高さの3.3倍となり、画面高さを75cmとすると、2.5mになる。視力1.0の人の視覚の分解能は1分といわれていて、それを越える縦画素数としてHDTVの縦は1080にされた。横画素数は計算すると1920となる。

4k8kはHDTVの延長上に、さらに視野角の広い映像を提供するもので、それによって誘導効果が高まる、つまり臨場感がマシマシ・モリモリになることを狙っている。だから画面が大きく高解像になっても、遠くから眺めていたのではその効果は発揮できず、映画を前列で観賞するような視聴環境に変えなければならない。

 

これに関連して比較すれば、ビル壁面のLEDビジョンは確かに大画面だが、人は離れて見ているので 視野角は広くならない。つまり臨場感を出すことを狙っているものではない。単に街角で目立つことで目的は達成されるのだろう。

屋内のデジタルサイネージを大型ビジョンにするには設置の困難さを伴うというか、結構邪魔扱いされたりするものだが、裏腹に大画面を近くでみるということで臨場感・没入感をだすようなコンテンツには向いているということになる。その意味で屋外の大型ビジョンとはコンテンツ制作の考え方は異なる面がある。

マルチディスプレイの悩み

デジタル映像出力の規格DisplayPortは、VGA→DVI→HDMIよりも高機能で、4k8kといった高解像度表示の利用を見据えたものとなっているが、逆に今までの用途では必ずしも必須とはいえなかったかもしれない。強いてメリットをあげると、ディスプレイを数珠つなぎにしてマルチディスプレイをやりやすくしているところだろうか。かつてマルチディスプレイをするは何らか専用のコントローラが必要であった。それが単なるパソコンである程度のことができるようになったからだ。

でも、どうもDisplayPortも進化しており、パソコンのハード側、OS側と、またディスプレイ側の対応が合わないと思い道理の動きはしないみたいで、よく見かけるのはJRの新車両にもあるような3台接続である。今のところはパソコン・OS・ディスプレイ全部新調するのならテストをして始められるが、すでに設置されているものを使いながらのマルチディプレイ化はリスクが高い。

 

折角特別な装置が不要になるはずの規格なのに活かせるところは限られるようにも思える。下の写真は東芝のディスプレイの例だが、ABDCの4台のディスプレイをDisplayPortで数珠つなぎにして、パソコンから4k映像を送って分割表示をさせている。パソコン側は何も細工はしていなくて、ABCD4台の1920 x 1080ディスプレイの側で、それぞれ表示するのを映像の『左上』『右上』『左下』『右下』と分担させているだけである。こうすると80~100インチに4kを出すものがいとも簡単に作れるのでナイスアイディアだと思うが、こんな設定がどのディスプレイにも可能かどうかは確かでない。

安全なつなぎ方としてはDisplayPortのHUBを使って4面にだすことだろう。ディスプレイの設置場所に普通のデスクトップパソコンを置くわけにもいかないから、弁当箱のようなパソコンを使って、信号はWiFiで受けて、マルチディスプレイをしているようだが、表示を面白くするために複雑なコントロールをするとなると、やはり何がしかの専用のアプリが必要になる。

 

またそうなるとDisplayPortでなくHDMIでも構わないはずだ。ただし実はHDMIの方が後発だから、DisplayPortを対象にマルチスクリーンのコントローラが先に開発されていたというのが現実なので、今マルチスクリーンを考えるなら素直にDisplayPortに向き合った方がいいのかもしれない。

 

DisplayPortとHDMIは似たようなもので違いが分かりにくいが、最初は出身地の問題だった。DisplayPortはPCの世界から起こり、グラフィックボードでの採用となった。伝送方法はHDDを4台並行に動かしているような4レーンの伝送であり、通信方法はパケット化方式なので、送受に高度な処理が必要になり、使うチップの原価も高い傾向にあった。

後発のHDMIはAV機器出身で3レーンの伝送で、比較すると単純な技術を使っていたので相性問題はほとんど起きないようだ。しかし両者とも4k8k時代に向かって新しいバーションが次々出てきていて流動的だし、今売られている機器類の組合わせの可否も悩ましいものとなる。しばらくはこんな悩みが続くと思うので、このブログでも設置のプロの業者のノウハウやアドバイスも紹介していきたいと思う。

サイネージの図版  コンテンツシリーズ⑦

街に設置されている多くのデジタルサイネージは通行人に対して何らかのアピールをする目的なので、短時間のうちに人の目を止めなければならない。そのために何かと刺激的なグラフィックスを表示しがちだが、逆効果も考慮しなければならない。スピード感のある映像は、見る人をハッとさせるが、ずっと見入ってもらえるとは限らない。だからそれらは一瞬だけ使って、その後はちゃんと認識できるものを表示するなどの組み合わせを考える。

また必ずしもポスターのような写真の魅力に依存するよりも、モーションをつけるとか、イラスト化するなどの工夫のことも、コンテンツシリーズ⑥ で書いた。

ネットを見ていたら、アメリカンコミックのキャラクターと、それを元にした実写版映画のキャラクターを比較した写真があった。ストーリーをじっくり鑑賞するなら実写の魅力は十分に発揮できるのだろうけれども、一瞬のうちに人の姿を認識するには、イラストの方が手っ取り早いなあと、あらためて思った。

しかし、アナログなドローイングであるコミックをスキャンするとかデジカメで撮ったものは、例えば左上の女性ヒロインの顔を全画面に拡大すると、モザイク状のギザギザになってしまって、デジタルサイネージで縮小拡大移動のモーションを付けるようなわけにはいかない。

これは企業のロゴマークなどでも同じで、スキャンしたものを拡大するような加工をするようなことはせずに、Adobe Illustrator(や以前はFlash)などでベクター化したものを使うのが常識になっている。そうしないと画面が汚くなるからだ。今ならCADやCGからベクターグラフィックスを取りだして使うこともある。縮小拡大時にギザギザが出ないことでシャープさと力強さが出ることがベクターグラフィックスの強みである。

上のようなイラストは、写真や絵をスキャンしたものを下敷きにして、濃度の異なる領域をパスで囲むような作業をし、そこに着色するという、絵の作り直しの作業を経て出来上がっている。これは結構面倒な作業ではあるが、要するにアナログ描画も一旦ベクターグラフィックスにすれば、縮小拡大変形が自由になるので、ロゴやマークや製品写真、キャラクターなどで日常的に使いまわされている。

さらにベクター化した素材はアニメーションにも向いていて、以前主流だったFlashといわれたソフト(今はAdobe Animate 下のYouTube参照)以外でも、簡単なアニメなら多くのグラフィックソフトでも作成できるようになっている。

 

What is Adobe Animate CC (October 2017) Adobe Creative Cloud

 

こんな凝ったアニメはデジタルサイネージでは使わないにしても、一瞬スピード感のあるキャッチーな映像を出したければ、ベクター化したグラフィックスにモーションを付けるのが適している。縮小拡大や速度や尺をいろいろ変えてみることが自由にできるからだ。

サイネージの可読性  コンテンツシリーズ⑥

YouTubeに文字がスクロールしているだけの映像を上げている人が居るが、いくら画面で見せるにしても、SNSのような文字を読ませるメディアを使った方が文章は読み易いだろう。本を読むことにも共通しているのだが、読み手が内容を理解しながら読み進む速度は一定ではないからだ。分かりにくいところは行ったり来たりしながら読むものなので、読み手が自分でスクロールのコントロールができる必要がある。デジタルサイネージも読み手がコントロールしながら文字を読むようにはなっていないので、文字の出し方というのは相当配慮しなければならない。

サイネージにおいてどれだけ文字を読ませられるかは、サイネージの設置されている場所による。病院の待合室のように座っていて、しかも読むに十分な時間がある場合は、パワーポイントのプレゼンテーションくらいの表示はできる。掲示板のように、わざわざそこに来てもらって立ち止まって読むものも同様である。実際にパワーポイントを静止画のスライドショーにして使っているサイネージも多い。

一方で路傍のように通行人を相手にした場合は、ありきたりのパワーポイント的な見出しと本文の組み合わせのスライドショーでは振り向いてもらうのは難しい。もっと訴求点を絞り込まなければならない。デジタルサイネージではいろんなビジュアル効果が使えるとはいうものの、見せたものを人の記憶に留めるには、やはり重要なポイントは文字化して、大脳に覚え込ませる必要がある。見た印象だけではその時だけ感情を揺さぶるに過ぎず、その感情はすぐに薄れていくように人のアタマはできているからだ。

 

つまり感情を揺さぶるビジュアル効果と、記憶に結びつく文字は上手に組合わせなければならない。しかも通行人のように数秒しか画面の前には居ない人を対象にするのだから、文字をいっぱい並べて読むのに1分かかるようでは、もう人は数十メートル先の視界を見ているようになってしまう。だから文字を読ませるといってもチラッとみてわかるような文字量とか表現方法(コピーライティングを含めて)にすることが、デジタルサイネージの可読性を高めるコツになる。

たとえば俳句程度の文字数にまとめるコピーライティングが重要だろう。これくらいなら静止画ではなく、動きのあるビジュアルとはある程度共存できるが、もっと文字数が多くなると画面の動きは邪魔になり、むしろ静止画の方が読み易い。しかしそうなると人の足は止めにくくなる。

 

文字の問題はいつも、動かした方が目をひきやすいということと、むやみに動かすと読みにくいということのバランスに悩むものだが、動きに耐えられる堅牢なコピーを心がける。人は文字列の最初から一文字づつ順番に読んでいくのではなく、言葉になった文字の固まりを認識する。だから次のような間違いでも、ぼやっと見ていると読めてしまったりする。

実際にこんな間違いは起こさないだろうが、これくらい当たり前のフレーズなら、バックに動画が動いていても、ゆっくり文字が動いてもわかってもらえる。わかりにくい言葉や難しい言葉などの文字表現は避けた方がよく、むしろ馴染んだ言葉を使う方がビジュアル表現との相性はよくなるだろう。

またデジタルサイネージは紙のパンフレットよりは看板に近いものなので、印刷物では行いがちな微細なフォント加工はかえって邪魔になる場合がある。そういう点ではテレビのテロップに近いものだろう。もし印刷物やWebとサイネージのコンテンツに連携をもたせて最初から設計できるならば、最初に印刷のデザインをするよりは、画面向けのデザインを先行させて、後で印刷用に凝った表現を加えて使う方が、サイネージとしては見やすいものになるのかもしれない。

 

サイネージのコントラスト  コンテンツシリーズ⑤

昭和のムカシ、映画の看板は職人さんが手で描いていた。旅行していると同じ映画でも各地の看板に筆の差が出ていて、中には役者さんに申し訳ないほど似ていない場合もあった。

これは今のように写真を大きく伸ばすデジタル技術がなかったからでもあるが、写真よりも職人さんの筆の方が好まれた面もあった。親しみを持てるという点では似顔絵的でもあり、また迫力という点では劇画的でもあった。イケメン役はさらに美男子に、悪役はさらに残忍に、という表情の脚色もされただろう。

また実際のグラフィックスの効果としても単純な写真再現では看板として役不足で、下の右のもの写真なのだが職人の手が入ったレタッチになっている。

 

プロのカメラマンが綺麗に撮った写真でもレタッチ職人が筆でお化粧をしている理由は、写真は遠目で見た場合にボヤッと間延びした絵になってしまいがちだからだ。つまり写真に何か欠陥があるのではなく、こういう屋外看板が掲げられる場所の問題なのである。

白昼の太陽光の元ではくっきりとした陰影がつき、人の目にとってはコントラストの強い情景が晴れの日の屋外である。この強コントラストの情景に負けないようにグラフィックスを掲げようとすると、写真もすごくコントラストの強いものに直さなければならないからだ。

サイネージのコンテンツにの場合でも、屋外用はコントラストを強くすることは意識した方がよい。でもそれでサイネージが屋外で使えるというわけにもいかない。

サイネージを屋外に設置するのはいろいろと設備面のハードルが高くなるが、パネル設備の明るさや温度管理ということよりも優先して、いったいどういった向きに設置するのかというのが問題になる。

上の写真の街角でいえば、右に白い壁面がみえるが、おそらくそこは南向きで、そんなところで使えるような液晶ディスプレイはないだろう。正面に絵が描いていあるところがあるが、ここは西向きで西日はあたらないだろうから、デジタルサイネージもいける。もっとも日の出には照らされるだろうが、そんな時に看板を見ている人はいないだろうから問題ない。

逆にカメラの位置ではきっと西日が強烈にあたるので、夕方の人通りを対象にする場合は、あまりサイネージには向かない。夜間用ならよいだろう。

写真の左側の日陰になっている壁面は北向きで、手描きの看板なら目立たない場所なのだが、発光するデジタルサイネージの場合はむしろ見やすく好都合になろう。

 

実際には映像を制作する時点でサイネージの設置条件はわからない場合が多く、コントラストの不足とか過剰については、設置されたパネルのリモコンなどでの調整を行うのが関の山である。一方でショッピングモール内とか、ちょっと薄暗いホテルのロビーなどのような環境は屋内設置なのでコントラストを強めることは必要ない。

コンテンツの制作前にある程度設置場所が予測できたとして、屋外でもボヤケないコンテンツとしてどんな工夫があるのだろうか? それは写真中心よりもイラストとか大きな文字とかを効果的に使うことだろう。

サイネージの動き    コンテンツシリーズ④

テレビコマーシャルや販促ビデオを基にしたデジタルサーネージは当初より有った。ビル壁面のLEDビジョンとか、スーパー・ホームセンターの棚にあるデジタルフォトフレームみたいなものである。またJR東日本のトレインチャンネルも次第にTVCFのようなスタイルが主流になってきた。これらを真似て、カラオケのイメージ映像のようなものをデジタルサイネージに垂れ流してしまったりは、していないだろうか?

一方でブランド品の店舗装飾のような場合は、紙のポスターのような『キメ写真』をバーンと大画面に出すようなものがある。この分野はデジタルサイネージになっても同様で、『キメ写真』を中心にしていろいろなイフェクトをかけて動画のようにすることで、ある雰囲気を出しながら、紙のポスターよりも着目度が高いものに仕上げている。美容院とか美術館などにも応用が効く方法である。

今日では動画を撮ることも簡単になったのだし、何も写真や静止画など使うことは無いのにという見方もあるだろうが、映像制作のプロがするのならともかく、尺の短いものでピシッとキマッたシーンをとるのも大変なのである。

紙のポスターを作る場合には、モデルさんの顔を中心に扱うのか、姿態を中心に扱うのかというのは、レイアウト上どちらかに絞らなければならないが、デジタルサイネージなら、①顔から姿態へ ②姿態から顔へ と視線の移動を簡単に作り出せる。映像制作と違ってモデルさんに何度もやってもらう必要はなく、むしろカメラマンは『キメ写真』にさえ集中してもらえばよい。その後は何らかのストーリーを作って、装飾品なり時計なりアパレルなりの商品やブランド名などにつなげていくのがデジタルサイネージである。

 

①にするか②にするかは、何を訴えるかによって変わるだろうが、いずれにせよ『キメ写真』をより印象深くする手法でもある。こういうビジュアルコンセプトをさらに深化させるところに動画を使い、それは沢山撮るということではなく、例えば、「まばたき一つ」「髪がふわり動く」「口元がゆるむ」「頬に笑みが」などわずかな動きをきっちり再現するだけで、見る人がドッキリ・ハラハラのキラー映像に仕上がるかもしれない。ちょうどTVCFのエッセンス部分の何秒かをぐ~っと延ばしたようなものなのだろう。

 

以上のことを言いかえると、忙しい映像のTVCFと違って、わずかな動きでも人の目が引き寄せられることを利用した映像作りがデジタルサイネージにはあるということだ。

実は人の目は図のように左右で180度ほどの視野をもつにも関わらず、本の文字を読むようなことが出来るのは中心の5度ほどしかなく、殆どのところはぼやっとした解像度しかない。しかし解像度が低いから鈍感というのではなく、自分の視野の中で起こる変化には機敏に反応できるようになっていて、横から何かが飛んできたとか、部屋の隅でゴキブリがカサコソ動いたようなことは検知する。だから街を歩いている時に、自分の向かっている正面ではなく、路傍にあるデジタルサーネージがちょっと動いているな、ということにも気付くことにもなる。

 

そしてデジタルサイネージに気付いてもらったあとはコンテンツ力の勝負になるので、『垂れ流し動画』で終わってしまうのか、『キメ写真・キメ映像』になっているのかで、お客さんを引っ張る力に大きな差が出てしまうだろう。

 

サイネージのサウンド    コンテンツシリーズ③

すでに街のあちらこちらに動画のデジタルサイネージは設置されているので、画面が動いているからというだけで人の視線をひきつけられるものではない。だからといって動画の広告でよくみかけるものに、画面がゆるやかに遷移しているのに、無意味にうるさいBGMをつけて、人の気を引こうとしてものがあって、だいたいこういうのは印象がよくない。
強引な呼び込みみたいなものだろうか。店頭やイベント会場でも大きな音を出していると隣近所から文句が来ることがある。そういうことを配慮してか、デジタルサイネージの設置場所によっては音を禁止していて、せっかくBGMを作っても無駄になる場合がある。むやみに必然性のないBGMは付けるべきではないだろう。

 

しかしずっと音が出っぱなしのBGMではなくて、ナレーションを適切にいれるくらいなら、それほど周囲に迷惑にならずに、人が「おやっ!」と思って振り向いてくれる可能性はある。これも程度問題なので、設置場所にふさわしい語り口にしなければならないだろうが…

サイネージの動画がスルーされがちな場所においても、人の語りかけが聞こえたなら、通りがかりの人に認識してもらいやすい。つまりサイネージの画面の遷移とシンクロさせるように音でメリハリをつけるということである。

また画面が変わる際に効果音のジングルをいくつか決めておいて、それを使いわけることが行われる。語りとジングルによるメリハリで盛り上げていくのは、「さあ正解は!ジャジャーン」みたいにクイズ番組などでよく見受ける光景だ。

BGMの話に戻って、音楽をバックに流す効果というのは、サイネージの流れを分かりやすくするとか、リズム感をもたせることで、伝えたい内容をより高度に演出することが目的のはずである。

これは音楽の構成にそった映像つくりをすれば、両者がシンクロできるともいえる。つまり、前奏-16小節(例えばの話し)-後奏、のようなことを意識して、絵コンテも4小節x4というように設定したとして、絵コンテの展開を例えば、「えっ!」「ほんと?」「まさか」「行かねば!」、という4段階にわけて、音楽に乗せて映像も切り替えていき、映像のスレッドの尺も4小節づつの繰り返しにすれば、リズム感を産みだせるとともに、映像に対してナレーションとか掛け声やジングルもシンクロさせやすくなる。

そして、ナレーションの重要部分や掛け声のところは、映像の中にも文字化して出しておけば、たとえ音が出せない場所でのデジタルサイネージでも、無理のない流れでリズム感をもった映像にしやすい。

無音でも通用するが、音がだせたらもっと効果的、という作り方がよいだろう。

 

サイネージのフォント    コンテンツシリーズ②

印刷の特徴は新聞に代表されるように、短時間に多くの複製を作り出せることにあるが、印刷物の配布はトラックに積んで行わなければならないために、頻繁に変更がある情報伝達には向かない。しかし今日の印刷は500年の伝統があり、その中で文字や図像に関するさまざまな表現技法が開発されてきた。それらは現代では紙にとって代わった新しいメディアであるテレビ放送のような動画やWebの世界でも引き継がれている。時代と共に情報伝達技術は変わっても、表現技術・技法はそれほど変わらない部分もある。

電子メディアにおける文字の扱いは、電子メディアの登場時点では文書作成にフォーカスしていたのが、パソコンの時代になってさまざまな印刷物もパソコン上で作成できDTPになったのが1990年代。それまでプロの印刷用フォントでしかグラフィックデザインができなかったのが、デザイナがパソコンで仕事できるようになり、テレビのテロップなども斬新な雰囲気になって大きく変わってしまった。しかし残念なことに街のデジタルサイネージには、この流れに取り残されてしまったものも見受ける。

例えば、よくデザインされたフォントを単にパソコン上に移しただけでは、下の写真の左のようになってしまうことがある。一方印刷で培われたフォントの扱いである、文字の間隔や並べ方のコントロールの技法(タイポグラフィーという)は、広告宣伝物を通じて人々が日常目に触れるいたるところにあって、一般人の美意識にも染みついている感覚である。それからするとpowerpointで作ったようなPOPは間延びしたものに見えてしまうことになる。

POPがパソコンで簡単にできても、店頭では手描きのPOPの方が味があるからという理由で、店員さんがPOPの上達に励んでいるのが現実である。確かに上の左の写真のようなPOPを作るくらいなら、自分で文字を描いた方がカッコイイものが出来ると思う人は多いだろう。

 

デジタルサイネージでも同様で、月並みなパソコンPOPのようなもので安直に制作していては、色とりどりのマーカーやチョークで手描きする看板からは見劣りしてしまう。しかしグラフィックに凝れば凝るほどよいと言いたいのではなく、機敏に情報を発信する上では制作スピードが第一なのである。だから、手元のパソコンも活用しながら、デジタルサイネージの印象が陳腐にならないように、ところどころにはピシッと締まったタイポグラフィーも見せるようにしたいものだ。