トップ
「日記」カテゴリーの一覧を表示しています。

2018.1.26

情報の寿命について  コンテンツシリーズ①

以前JR山手線の新車両が車内の広告をすべてデジタルサイネージにして中吊り広告を止めるという話があった。中吊りはだいたい1週間程度で入れ替わるのだろう。中吊りを無くそうという話は、電車の運行中に紙を付けたり外したりする作業が不要になるからだったが、実際には中吊り広告は無くならなかった。現実としてはドア横の貼紙広告も残っているし、車体にラッピング広告をすることもあるように、人件費云々は広告代でまかなえる構造だから、中吊りの問題も作業負担が本当の問題ではないと思う。

中吊りでよく目につくのが雑誌広告で、これは発売日のあたりだけ必要なものだ。つまりメッセージの寿命は短い。広告のビジネスを拡大していこうとすると、中吊りの印刷や付け外し時間をカットして、紙では不可能な短期間の広告を開発していくことが狙いであったはずだ。
これはヨーロッパで駅や交通機関のデジタルサイネージが非常時の緊急誘導のインフラとして考えられた経緯からしても当然の考えで、究極のデジタルサイネージは放送のようにいつでも自由にメッセージが出せるようになることだと思う。これはネットの時代になったことで、電波の許認可などなくても、だれでも何処へでも情報発信できるのだから、紙の中吊りスペースの有効活用として、いずれデジタルサイネージ化する日は来るだろう。

 

交通機関の場合は鉄道会社系列広告代理店がメディアとしてデジタルサイネージを提供しているので、メディア利用料金のビジネスでしかないのだが、店舗や施設が自分で設置するデジタルサイネージは、自分のビジネスを助ける広告・宣伝・販促・案内・通知などに使われている。この分野も以前は紙や電波媒体を使っていたものを、もっとタイミングよく情報発信することが、デジタルサイネージ導入の理由になっている。つまり情報の差し替えを容易にできることがサイネージの最大の利点なのだが、それほどコンテンツが差し換えられているサイネージはなかなかお目にかかれないのが実情である。

食堂などで「冷やし中華はじめました」という貼紙やポスターが初夏に掲げられると、人の心は引っ張られる。掲げるタイミングは「ちょっと蒸し暑いな」というところだろうが、一体いつ取り外すのだろうか? こういう貼紙は食材の納入業者が持ち込んでくるので、次の新たな貼紙が来るまで前のが貼られているのではないだろうか?

だがデジタルサイネージもこういう状態を引き継いでいたのでは活用しているとは言い難い。紙のポスターでは不要になったものを外して来年にとっておくことはないだろうから、その場限りの情報発信になってしまうが、デジタルコンテンツなら1年経つとそれぞれの季節のコンテンツが積み重なっていって、来年はまたそれをモディファイして使いまわすことも可能なはずだ。そういうことで、年間通じて途切れない販促ができるようになるだろう。

 

ポスターや貼紙のマズイところは、もう期限切れになったキャンペーンのポスターが残っていたり、場合によっては何年か前の色褪せたポスターが掲げられていたりして、情報の寿命がなくなった後も外し忘れがちなところだ。外さなくても店に損害はないと思うかもしれないが、実は店の印象を悪くしているものなのだ。店回りの掃除や整理整頓をするのと同じように、お店の発する情報も賞味期限が切れていないかどうかを顧客目線でチェックする必要がある。

2018.1.19

効果とは? 始めるシリーズ⑥

広告・宣伝・販促 似ているが少しづつ意味合いは異なるが、はっきり区別できないところも多くあり、デジタルサイネージでもこの3つの要素は混在している。
販促ではどれだけ売らなければならないか、という目標がはっきりしている。商品を仕入れた数と売価の関係は、需給の強弱で変わっていき、アウトレットのような売れ残りになると、原価でも捌いてしまわないと、逆に管理コストや廃棄コストがかかってしまう。これは現場の課題になっている。
宣伝というのは元々は「売り文句」のようなもので、商品を適切にうまく表現できるといいが、嘘や大げさな表現をすると、消費者の誤認を招き被害が発生する恐れがあるとして、法律で取り締まられてしまう。不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)その他宅地建物取引業法第32条、特定商取引に関する法律第12条、医薬品医療機器等法第66条などなど、誇大広告の規制がそれぞれの分野にある。これはどんなメディアを使おうとも共通したことだ。
広告とは紙や電波やネットなどの広告媒体を使って、商品について消費者に期待をいだかせたり、会社の社会的役割を認識してもらったりする。どういう対象にどういったメッセージを送るかという問題でマーケティングに近い。

デジタルサイネージの効果を考える上で、販促は非常にわかりやすい。株や相場のような値動きが不断にあるものでは、いちいち紙に書いて貼りだしていては間に合わない。それに似たことが販売の現場にもある場合、例えば商品在庫やホテルの空き室が残りどれだけだとか、タイムセールでどれだけ値下げをしているかのような、紙ではできなかったことがデジタルサイネージでは可能になる。

しかし売場の刻々の変化に応じて値段を決める仕組みは人が作っておかなければならないし、その設定の上手下手で売り切り出来るかどうかも決まるだろう。だからデジタルサイネージにタイムセールの告知をするデザインやキャッチコピー、写真などは事前によく考えて制作しておかねばならないが、そのグラフィックスのクオリティで効果が出るとかは言い難い。

 

つまり表現とタイミングとを組み合わせた使い方で効果が出るかどうかが決まるはずだ。デジタルサイネージは事前にいろんな表現・表示物・メッセージを仕込んでおけるので、どのタイミングでどういう表示をしたらいいのか、というところを現場で考えなけれならない。

例えば、夜には居酒屋だったりバ―の営業なのだが、昼間はランチを提供する場合は、店の表のスタンド広告にデジタルサイネージを使って時間帯でメニューを切り替えるようなことが行われている。看板の架け替えをしているといえる。ただこれだけで売上増進が期待できるのだろうか? さらに工夫をするとすると、昼のランチのお客さんに夜の営業を宣伝するとか、逆に夜のお客さんに昼の案内をするような、クロスセルを店内のサイネージで行うことが考えられる。そうすることで昼夜共に来てくれるお客さんが増えたかどうかを見るのが効果測定になるだろう。

 

店舗でも何らかの販促に関する仮説をたてて、サイネージで一定の時間帯に宣伝して、その効果をリアルタイムPOSの売上集計でチェックすれば、サイネージのどの部分が効果があったのか無かったのかというのが推測できる。

いいかえると来客数や売上げの増減をあらかじめ測っているところにデジタルサイネージをおけば、両者の関連が把握できるようになる。だから、試行錯誤を重ねてデジタルサイネージの上手な使い方が習得できて、効果があったかなといえる段階に到達するだろう。これはサイネージであれポスターであれアナウンスであれ、同じことのように思える。ダイエットをするには毎日体重を測ってカレンダーにつけることが重要で、意識するようになれば自然に体重コントロールができるのと似ている。

 

2018.1.12

手が回らない!で諦めてませんか? 始めるシリーズ⑤

駅などに設置されている大型のデジタルサイネージにはテレビコマーシャルに匹敵するような綺麗な動画が流され、デジタルサイネージの魅力をアピールしているとともに、サイネージを導入したい意欲に駆られるかもしれないが、実際に店舗などに設置してあるサイネージでは、ほぼポスターと変わらないものが多く、両者のギャップは非常に大きい。
JR東日本のトレインチャンネルでも、最初の頃はオリジナルコンテンツを工夫していたが、最近は8割方がテレビコマーシャルのような別動画の流用であるという話も耳にする。テレビコマーシャルが立派な映像を流しているのは制作にお金をかけているからだとすると、予算が無いところで魅力的なデジタルサイネージは無理なのだろうか?

こんな疑問を乗り越えるために、始めるシリーズ②ではコンテンツ再利用の契約条項のことや、始めるシリーズ④では売場に近いところでもコンテンツ作成をすることを提案した。つまりお店の中の非常に限られたスタッフにサイネージの企画・制作・運営を押し付けることは無理難題であって、サイネージ導入の話が持ち上がったとしても、当事者はその大変さを察するから導入に二の足を踏むということもあるだろう。実際に数年前にスタンドアロンのデジタルサイネージを導入したものの、コンテンツの入れ替えはできず、効果も有るのか無いのかわからず、そのうちにハードウェアが不調になって、デジタルサイネージを撤去してしまったというところも結構多い。だから導入後の運用面の面倒を見てもらえるようにならないと、巷での広範なデジタルサイネージ普及は起こらないだろう。

 

幸いなことにネット・クラウドの時代になったので、しばしばお店に足を運ばなくても、離れた会社からのサービスとして上記のような面倒見はできるようになっている。そもそも動画であれ印刷物であれ、それらが企画・制作されているプロの世界ではとっくの昔にネット利用がされていて、消費者にメッセージを提示する広告や販促の段階のネット化が遅れていたのが、やっと全体がネットでつながるようになりつつある。これはすでにスマホやタブレットを日常使っている人からすると、エッ!というほど前時代的に思われるかもしれないが、こんな時代錯誤が起こるのはネット経由で広告・販促のお手伝いをする業者があまりにも少なかったからだ。いいかえるとこれからネット・クラウドの活用で、今まで手が回らなかった少人数のお店でもデジタルサイネージの運用が可能になると思っていただきたい。

 

お店がデジタルサイネージ活用に関してやりたいことの代行というのは、いわゆるアウトソーシングにあたり、毎月いくらかの費用はかかるものの、今まで発注していた広告・販促物の見直しや、社内でのそれらに関る内部コスト、今までできなかったことが解決できるメリットなどを総合的に判断すれば、新しいデジタルサイネージは決して余計に費用がかかるものでもないはずだ。むしろ出費が抑えられるように、社内の担当は何をして、どこを外注するのかを上手に切り分けることが重要であって、そういった相談にも乗ってくれるところに、運用面のアウトソーシングをするのがキモになるだろう。

 

数年前のデジタルサイネージ導入は、とりあえず入れてから考える、という面が強かったように思うが、これからは商品サイクルに合わせた年間の目標を定めて、コンテンツの追加・更新という運用を含めた月次計画をたてて、それを社内担当・アウトソーシングの両者が相談しながら分担して進めていくことで、広告・販促の届かなかったところを埋めていくことができる。導入の規模として考えると、電光看板(参考)でも毎月のリース料がかかっているだろうから、何店舗かがまとまるのであれば、その発展的リプレースとして、ネット集中管理のデジタルサイネージのアウトソーシングが割にあうのではないか。

2018.1.5

絵に力を! 始めるシリーズ④

そば屋やうどん屋の前にある看板で時々見かけるものに、どんぶりから湯気が立っている造形物がある。印刷物でも写真撮影の際にはおいしそうに見せるために様々な工夫をしているし、すでに撮影された写真に湯気を合成するための「湯気」だけの素材写真が売られていたりもする。動画にも後から湯気を追加する方法もある。湯気があったらそばの注文が何杯増えるのかという計算づくではなく、食べたい気分を演出するものである。

食べ物をおいしそうに撮影することを「シズル感を出す」といい、シズル(sizzel)とはステーキを焼くジュージューという音からきていて、肉そのものではなく「音」や脂の焼ける雰囲気という演出が重要なことをあらわしている。つまり撮影からコンテンツ制作に至る過程では、こういった演出テクニックを駆使していて、その結果が消費者が目にする実際の宣伝物の表現になっている。そもそも食品売場でも肉を新鮮に見せる専用の蛍光灯・LED灯などが使われているほどだ。

 

今はスマホのカメラでも綺麗な写真が撮れるようになって宣伝物にも使われているが、以前のカメラと同様に撮影用の照明器具などは必要になるし、撮影後の画像加工用に、前述の「湯気素材」とか、レタッチのソフトウェアが使われていて、気の利いた写真や映像に仕上げるのは、やはりプロの仕事になっている。

しかしカタログの表紙のような立派な印刷物を作るような特別な場合を除いては、すべての写真をプロのカメラマンに撮影してもらうわけにもいかない。なぜなら身近にあるデジタルサイネージというものは、日々のビジネスの助けとして、今売りたいものをフットワークを良く写真撮影して、使えるようにしたいからだ。そのために売場の裏側に小さな商品撮影ブースを置くところもある。

 

デジタルサイネージでも、紙のカタログであれば表紙に相当するスタート部分とかには、いつも固定のプロのシズル感あふれる写真・映像を使って、そこから先の個別商品の説明に関しては、スマホの写真が並んでいても違和感のないような全体のデザインをすれば、プロの絵作りと日常のフットワークを両立させることができる。

デジタルサイネージの運用の問題になるが、やはり売場に近いところの人がちょっとした撮影ができて、絵作りも理解するようになるのがスピーディーでスムースな展開になるだろう。幸いネット上にも写真の撮り方を簡単に解説しているサイトはいろいろあるから勉強できるし、実際にスマホ撮影でもしていると、そういうのを見るのが楽しくなってくると思う。

参考 : 写真撮影の勉強サイト

2017.12.29

お店のカラーを出す 始めるシリーズ③

デジタルサイネージをLED看板の延長上にとらえると、あまりインパクトのないものになてしまうことを以前に書いた。しかし逆にカラーの画面を自由に使えるからといって、派手で目立つ刺激的な表現に走ったらパチンコ屋の看板みたいになってしまうだろう。

せっかくデジタルサイネージに投資したのだからなるべく多くの人を振り向かせたい気持ちはわかるが、お店の本当の良さや雰囲気とは異なる印象を抱かれてしまうと、情報伝達メディアとしては逆効果な使い方になってしまう。むしろ多彩な表現ができるデジタルサイネージだからこそ、お店が顧客にアピールしたいことを明確にしておかなければ、統一感のないデザインを産んでしまうことにもなる。

 

これは新たに何かを作らなければならない大変な作業なのではなく、すでに看板やインテリアや印刷物などの表現に使われている要素を再整理すれば、とりあえずのデジタルサイネージの発注において意図を伝えることはできる。一般にはデザインの「テイスト」といわれるようなもので、いわゆる「~らしい、~ぽい」ものがベースになり、中華ならこんな感じ、ビジネスホテルならこんな感じ、などの雰囲気の上に、さらにそういった分野の中で、お店がどのあたりにポジショニングするのか(高級とか、カジュアルとか、お手頃とか)、を明確にするものである。

 

この「テイスト」に基づいて、配色(背景や基調色、使わない色なども)や使用するフォントなどを絞り込んでいけば、次々に新たなサイネージあるいは他のメディアを作っていっても、お店としての統一感を出すことができる。またデザイナさんや制作する人とのコミュニケーションも円滑になるし、素材の使いまわしもできるようになって、制作のコストもスピードも上げられるようになる。そのお店の独自キャラクターを登場させるというのもテイストを明確にするのに役立つ。

 

逆に新たなコンテンツを制作する度に、これらデザインに関することを考えて、あれこれ試行錯誤するのは大変な作業になるし、しかも結果としての作品もバラバラになりかねない。最初からデザインポリシーやテイストを決めてかかれないにしても、世の中の常識と過去にやってきたことをベースに、これからどのようなサービスやお店づくりを目指すのかを考えて、年という単位で徐々にデザイン性を高めていくような、ビジネスの成長に合わせたデジタルサイネージ活用を考えたらいかがか。