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2018.9.28

カラーバリアフリー

サイネージネットワークのある文京区のWEBサイトを見ると、マルチリンガル対応になっていて、『English、中文簡体、中文繁體』が切り替えられるようになっている以外に、『音声読み上げ』と『色合い 標準:青地に黄色:黄色地に黒:黒地に黄色』の選択ができる仕組みがある。
新宿区、豊島区、練馬区なども同様の対応がされているが、実現方法はバラバラで、多くはホームページの記述そのものによるものではなく、新宿区は民間のサービス(リードスピーカー・ジャパン株式会社)を、練馬区は日立のアクセシビリティ・サポーター「ZoomSight」を導入して実現している。

 

この標準配色のほかに、ハイコントラストの色合い(3パターンを用意)に簡単に切り替える仕組みは、色の見え方が一般と異なる(先天的な色覚異常、白内障、緑内障など) 人にも情報がきちんと伝わるよう、色使いに配慮したユニバーサルデザインの一環であって、カラーユニバーサルデザインとも呼ばれ、印刷物でも近年は非常に意識されている分野である。

一方新聞などは基本的にモノクロであったのが、カラーテレビの時代になって天気予報での気温分布・選挙速報などでの色分け表示が、色覚異常者に識別の難しい色の組み合わせが目立ったことから、今世紀になって「色覚バリアフリー/カラーユニバーサルデザイン」の啓発活動が始められ、無意味な色の濫用を避け、 色によって情報の伝達が妨げられないよう啓蒙されはじめた。レーザポインタの赤い点も視認が困難な人が居る。駅の案内など公共空間分野では、札幌市が色弱者対策を進めたのが有名だ。

 

これはゲームを含めコンピュータの画面すべてに当てはまることだが、まだ対応は少なく、文京区などは先駆けであったと思う。その後他の区に及ぶに際して、民間の会社がソリューションを提供しはじめて冒頭のような状況になったのだろう。
文京区の標準配色は明るい灰色で、これは弱視者には通常見づらく、黒地に白文字が読みやすくなるという。色弱者にもいろんなタイプの人がいるので、黄色地に青字のウェブサイトが見やすいのと反対に、先天性色弱者は青色背景が見やすくなるなど個人差が大きいので、ウェブアクセシビリティ規格「JIS X 8341-3:2016」ではスタイルシートで配色変換ができるようにするのが望ましいとされていて、文京区はスタイルシートを選択できる構造にした。

 

このウェブアクセシビリティの規格は強制ではなく、可能な範囲でお願いしますというものなので、デジタルサイネージでやらなくてはならないわけではないが、その用途によっては考えておかなければならない事項だろう。

ただ上記の色弱者の個人差があるので、どのような配色をするのがベストなのかはいえず、現在の各区の取り組みも試行のうちなのだろうが、ガイドラインとしてはベストよりも避けるべきことは何かという意識を最初に持つのがよい。これは伝えるべき重要なことは高コントラストにするとか、赤緑の対比は使わないとか、きっといくつかポイントがあると思う。

ウェブアクセシビリティ規格の元であるW3Cには、明度差や色相差に関してのガイドがあり、次のような式が出ていて、明度差は125、色相差は500にするといい、文京区の色合いはそれを満たしているという記事があった。

 

(maximum (Red value 1, Red value 2) – minimum (Red value 1, Red value 2)) +
(maximum (Green value 1, Green value 2) – minimum (Green value 1, Green value
2)) + (maximum (Blue value 1, Blue value 2) – minimum (Blue value 1, Blue value
2))

 

デジタルサイネージでも明度差や色相差を検討するときには使える式ではないかと思う。

 

2018.9.21

サイネージのニーズ変化を考える

タイムセールとは和製英語で、time sale と表記しても欧米人には伝わらないらしいが、毎日スーパーなどでは行われている販促である。正確に表現しようとすると時限セールということだろうか。どこか地域を指定すると、いつどこでどんなタイムセールをしているのかを調べるアプリが出るほどに盛んである。店舗だけでなくECでも行われている。

ECの場合は公開時間をあらかじめスケジューリングしておくだけのことだから準備は楽だろうが、スーパーのようなところだと、在庫のはけ方によって、また当日の天候などによって、時限セールに出すものや、売り方の調整を日ごとにしなければならない。扱うitemについては予定があって、POPなども事前にある程度は用意はできるのだろうが、デジタルサイネージにすると『あと何個!』というカウントダウンに近い表示まで可能かもしれないことを以前に書いた。

 

つまり競合店と時限セールの競争が起こった時に、デジタルサイネージのようなダイナミックな表現手法を持っているところが優位に立つかもしれない。たいていのオンライン型とかクラウド型サイネージはスケジューリング機能をもってはいるが、コンテンツを作ってアップロードするところとかはシステムにはなっていない場合が多い。もし時限セールの競争が起こりだしたら、ここをなんとかしたいという要望がいろいろでてきそうだ。

単純なところではスマホで撮影して即サイネージにアップしたいとか、それも売り場の動画をサイネージの画面に埋め込みたいとか、既存のCMSでは不可能なものが考えられる。今のところ例外的画面はHTMLで作って、フルHDのブラウザで表示するとすると、ほぼ何でもできる。それがCMS・配信システムに取り込んでサイネージコンテンツの一部として表示できないにしても、HMDI切替機などを使って、ソース映像の切り替えをしてしまえば手動/半手動でできる。

しかしこんなサイネージの実験をしてくれる業者がどこにいるのだろうか? この1年の間にサイネージネットワークにかなりあった問い合わせは、『コンテンツはあるのだが、更新作業をやってもらえないか』というものだった。だがコンテンツ制作については料金の目安もある程度一覧化できるものの、更新作業のような運営面については今のところ料金の尺度はない。昔から取引をしているお客さんであれば、実際に作業にかかった工数を理解してもらえて、料金の提示もできるのだが、ネットやメールのやり取りだけでは費用面の交渉が行いにくい。そこでコンテンツの加工も含めてどのくらいの程度と頻度があるなら、月間いくらという丸めた運用代行のサービスを考えていた。

 

おそらく運用代行が軌道に乗ったならば、その運用をさらに効率化とか迅速化するために、次なるシステム的な運用提案をすることになって、そこで前述のような今までにない実験も可能になるのではないかと思う。この場合は運用を請け負う側が、クライアントの仕事の性質をすでに知っているので、必要な品質・タイミングを実現できるだろう。もし過去に取引がなかったならば、クライアントのお仕事に対するヒヤリングから始めなければならない。もしろん今でも求められればそのようにできるのだが、更新作業の代行を問い合わせて来られる方は、そこまで大げさには考えておられないと思える。

 

デジタルサイネージの普及とともに、表示内容も表示方法も運用も多様化してきて、メーカーのソリューションの押し売りでは対応できない局面が増えていく。サイネージネットワークとしては、料金が幾らなら引き受ける/引き受けない、という杓子定規なビジネスではなく、クライアントとともに試行しながら、クライアントの独自性の発揮できる運用方法を開発していきたいと思う。

2018.9.14

コンテンツ制作のディレクション

デジタルサイネージのコンテンツは販促ビデオの流用であったり、ポスター・掲示物の借用など、制作のコストも考えてなければ、何の企画も思いつかないままの、無目的といってもよいような場合もあり、効果もないわけだから、そのうち当事者も飽きてサイネージ自体をやめてしまうようなことも過去にはあった。
逆に何らかのインパクトを与えるメディアとしてデジタルサイネージを位置づけるならば、目的に沿ったディレクションをすることは必須であるが、尺の短いサイネージを短期間に更新し続けるとなると、ビデオ映像を作るような専門家に頼んで手間や費用かけて制作することはできない。

 

デジタルサイネージのクライアントの方も、よくて印刷物の発注経験があるかどうかだろうから、コンテンツ制作のディレクションは不案内だろう。ビデオのように映像専門家を間に挟む場合は、クライアントも制作現場もディレクターの意見を聞いていればよいわけだからまとまりやすいが、そんな人が居ないとなるとクライアントと制作現場が相談しあって進めることになる。以前の記事『動き方を指す用語』はそんな中で使ったものであった。制作側の営業マンがディレクターの代役をする場合もあるが、今後のデジタルサイネージの活用を考えると、クライアント側もディレクションに関する能力を高めた方がよいだろう。

 

とはいって格段にハードルが高いわけではなく、ディレクションの要素は映像制作以外でも参考になるものはいろいろある。新たなサイネージのコンテンツを作るプロセスは、ビジュアル素材を作る/用意することとは別に、①あらすじ(プロット)を考える → ②絵コンテを作る ことが必要になる。この両者は相互に関係しているので、尺が短いサイネージでは進行とビジュアルを同時に考えてしまうことが多いだろうが、勉強するという点では分けておいた方がよい。

 

一般の人にわかりやすい教材としては、漫画の描き方がよいのではないかと思う。Webの『まんが家養成講座』を見ると、次のような項目がある。

まんが家養成講座
ストーリーはどうやって作るのか?(1)
http://shincomi.webshogakukan.com/school/2007/01/1_7.html

絵コンテ(ネーム)を描く
http://shincomi.webshogakukan.com/school/2007/07/post_5.html

これに限らず同様の教材は多くあるようだ。①のあらすじは起承転結のようなものを考えればよい。②の絵コンテは、映像にかぶせる文字や図形の大きさ・位置関係・速度なども横に注釈として書いておくようにすれば用が足りる。

これは前述サイトの漫画の絵コンテなので右ページから左ページに流れるが、デジタルサイネージの場合は同じサイズの画面が並んでいる用紙を作っておいて、シーンチェンジのところを描いていく。絵を描くのが難しいと思われるかもしれないが、若い人では授業中でもノートの端にキャラクターを描いた経験のある人は多いように、意外にできるものである。

 

制作に際しては、このシーンチェンジのところは丁寧に作らなければならない。以前CG映画を作るプロセスを聞いたのだが、重要なシーンはあらかじめphotoshopで静止画としてポスターのように丁寧に作りこんでおいて、そのイメージをターゲットにCGパーツや組み合わせ表現の作業が分業で行われるというものだった。つまりサイネージでも絵コンテのラフスケッチをベースに、制作側が重要シーンをしっかり作ってから、その前後を処理していくのが、迷走しないためのよい方法かなと思ったものだった。

2018.9.7

動き方を指す用語

デジタルサイネージに動画を貼っているだけの場合はよいが、実際には静止画を使って動きのデザインをすることが多い。その場合の動かし方の表現は、やはり映画のカメラの操作から来ている用語を使うことが一般的なようだ。つまり静止画を動かす作業をする人は、映像のカメラマンになったつもりで仕事をすると、より動画らしくなるともいえる。

以前に用語説明に使った資料があったので、貼っておきます。クライアントと制作現場と営業との間で、プリントや印刷物をベースにして、動きが速いのか遅いのかを含めて、指示の書き方も大まかには決めておいた方がよいでしょう。

 

フェイドイン・アウト

不透明度を、0%から100%に、またその逆

 

チルトアップ・ダウン

カメラのレンズを上下させるイメージ

 

ズームイン・アウト

 

 

フレームイン・アウト (画面への出入り)

 

パン (視線の移動)

風景をパノラマのように見せる場合もある

 

ワイプ

画像が入れ替わる。

2018.8.31

STBって、何ですか?

ネットで動画が頻繁にみられている現代において、デジタルサイネージの用語として出てくるSTBに違和感を覚える人もいる。なぜそのようなものが必要なのか? スマホなどが発達していなかった時代には魔法の機械のように思われ、何十万円したかもしれないが、今ではSTBのない(あるいは見当たらない)クラウド型サイネージもあり、STBの存在感は薄れているようにも思う。

 

そもそもSTBとはSet Top Boxの略で、CATVや衛星放送を見るのにテレビにつけるアダプターを指していた。文字通りテレビの上に置く箱であった。その後にテレビもアナログからデジタルに移行して、しかもインターネットにもつながるような時代になり、CATVのSTBの内部はコンピュータが制御するものとなった。

一方、デジタルサイネージはUSBやSDカードを使うオフライン利用から始まったが、動画の再生をするメディアプレーヤーが必要であって、Windowsパソコンを組み込んだり、また専用のハードウェアーとしてメディアプレーヤーが作られていった。

デジタルサイネージがネット利用になると、インターネット通信の機能とメディアプレーヤーの機能を持ち合わせたものとして、デジタルサイネージ専用のSTBが登場した。これは最初は何十万円していたものが、今では一般には数万円になっている。テレビのSTBとの違いは、テレビが通信しながら映像を出すストリーミングであるのに対して、サイネージの場合は映像ファイルをダウンロードして、メモリにある映像を繰り返し表示している点であろう。

サイネージ専用という場合、コンテンツの作成や組み合わせ(Playlist)と配信スケジューリングの機能を持たせていて、そのために制作・配信アプリ、再生アプリにそれぞれの特徴が出ている。例えば映像をテンプレートと素材に分けたままにして、再生アプリがそれらを組立てて映し出すようにすると、内容更新が楽だし、通信の負担も少なくなる。また制作。配信のアプリをどこかのパソコンにダウンロード・インストールして使うか、クラウド型にしてログインできればどこからでも作業できるようにするか、という違いもある。最近ではマルチ画面のコントロールをどうするか、タッチパネルでの制御をどうするか、というのもSTBの機能と関係していて、今は実に雑多なやり方が混在しているといえる。

 

サイネージのコンテンツは基本的には動画作成に過ぎないのだが、利用面の多様さを考えると、アプリが作りやすい方が進歩する。そうするとSTB機能はパソコンにやらせた方が柔軟に対応できるので、小型パソコンをSTBと称して使う場合も多い。そのサイズはだんだん小さくなっていき、10cm角強になるとか、大型液晶パネルの背面にスロットインできるなどで、あまり目につかない。

パソコンSTBはOSに関してWindows10(IoT)を使う場合と、Androidを使う場合がある。映像を再生する機能というのはメディアプレイヤーというアプリを使うにしても、音や動画のデコードはOS寄りの仕事なので、OSのよって若干仕様が異なる面がある。それが嫌なら独自にデコーダーも含んだ再生アプリを使うことになる。これはパソコンによるDVD再生アプリがいろいろあるのとほぼ同じ状況だ。

 

パソコンはどんどん小さくなって、デジタルサイネージにもスティックPCをSTBに使う場合がある。これもWindows10とAndroidがあって、Androidの方が安いのだが、両者ともサイネージ専用STBと比べて値段はちょっとしか下がらない。しかもスティックPCの中には無理に小型に詰め込んだがために、熱に弱くて死んでしまいがちのものもある。

スティックPCほど小さくなると凄い技術じゃないかと思う人もいるかもしれないが、実はスマホのCPUやGPUと同等の技術でできていて、何千円(の低い方)の部品の流用であるので、これが技術の先端ではない。

むしろスマホやタブレットでフルHD動画の再生ができるのならば、タブレットにSTBに必要な機能をアプリとして持たせてしまえば、どこでもデジタルサイネージになるのではないか、という発想のベンダーも出てくる。

ソフトバンクのQuickSignageはタブレットをSTB/メディアプレーヤーとしても使えるもので、インターネットまわりの設定を何もしなくてもクラウド型のサイネージなる。ただし、メディアプレーヤーはあくまでタブレットに備わっているものなので、タブレットで再生できない動画や音は出ないから、オーサリングの段階で仕様を合わせておく配慮が必要になる。でも現実的にはタブレットで見れない動画というのはマルチ画面くらいしかないのではなないだろうか?