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2018.11.2

デジタルサイネージはオウンドメディアの第一歩になる

愚痴を言うわけではないが、アメリカで登場したデジタルとネットによる新たなコミュニケーションツールが日本では十分活用されなかった状況を多く見てきたので、アメリカと同じような宣伝文句で日本のメディアビジネスをすることの限界を感じる。そうはいってもコミュニケーションのIT化に遅れるとビジネスでも教育でも大変なビハインドになることはわかっているので、その日本固有の障害を探して突破しなければならない。

そもそもコミュニケーションのツールをデジタル化する技術的なことは世界共通なので、日本にハンディはないのだが、コミュニケーションしようという志向が日米で大きく違っているのだろう。Webのオウンドメディアのことを以前も取り上げたが、日本の企業には広告代理店に外注する部門・担当はいても、顧客とコミュニケーションしようという担当は少ないために、日本のオウンドメディアが高評価されないのではないか。

この画面キャプチャーはコカコーラのサイトで、コークについて検索するような人が対象ではなく、コカコーラ社がどういう会社なのかを理解してもらうことを主眼にしていると思える。そのためにどこかに同社に関連したエピソードとか記事を掲載しているのだが、編集部には10人ほど居るようだ。日本の会社でそういう広報的な実務部隊を社内に抱えているのは、今ならオウンドメディアで有名な会社くらいなのかもしれない。

 

別の言い方をすると、オウンドメディアができない会社は、広告代理店に外注したありきたりの広報しかできない。それでも広告代理店は一流のクリエーターを抱えているので、お金さえ払えば消費者に魅力的なコンテンツは作れるのだが、コンテンツが魅力的であることとビジネスの成否はイコールではなく、儲かった企業が税金対策で広報活動に金をかける場合もある。業績が下降するとすぐに広報予算がカットされることでもある。

では予算のない組織ではどうすればよいのか? これは今日では難しいことではなく、そこで働いている人の日常をメディア化する訓練をすればよいのである。つまり美味いメシを食う時にはスマホで撮影してインスタに上げる習慣のある人なら、自分の扱う商品の良い点を撮影する習慣をつける。仕事がうまくいった時の社内のよい雰囲気も撮影して残しておきたい。扱う商材について仕入先から聞いた面白そうなエピソードもその都度SNSに上げておくのがよい。お客さんから褒められたうれしい話も社内で共有できるようにするのがよい。このようにして一人一人がソース情報を溜めこむことがよいコンテンツ作りの土台になる。

社長や偉い人が威勢のよい話をすることをデジタルサイネージで流しても、きっと振り向いてもらえないだろうが、消費者目線で面白いコンテンツというのは現場の人が感じているはずで、その人たちの訓練をする場として考えると、デジタルサイネージはオウンドメディアの第一歩になるといえる。

2018.10.24

こんなところにサイネージがあったら...

こんなところにサイネージがあったら、有効に使ってもらえるのに、と思うことはよくあるが、たいていは先方に予算がない。パソコンでコンテンツを作るデジタルサイネージなら、予算はなくとも自分たちでコツコツとコンテンツを溜めていくことは可能かもしれないが、そういう動機づけをするには忙しすぎるとか人事労務上の制約が大きい。もし責任者が自分でヤル気を出せばやれないことはないのだが。

 

例えば私の住んでいるところにも小さな規模の保育園が増えていて、マンション立ち並んでいるところでは、1区画に一つくらいは設置されるようになった。だいたいは閉鎖した商店の跡地だったりして十分な広さや設備はない。保育士さんの人手も足りないだろう。こういうたくさんある保育園はだいたいは同じ時間帯に同じことをしている。ならば共通の保育番組を作ってネット配信すれば、個別にコンテンツを作らなくても使える。サーバーで保育園のID管理をしていれば、地域情報や自治体からの連絡などの個別の情報も入れられ、保育士さんの助けになるような使い方もできるだろう。

予算がないなら広告モデルでサイネージを提供したらどうかという考えもあるが、場所によっては広告は嫌われるし、また財布を持っていない保育園児を相手に何を売りつけるのか疑問である。これが美容院とか単価の高いサービスなら関連した商品も多くあるわけだから、広告モデルには向き不向きがある。もし広告モデルが可能でも、それをベースにコンテンツ提供を行っていくのは不安定で長続きしないということで、先方から信用されないかもしれない。

 

保育園向けのコンテンツとは、子供の遊びに関するものと、交通ルールや朝昼晩の生活全般に関して楽しく教えるものがある。すでに幼児本はいくらでもあるので、サイネージのコンテンツも自作しようと思えばできるはずだ。でも幼児本に専門の出版社があるように、子育てに何らかのビジョンをもって一貫したコンテンツ提供ができるバックボーンも必要である。

マルチメディアが登場してもう30-40年になるが、紙の出版社がデジタルメディアを提供するとか、出版社と連携してデジタルメディアを制作することは大変困難だった。その第一は収入モデルが違うからで、デジタルコンテンツのほとんどは書籍のようにまとまった収入にはならず、小銭がチャリンチャリンとなるので、これでは投資の回収の目途がたたないと判断されてしまう。

 

コンテンツビジネスでは紙からネットに移行したモデルは、情報誌、地図、レシピ、など多くあり、これからもどんどん移行は進むだろう。デジタルサイネージもそれに合わせて新たな利用分野が生まれてくることになろう。

2018.10.16

いまだコンテンツは手探り状態

街には多くの動画表示がされてはいるけれども、それをメシの種にしようとしている人から見ると、あまり納得のいくデジタルサイネージには行き当たらないのではないだろうか。サイネージのハードウェアを購入したところは、コンテンツとして動画を流すか、支給されたテンプレートの写真や文字を差し替えて流すことが多かっただろう。特にスタンドアロンの店舗用サイネージの場合は、購入時にいろんな業種のいろんなシチュエーションに合わせたテンプレートファイルがいっぱい提供されていて、それを参考にすれば誰でも簡単にコンテンツを作れると教えられた。

だがこの次のステップとして、本当に自分のビジネスのためには、どんなコンテンツを作ったらいいのだろうかと考えると、先には進めなくなってくるところが多い。場合によってはサイネージの効果がわからないから止めてしまい、それ以前のポスターや掲示でもいいではないか、という逆行も起こっている。

 

これはデジタルサイネージを導入の際の基本設計が曖昧なことからきているのだろう。だからコンテンツ制作に於いて何を満たせばよいのか?というのが分からなくなってしまう。そもそもサイネージを売る側は、いろんな使用法や事例を紹介して、いいとこどりのプレゼンをしているのかもしれない。しかし必要なのは利用者が自分にとって必須のことを明確に意識しているかどうかだ。

街のサイネージを見ると、そのシステム出身によってそれぞれの利用分野がある。これらが大雑把なサイネージの用途でもある。それを考えるだけでも自分にとって必要なサイネージが何かが浮かんでくるように思える。

家電からは大型テレビ

番組をスケジュールして配信する放送局の送出システムに似せて配信管理のシステムが作られた。広告配信のようなもので制作面と運用管理は別である立場だろう。クラウド型サイネージはこれに近いものが多い。

電子POP

商品とともに棚に収まるような7~10インチの小さな液晶を使い、特定商品の説明的な内容を反復していて、もともとは販促ビデオなのでコンテンツもその延長にある。コンテンツはSDカードの入れ替えなので特に知識は不要。

表示器

銀行や病院では表示装置として他のコンピュータシステムから更新情報を受け取って表示する用途がある。その合間に他のコンテンツを反復表示しているが、ベースが専用システムであるために、販促的サイネージとしての運用の利便性はいまいちかもしれない。

案内用のタッチパネル

問合せを画面タッチで行うインタラクティブ型のサイネージがある。誰も操作しないときは他のサイネージと同様にコンテンツを流せるが、画面にタッチして操作してもらう工夫が必要だ。ボタンなどの選択肢を絞らないと、通りすがりの人に操作してもらうのは難しい。

一方で次のような見方もできる。

・大型テレビ

営業時間全体にわたってコンテンツの適切なスケジューリングをするには、多くのコンテンツを埋め込まなければならず、そこまでの販促は店舗レベルではなかなかやりきれない。

・電子POP

数が多くなると取り扱いが大変になる。通常ハード・ソフトともいろいろなところからの持ち込みであるため、ネットワーク化して一元的な運用はやりにくい。店舗側では効果があるのかないのか、わからず放置しているところもあるだろう。

・表示器

システム屋さんが作ったものが多いので、コンテンツもWindowsで簡便に作るように考えがちであり、クオリティの高い広告にはなりにくい。HTMLコンテンツを扱えるようになっていると自由度は高まる。

・タッチパネル

複雑な操作は向かないし、コンテンツごとにユーザインタフェースも変わって不統一になりかねない。ここでユーザインタフェースで苦労するくらいなら、いっそQRコードでも表示してスマホにバトンを渡した方が利便性は高いかもしれない。ということで今後は一般化して広がるかどうかは疑わしい。

 

というような現状なので、一つ動画コンテンツを作っておいて、いろんな局面に利用してもらうようなふうにはなかなかいかない状態でもある。

 

2018.10.5

デジタルサイネージはメディアになれるか?

デジタルサイネージを広告モデルで回そうという試みは増えているが、それができるのは元々駅周りとか人目に付くところに看板を設置していたような広告代理店によるものが多い。そこでは以前からポスター・看板のお客さんが居たわけだし、掲示場所の価値もお客さんには認識されされているから、デジタルのメリットを付加すれば新しいモデルはできるのだろう。表示灯株式会社の4K画面『ハイレゾ・ナビタ』などは開発コストもかかっているだろうが、駅広告における同社シェアに基づくとビジネスの算段はつくのだろうと思う。こういう背景も無しに技術先行で広告モデルをするのは無謀だろう。

掲示場所の価値というのは、どういう人にどれくらい見てもらえるかという露出数が鍵だが、ポスターなどの場合はアルバイト君が近くに座って通行人の数をカチャカチャとカウントしている姿に見覚えのある方も多いだろう。ビルの壁面の大きなLEDビジョンの場合はテレビカメラで通行人の様子をモニタできるようにしていて、今ではソフトウェアでどの時間帯にどれくらいの人が通るかを自動カウントするものもある。こういうデータ化をした媒体資料をもってプレゼンしないと大手の広告はとりにくい。

 

要するに広告メディアとしての価値は、ちゃんと露出数をカウントできるか、またその真正性は大丈夫か、過去にさかのぼってトレーサビリティ(雑誌の場合は印刷会社の印刷部数証明とか)はあるか、などの要件を満たせるかどうかで大きく変わってくる。昔から町の広告代理店でもいろいろな広告露出の開発をしていたが、多くは『きっと着目される』という期待で終わっていて、『効果がなかった』ということで打ち切られるということを延々と繰り返してきたと思う。デジタルサイネージの場合はディスプレイの近くにカメラさえつければ、監視カメラのアプリも進んでいる今日であるから、カウントはできるようになるだろう。そうなればメディアの仲間入りといえる。

 

しかし、広告の営業とか運用を考えると、個々に設置されているデジタルサイネージごとに広告営業をしていたのでは割があわず、また広告出稿する方も付き合ってはいられない。街の至る所にあるサイネージ設置のプロフィールを一覧化して、広告出稿と広告媒体側のマッチングが容易にできる仕掛けが必要で、以前はそれが広告代理店であったわけだが、ITの今日では Airbnb Uber といったような無人化したマッチングサービスが出てくることになるのではないか。

 

とはいっても、それはすぐのことではないから、今すぐ広告モデルのサイネージをするとなると、不特定多数の広告出稿主を相手にするのではなく、むしろ特定分野に限定して商品とコンシューマのマッチングをするところが成功している。紙の媒体でいえば専門誌とか業界紙といったものだろうか。こういう分野はすでにモバイルマーケティングで行われているので、それを引っかけてサイネージの設置ができないかと模索している動きもある。つまりニッチなモバイルマーケティングと手を組んで売り場や店舗のデジタルサイネージで最後のクロージングに持ち込むのが望ましい。

サイネージネットワークは広告ビジネスをするわけではないし、その仕組を作るわけでもないが、そういうところを一緒にモノを考えていくようにならないといけないだろう。(例えば…というのはまたの機会に)

 

2018.9.28

カラーバリアフリー

サイネージネットワークのある文京区のWEBサイトを見ると、マルチリンガル対応になっていて、『English、中文簡体、中文繁體』が切り替えられるようになっている以外に、『音声読み上げ』と『色合い 標準:青地に黄色:黄色地に黒:黒地に黄色』の選択ができる仕組みがある。
新宿区、豊島区、練馬区なども同様の対応がされているが、実現方法はバラバラで、多くはホームページの記述そのものによるものではなく、新宿区は民間のサービス(リードスピーカー・ジャパン株式会社)を、練馬区は日立のアクセシビリティ・サポーター「ZoomSight」を導入して実現している。

 

この標準配色のほかに、ハイコントラストの色合い(3パターンを用意)に簡単に切り替える仕組みは、色の見え方が一般と異なる(先天的な色覚異常、白内障、緑内障など) 人にも情報がきちんと伝わるよう、色使いに配慮したユニバーサルデザインの一環であって、カラーユニバーサルデザインとも呼ばれ、印刷物でも近年は非常に意識されている分野である。

一方新聞などは基本的にモノクロであったのが、カラーテレビの時代になって天気予報での気温分布・選挙速報などでの色分け表示が、色覚異常者に識別の難しい色の組み合わせが目立ったことから、今世紀になって「色覚バリアフリー/カラーユニバーサルデザイン」の啓発活動が始められ、無意味な色の濫用を避け、 色によって情報の伝達が妨げられないよう啓蒙されはじめた。レーザポインタの赤い点も視認が困難な人が居る。駅の案内など公共空間分野では、札幌市が色弱者対策を進めたのが有名だ。

 

これはゲームを含めコンピュータの画面すべてに当てはまることだが、まだ対応は少なく、文京区などは先駆けであったと思う。その後他の区に及ぶに際して、民間の会社がソリューションを提供しはじめて冒頭のような状況になったのだろう。
文京区の標準配色は明るい灰色で、これは弱視者には通常見づらく、黒地に白文字が読みやすくなるという。色弱者にもいろんなタイプの人がいるので、黄色地に青字のウェブサイトが見やすいのと反対に、先天性色弱者は青色背景が見やすくなるなど個人差が大きいので、ウェブアクセシビリティ規格「JIS X 8341-3:2016」ではスタイルシートで配色変換ができるようにするのが望ましいとされていて、文京区はスタイルシートを選択できる構造にした。

 

このウェブアクセシビリティの規格は強制ではなく、可能な範囲でお願いしますというものなので、デジタルサイネージでやらなくてはならないわけではないが、その用途によっては考えておかなければならない事項だろう。

ただ上記の色弱者の個人差があるので、どのような配色をするのがベストなのかはいえず、現在の各区の取り組みも試行のうちなのだろうが、ガイドラインとしてはベストよりも避けるべきことは何かという意識を最初に持つのがよい。これは伝えるべき重要なことは高コントラストにするとか、赤緑の対比は使わないとか、きっといくつかポイントがあると思う。

ウェブアクセシビリティ規格の元であるW3Cには、明度差や色相差に関してのガイドがあり、次のような式が出ていて、明度差は125、色相差は500にするといい、文京区の色合いはそれを満たしているという記事があった。

 

(maximum (Red value 1, Red value 2) – minimum (Red value 1, Red value 2)) +
(maximum (Green value 1, Green value 2) – minimum (Green value 1, Green value
2)) + (maximum (Blue value 1, Blue value 2) – minimum (Blue value 1, Blue value
2))

 

デジタルサイネージでも明度差や色相差を検討するときには使える式ではないかと思う。