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2018.4.27

見えない用途

デジタルサイネージを設置する目的はお客さまに何らかメッセージを伝えるためであることが多いが、その他に社内の情報共有など外部の人からは見えない用途もかなりある。情報共有に関しては組織的にグループウェアが使われていたり、メールで一斉同報されるとか、ネットでのアプリというものなど、いろいろな手段が使われているにもかかわらず、あまり見られていないという現実もあり、これで十分というものは無い。それで昔ながらの掲示板というのも捨てられないでいる。

社内掲示板を撤廃するために投資してデジタルサイネージを導入してもらえるとは考えにくいのだが、複数個所に同じ内容を掲示したい場合には電子ディスプレイは有用だろう。ただコンテンツに手間暇をかけることはできないので、情報共有アプリの画面を大きくして映し出すとか、プリントのPDFを表示させるようなことになろう。

掲示板に載せる情報は種々雑多なので、だれがどうコントロールするかは難しい問題だ。PCとかカメラ(含む監視カメラ)が4種程度なら、HDMI切替機のようなものでローテーションさせることはできる。

業務上欠くべからざる事柄のためには、朝礼とか、各部署での朝のミーティングなども行われている。これをサイネージのボードの前に集まって行って、やはりPCとかWebとかの情報を見ながらフェーストゥフェースで情報共有するためにも便利である。この場合もミーティングで使う情報を事前にどこにどうセッティングしておくかが課題になる。

デジタルサイネージによる情報共有は店舗などで、個人の机はなくてパソコンも見られない職場環境では、非常に有益な方法になる。開店前や閉店後のミーティングとして、あるいはアルバイトやパートに仕事を覚えてもらうためのマニュアルとして使われることがある。器具の使い方や、閉店後にどのように掃除し片づけるのかといった事柄をあらかじめビデオ化しておいて、毎回繰り返して見ることが出来るようにすれば、言葉の通じにくいアルバイト君にも伝わりやすいだろう。

サイネージを多目的に使う場合に、すべてコンテンツ制作が必要になると、頭を抱えることが多くなって、実際には取り組めなくなる公算が大きい。しかしコンテンツ制作しなくても、前述のようにPCやWebなどの異なるソースの切り替えをするだけなら、千~何千円のHDMIセレクターで済んでしまうかもしれない。

この考え方を応用すれば、午前午後の休憩時間のリフレッシュとしてテレビ体操を放映するとかもできる。学校で教室の利用予定の表示のついでに学内ニュースを伝えるのなども、システム化されたスケジュール管理をPCから表示する出力とは全く別系列にニュースを作ってよいので、取り組みがやり易い。

さらに商業的なサイネージに於いても、通行人が近くに居ない時にはロゴなどあまり変化のない看板的な表示をしておいて、人が近付いてきたら切替えてもっと動きのあるものを表示させて、「おやっ!」と思わせるようなこともできる。これは焦電センサーとか人感センサーというもので可能になるのだが、こういった小物の使い方はまた別の機会に紹介したい。

2018.4.20

アナログビデオとデジタルビデオ

デジタル放送やデジタルビデオに囲まれた現代人はデジタル映像に眼が慣れてしまっていて、アナログ時代のような画質差を云々することはめっきり減ってしまった。しかし何かの理由で古いアナログビデオを見ると違和感を覚えてしまうし、それらと今日のデジタルビデオソースを一緒に扱わなければならなくなると困惑するものだ。それはアナログビデオよりもデジタルビデオの方が画質がよいと思われる場合が多いからだが、実は必ずしもデジタルの方がきれいなわけではない。
テレビ放送の国際規格を決める委員会をNTSCといい、アナログのコンポジット信号としてもおなじみの名前であった。ここで色域とかガンマなど映像の規格も決められていて、昔のブラウン管テレビに走査線が並んでいた画面は【BT.601】といい、今日のパソコンやスマホのRGBであらわすと、0-255の間の16-235までしか使っていない。だからアナログをデジタル化したものは非常に明るいところや非常に暗いところには情報がないままになってしまって、明度が中心に寄った締まりのない映像になってしまう。これをちゃんと補正するとデジタルに見劣りないものになる場合がある。

 

そもそもパソコンで広く用いられている【sRGB】というカラースペースは、アナログなNTSCの色域の72%をカバーするものと定義されていて、アナログのNTSCの方が鮮やかな色情報を持ち得る規格なのである。しかしアナログビデオを新品の磁気テープに保存して再生すると、最初はバッチリきれいでも、アナログ記録では再生を重ねるごとに画質が劣化していく。一方映像をデジタル信号にして保存すると、0か1かの組合わせの情報は変化せずにいつも同じなので、テレビカメラがデジタルなら、そこで得られた色信号は、視聴者の画面表示までずっと変わらないことになる。つまり色に関するカメラの特性と画面の特性が合っていれば、被写体に照明された色を視聴者が見ることが出来る。これがいわゆるデジタルの鮮明さの理由である。
この【sRGB】は【BT.709】というハイビジョンの規格に合せているので、パソコンとデジカメのjpgなどとハイビジョンはほぼ似た世界になっている。これがRGBを0-255の間の値にしているので、アナログビデオはそのままでは使いづらいことになってしまった。

 

印刷の世界ではカラースペースは【AdobeRGB】というのが使われていて、これは【sRGB】よりも緑方向が広く、NTSCに近いもので、デザイナさんや製版印刷関係の方にはおなじみなので、今のグラフィック制作の中心にもなっている。だからAdobeのグラフィックソフトを使っている方は、あまり意識せずにデジタルビデオとかデジタルサイネージの仕事もしているし、両者の差であまり問題になることは実際にはないように思う。
アナログの時代の家電売り場では、テレビの色味は機種やメーカーが異なっていると差が出ていて、どれが綺麗?という売り方/買い方があったのだが、デジタルではどこもだいたい似たものとなったのは、放送や家電では個々のシステムの色合わせの土台となる規格が築かれてきたからだ。かつてはWebでの通販の商品の色は信用できないのが相場だったのが、今ではスマホでアパレルが売れる時代である。これがデジタル化の大きな恩恵で、一度作成したビデオソースがいろんなことに使えるようになった。

 

しかし、このパソコンとデジタルビデオとグラフィックソフトの蜜月ともいえる関係は、今後ずっと続くものかどうかはわからない。それは4k8k時代の色の規格は【BT.2020】という【AdobeRGB】よりも色域が広いものが標準になっていて、「自然界に存在する色はほぼカバーしている」といわれている。4k8kは単にデカいだけでなく、色の世界の革新にもなり得るもののようだ。だが現状ではカメラから編集システムからプロジェクターを含めた再生環境まで完全に【BT.2020】に対応しているわけではなく、既存の機器やシステムも使いつつ4kのデモが行われているので、【BT.2020】の真価はまだ見ることができないのだろう。

参考:放送・シネマ最新規格ITU-R BT.2020
http://cweb.canon.jp/v-display/lineup/dp-v2410/feature-performance.html

参考:4K・8K超高精細度テレビジョン放送の標準化動向 – 日本ITU協会
https://www.ituaj.jp/wp-content/uploads/2016/01/2016_01_10_spot1.pdf

2018.4.13

画面が大きいと何がいい?

この10年のデジタルサイネージを振り返っても、32型→40型→55型と大型化する傾向にある。さらにマルチでその3倍4倍も簡単に設置できるようになってきた。映像ソースも4k8kに向かうのだろうが、こちらはコンピュータでCG制作するならよいのだが、カメラから編集までのところはまだ手ごろな価格にはなっていないので、相当予算のつくところでないと導入はできていない。

そもそも画面を大きくするのは何のためだろうか? 迫力? 目立つから? これにはちゃんとした研究開発の積み重ねがあって、むやみに映像のスペックを上げてきたのではないことがわかる。論文としては、「高臨場感を生んだハイビジョン画面効果の研究」(https://dbnst.nii.ac.jp/pro/detail/241)に事の起こりが書かれているが、要約すると次のようになる。
HDTV(High Definition Television)は1960年代に次世代テレビの研究としてNHK放送技術研究所で始まり、1980年になると前述の研究によって、テレビの画面を横方向に大きくして広い視野で映像を見たとき、画面内の映像から受ける心理的な感覚・知覚量が大きくなって表示された映像空間に引っぱられるような効果、即ち臨場感効果が得られることが明らかになった。
これは誘導効果と呼ばれた。当時シネラマという3本のフィルムを横につないで撮影・映写するものがあって、崖っぷちに人が立つ映像を見ると身のすくむ思いがするような臨場感があった。

これを数値的にとらえる実験が当時アナログな方法で繰り返された。画面の左右両端を見込む視野角が20度を超えると次第に映像の空間に主観的な座標が誘導されるようになり、前述のように映像の空間に入ったような感覚、つまり臨場感の効果を心理物理量として捉えた。これをもとにHDTVはこの効果が顕著になる視野角30度を、望ましい観視条件とした。この理屈は今の8kにも引き継がれている。画面の縦横比は映画の縦横比も考慮して9:16 に国際統一された。

画面両端の視野角が30度での視距離は、画面の高さの3.3倍となり、画面高さを75cmとすると、2.5mになる。視力1.0の人の視覚の分解能は1分といわれていて、それを越える縦画素数としてHDTVの縦は1080にされた。横画素数は計算すると1920となる。

4k8kはHDTVの延長上に、さらに視野角の広い映像を提供するもので、それによって誘導効果が高まる、つまり臨場感がマシマシ・モリモリになることを狙っている。だから画面が大きく高解像になっても、遠くから眺めていたのではその効果は発揮できず、映画を前列で観賞するような視聴環境に変えなければならない。

 

これに関連して比較すれば、ビル壁面のLEDビジョンは確かに大画面だが、人は離れて見ているので 視野角は広くならない。つまり臨場感を出すことを狙っているものではない。単に街角で目立つことで目的は達成されるのだろう。

屋内のデジタルサイネージを大型ビジョンにするには設置の困難さを伴うというか、結構邪魔扱いされたりするものだが、裏腹に大画面を近くでみるということで臨場感・没入感をだすようなコンテンツには向いているということになる。その意味で屋外の大型ビジョンとはコンテンツ制作の考え方は異なる面がある。

2018.4.6

ディスプレイの金額差とは?

画面が40-50型もある大型液晶ディスプレイが通販で数万円で手に入る。それらと街で看板のように使われているデジタルサイネージのディスプレイはどこが違うのか? ビデオのインタフェースはVGAだったりHDMIだったりで同じだ。パッと見てわかるのは筐体の頑丈さの違いだろう。実際にスタンド型のデジタルサイネージでは、通行人がポンと軽く当たったくらいでは何ともないように作られているが、茶の間のテレビやパソコンのディスプレイは人がポンと当たることは想定していないであろう。

よくデジタルサイネージの寿命はどれくらいですかと聞かれると、2万時間から5万時間程度だと言われて、これは1日12時間使用し続けた場合に5とか10年の耐用年数になる。しかしそれ以前にLEDや液晶の劣化によるコントラスト低下や輝度ムラの増加により、寿命と判断されてしまうことがある。液晶の寿命とLEDの寿命はどちらが先かというは一概にはいえないだろう。LEDにかなり無理を強いて使っていればLEDの劣化が早いことが考えられる。
製品の耐用年数に民生品2万時間、プロ用5万時間の2段階があるのも、1日当たりの使用時間と関係していて、数時間つけているのか、十数時間つけているのかという用途からくるもので、一般に前者が家庭用とかコンシューマ向けで、後者が業務用と区分されていると思う。つまりこれが冒頭の民生品テレビと業務用ディスプレイの差でもあろう。

だから顧客がやってくる業務時間内に問題が起きて手を取られたくないなら業務用を使い、ちょっとうす暗い制作現場の補助用とか、ダウンしている間がちょっとあっても構わないなら、民生用品を使うという判断になるのだろう。実際のところ下の写真の右下ピンクが家庭用大型テレビで、下に足がついていて、背面に取りつけ金具のネジ穴が200mm x 400mmの矩形上に空いている。

一方残り3つはデジタルサイネージで、鉄のフレームなので重いし、みな両サイドに取っ手がついている。ネジ穴は400mm x 400mmあるいはそれ以上にもなるようになっている。この金具のための穴には規格があって、デスクトップパソコンモニタでも100mm x 100mmのものを良く見かけるが(Macは除く)、それと同様にモニタスタンド・アームや壁取りつけのためのVESAマウントというもので、大雑把には図のようなことになる。

サイズが大きくなるに従ってネジも太くなり、何十kgものディスプレイを支えられるようになる。また取り付け金具もさまざまなものがあり、スタンド形式はごつくて高いが、壁などに付けるものは安価である。レールに複数のディスプレイを並べられるものもある。

つまりデジタルサイネージは、ディスプレイメーカーが何処であったとしても、若干サイズに大小の違いがあっても、取りつけや使い方はVESAに準じたいろいろな金具・器具が豊富に使えるようになっている。値段の高低はあるものの、希望する設置がやりやすいはずだ。ディスプレイそのものは、天井から吊ったり、壁に並べたり、スタンド以外の多くの設置の仕方を想定して作られているのに対して、最初の写真の家庭用テレビもVESA的なネジ穴はあるものの、いろんな場所での取りつけ例は乏しいと思われる。

ディスプレイの液晶やLEDの寿命以外に、設置による環境の問題が予想される場合がある。横や後ろから日光が当たって機器の温度が数十度に上昇してしまうと、中のLSIが気絶して何も映らなくことがある。この場合にしばらく消してさませばまた映るだろうが、電子回路部分の寿命は縮めてしまう。こういった温度上昇に配慮したツクリになっているかどうかも、民生品と業務用の違いだろう。

2018.3.30

設置・工事のことも忘れずに

30年近く前に、4階建て2棟の職場の各フロアにイーサネットのケーブルを敷設することになって、工事立会いのために日曜出勤をしたことがあった。すると下の写真のような感じでトラックがイエローケーブルのドラムを積んでやってきて、工事の人が各床から天井裏にドリルで穴を空け、天井には点検口の穴を空け、各フロアをぐるぐる廻って、一筆書きのようにイエローケーブルを設置していった。ケーブルのところどころには機器を接続するための装置をつけて、いわば電気のコンセントのようなものをつくるわけだが、イエローケーブルは床をブチ抜いて下から生えてくる場所もあれば、天井から下がってくるところもあった。それらをカバーする工事も行われた。

今日の有線LANというのは、電話のケーブル工事に間借りするつもりで線材や接続口が考えられているので、イエローケーブルのような大げさな工事は不要になったが、30年近く前は線を敷くだけの工事に200万円かかってしまった。有線LANになってからも何度も工事というのは必要になって、もう電話の配管スペースに通信線が入らなくなってしまい、屋外に配管ダクトのようなものをつけなければならなくなったとか、HUBの増設に次ぐ増設やフロア配置の変更などなんだかんだで、2~3年に1度は通信工事も考えないと、線がぐちゃぐちゃな環境になったものだ。今では無線LANが主流になったので、配線はだいぶ人目にはつきにくくなった。

 

無線LANとはいっても機器には電源が必要なので、今度は各フロアの4隅にアクセスポイント置きたかったので電気のコンセントが必要になった。今日では監視カメラとか見えない所でも電源工事が必要なことが増えている。デジタルサイネージも御多分に漏れず、機器以外に電源線とか無線LANのアクセスポイントの電源などが必要になる。もし大きなディスプレイパネルを何十台も使う場合には、電源の契約から見直さなければならないかもしれない。

 

冒頭のイエローケーブルの話も、インターネットの話ばかりしている時には工事のことなど頭になかったのが、稟議が通ってから結構大変なことになりそうだということで慌てた記憶があり、何とか予算に納まるような業者を探し回った。また日曜出勤して工事に立ち会ったこともよい勉強になった。イエローケーブルというのは簡単には曲がらなくて、当初考えていた場所に接続口が設置できないということもあった。工事が伴うことに関しては事前に専門家に見てもらってからプランを作った方がよいことがわかり、後の有線LAN・無線LAN・電気コンセントの付け替えなどがスムースに進んだ。

 

デジタルサイネージを1台だけ導入するのなら大型テレビを購入するのとさほど変わらないが、人の集まるところや展示をする場所を対象とするならば、まずどこらあたりに何台ほどという配置の『密度』を考えなければならないし、それが一度に設置できるのか、段階的に増やしていくのかというプランも必要かもしれない。いずれにせよ、ある程度先のことも考えておいた方が工事が2度手間にならなくて済むことにはなりそうだ。
またインテリアとか室内の見栄えという点からもどういう工事をするかは変わってくる。デジタルサイネージのコンテンツとは別に、設置の見栄えをクライアントがどう考えているかも知っておく必要がある。

 

サイネージネットワークでは、設置と付随する工事に関するお仕事は専門業者のキラカスタムサポート株式会社(URL http://kirasapo.jp/)にお願いして、一緒に打ち合わせに行ってもらったり、お互いに相談して提案をすることを行っている。またキラカスタムサポートさんは365日24時間全国どこでも対応ができるネットワークをもっておられるので、北海道から沖縄まで対応するサイネージネットワークにとっても、運用開始後の変更やメンテナンス面でも安心できるパートナーさんである。
むしろサイネージネットワークはコンテンツ制作会社のグループなので、設置に関しては相談相手になっていただいているといった方がいいかもしれない。いろいろな事例をお持ちなので、それらも追って紹介していこうと思うが、単なる工事屋さんではなく、プロジェクト全体に関して、それを良い方向にもっていくように、事前に調査やヒヤリングの段階から協力してもらえ、発注者に安心してもらえるような仕事をしておられる。

仕事の規模では、展示施設にタッチモニタ30台を置いて、展示に関する写真・画像・インタビュー映像を流すような仕事もされた。後のメンテナンスのために、地元の業者によって設置・電気工事の対応してもらうとか、サーバー経由でのコンテンツの一括管理・運用とか、機器販売よりも実稼働後のことに配慮した方法で、うまく仕事をされておられる。

実際にはどんなプロジェクトも予算の範囲でどのように配分するかで悩むと思うが、デジタルサイネージに関しては最初にハードウェアを決めて残りの予算でコンテンツや工事に割り当てることが多かった。しかしハードウェアの価格が下がってきて、またサポート体制のある主要メーカー間の差がなくなってくると、むしろハードウェアの発注先は最後に決めて、流動的なコンテンツと設置から考え始める方が長い目で見るとスムースに行くのではないかと思う。いいかえると、どんな目的で、どんな内容を、どのように表示するか、などであり、これらに迷った時にはぜひご相談ください。