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2018.3.23

マルチディスプレイの悩み

デジタル映像出力の規格DisplayPortは、VGA→DVI→HDMIよりも高機能で、4k8kといった高解像度表示の利用を見据えたものとなっているが、逆に今までの用途では必ずしも必須とはいえなかったかもしれない。強いてメリットをあげると、ディスプレイを数珠つなぎにしてマルチディスプレイをやりやすくしているところだろうか。かつてマルチディスプレイをするは何らか専用のコントローラが必要であった。それが単なるパソコンである程度のことができるようになったからだ。

でも、どうもDisplayPortも進化しており、パソコンのハード側、OS側と、またディスプレイ側の対応が合わないと思い道理の動きはしないみたいで、よく見かけるのはJRの新車両にもあるような3台接続である。今のところはパソコン・OS・ディスプレイ全部新調するのならテストをして始められるが、すでに設置されているものを使いながらのマルチディプレイ化はリスクが高い。

 

折角特別な装置が不要になるはずの規格なのに活かせるところは限られるようにも思える。下の写真は東芝のディスプレイの例だが、ABDCの4台のディスプレイをDisplayPortで数珠つなぎにして、パソコンから4k映像を送って分割表示をさせている。パソコン側は何も細工はしていなくて、ABCD4台の1920 x 1080ディスプレイの側で、それぞれ表示するのを映像の『左上』『右上』『左下』『右下』と分担させているだけである。こうすると80~100インチに4kを出すものがいとも簡単に作れるのでナイスアイディアだと思うが、こんな設定がどのディスプレイにも可能かどうかは確かでない。

安全なつなぎ方としてはDisplayPortのHUBを使って4面にだすことだろう。ディスプレイの設置場所に普通のデスクトップパソコンを置くわけにもいかないから、弁当箱のようなパソコンを使って、信号はWiFiで受けて、マルチディスプレイをしているようだが、表示を面白くするために複雑なコントロールをするとなると、やはり何がしかの専用のアプリが必要になる。

 

またそうなるとDisplayPortでなくHDMIでも構わないはずだ。ただし実はHDMIの方が後発だから、DisplayPortを対象にマルチスクリーンのコントローラが先に開発されていたというのが現実なので、今マルチスクリーンを考えるなら素直にDisplayPortに向き合った方がいいのかもしれない。

 

DisplayPortとHDMIは似たようなもので違いが分かりにくいが、最初は出身地の問題だった。DisplayPortはPCの世界から起こり、グラフィックボードでの採用となった。伝送方法はHDDを4台並行に動かしているような4レーンの伝送であり、通信方法はパケット化方式なので、送受に高度な処理が必要になり、使うチップの原価も高い傾向にあった。

後発のHDMIはAV機器出身で3レーンの伝送で、比較すると単純な技術を使っていたので相性問題はほとんど起きないようだ。しかし両者とも4k8k時代に向かって新しいバーションが次々出てきていて流動的だし、今売られている機器類の組合わせの可否も悩ましいものとなる。しばらくはこんな悩みが続くと思うので、このブログでも設置のプロの業者のノウハウやアドバイスも紹介していきたいと思う。

2018.3.16

あると便利な小物

ビデオ信号のコネクターや規格は時代とともに進展してきているので、複数の機器をつないで使う時は、結局いくつもの違うコネクターの変換器とか変換ケーブルが必要になる。各コネクターの規格についてはWikipediaなどを見ればわかるので省略するが、時代の変遷という点では以下の図のようになる。HDMIとDisplayPortのケーブルは似ているので要注意だ。

ただし、HDMIやDisplayPortはこれら以外にスマホやタブレットに使うミニとかマイクロのものが複数あって、その大きさの変換もいくつか用意しなければならないので結構大変だ。

上記の変遷は技術の進歩によるもので、当然ながら後からできた方が機能が高くて、それ以前の規格をカバーしているはずだが、なかなかDisplayPortは広がらず、HDMIが主流になっている。両社の変換器や変換ケーブルも必須だろう。

 

USBを差し込んだりWiFiで個々のディスプレイに映像を送っているものはよいのだが、STBからディスプレイにケーブルで映像を送っている場合は、設置と共にケーブルの引き回しの課題が生じる。

例えば上の写真のように、どちらからくる通行人にも見てもらえるように背中合わせで両面に設置するとか、店舗の出入り口が複数ある場合には、同じ画面を出したいのでSTBからのケーブルを分配器で複数にわける。

またデジタルサイネージだけでなく、テレビ(ビデオ)やパソコンの出力も映したい場合には、セレクターが必要になる。これらは家庭で使うような1000~何千円の安価なものと、業務用の高いものがあって、とりあえずの実験では安価なものでよいだろうけれども、モノによっては相性が出てしまって、接続する相手によってうまくいったり、いかなかったりする場合があるので、安価なものは異なる種類のものをいくつか用意しないと、問題が起こった場合の切り分けがやりにくい。

以上の小物よりも若干高価なのが、ケーブルを延長するエクステンダーで、下記のような安いものでも(VGAやDVIなら型落ちで安い)2~3万円はするだろうし、業務用なら10万円以上する。これらはLANのケーブルを使って伸ばすので安物でも50メートル、業務用なら100メートル以上可能なものがある。店舗が2つの道路に面しているとか、2フロアに置きたい場合などに使う。

いくらLANケーブルなら扱いやすいとしても、どうしてもケーブルで延長しなければならないところは最小限にしたいから、もし離れているところが複数箇所あるなら、無線で飛ばす方式がふさわしくなる。

2018.3.9

サイネージの図版  コンテンツシリーズ⑦

街に設置されている多くのデジタルサイネージは通行人に対して何らかのアピールをする目的なので、短時間のうちに人の目を止めなければならない。そのために何かと刺激的なグラフィックスを表示しがちだが、逆効果も考慮しなければならない。スピード感のある映像は、見る人をハッとさせるが、ずっと見入ってもらえるとは限らない。だからそれらは一瞬だけ使って、その後はちゃんと認識できるものを表示するなどの組み合わせを考える。

また必ずしもポスターのような写真の魅力に依存するよりも、モーションをつけるとか、イラスト化するなどの工夫のことも、コンテンツシリーズ⑥ で書いた。

ネットを見ていたら、アメリカンコミックのキャラクターと、それを元にした実写版映画のキャラクターを比較した写真があった。ストーリーをじっくり鑑賞するなら実写の魅力は十分に発揮できるのだろうけれども、一瞬のうちに人の姿を認識するには、イラストの方が手っ取り早いなあと、あらためて思った。

しかし、アナログなドローイングであるコミックをスキャンするとかデジカメで撮ったものは、例えば左上の女性ヒロインの顔を全画面に拡大すると、モザイク状のギザギザになってしまって、デジタルサイネージで縮小拡大移動のモーションを付けるようなわけにはいかない。

これは企業のロゴマークなどでも同じで、スキャンしたものを拡大するような加工をするようなことはせずに、Adobe Illustrator(や以前はFlash)などでベクター化したものを使うのが常識になっている。そうしないと画面が汚くなるからだ。今ならCADやCGからベクターグラフィックスを取りだして使うこともある。縮小拡大時にギザギザが出ないことでシャープさと力強さが出ることがベクターグラフィックスの強みである。

上のようなイラストは、写真や絵をスキャンしたものを下敷きにして、濃度の異なる領域をパスで囲むような作業をし、そこに着色するという、絵の作り直しの作業を経て出来上がっている。これは結構面倒な作業ではあるが、要するにアナログ描画も一旦ベクターグラフィックスにすれば、縮小拡大変形が自由になるので、ロゴやマークや製品写真、キャラクターなどで日常的に使いまわされている。

さらにベクター化した素材はアニメーションにも向いていて、以前主流だったFlashといわれたソフト(今はAdobe Animate 下のYouTube参照)以外でも、簡単なアニメなら多くのグラフィックソフトでも作成できるようになっている。

 

What is Adobe Animate CC (October 2017) Adobe Creative Cloud

 

こんな凝ったアニメはデジタルサイネージでは使わないにしても、一瞬スピード感のあるキャッチーな映像を出したければ、ベクター化したグラフィックスにモーションを付けるのが適している。縮小拡大や速度や尺をいろいろ変えてみることが自由にできるからだ。

2018.3.2

サイネージの可読性  コンテンツシリーズ⑥

YouTubeに文字がスクロールしているだけの映像を上げている人が居るが、いくら画面で見せるにしても、SNSのような文字を読ませるメディアを使った方が文章は読み易いだろう。本を読むことにも共通しているのだが、読み手が内容を理解しながら読み進む速度は一定ではないからだ。分かりにくいところは行ったり来たりしながら読むものなので、読み手が自分でスクロールのコントロールができる必要がある。デジタルサイネージも読み手がコントロールしながら文字を読むようにはなっていないので、文字の出し方というのは相当配慮しなければならない。

サイネージにおいてどれだけ文字を読ませられるかは、サイネージの設置されている場所による。病院の待合室のように座っていて、しかも読むに十分な時間がある場合は、パワーポイントのプレゼンテーションくらいの表示はできる。掲示板のように、わざわざそこに来てもらって立ち止まって読むものも同様である。実際にパワーポイントを静止画のスライドショーにして使っているサイネージも多い。

一方で路傍のように通行人を相手にした場合は、ありきたりのパワーポイント的な見出しと本文の組み合わせのスライドショーでは振り向いてもらうのは難しい。もっと訴求点を絞り込まなければならない。デジタルサイネージではいろんなビジュアル効果が使えるとはいうものの、見せたものを人の記憶に留めるには、やはり重要なポイントは文字化して、大脳に覚え込ませる必要がある。見た印象だけではその時だけ感情を揺さぶるに過ぎず、その感情はすぐに薄れていくように人のアタマはできているからだ。

 

つまり感情を揺さぶるビジュアル効果と、記憶に結びつく文字は上手に組合わせなければならない。しかも通行人のように数秒しか画面の前には居ない人を対象にするのだから、文字をいっぱい並べて読むのに1分かかるようでは、もう人は数十メートル先の視界を見ているようになってしまう。だから文字を読ませるといってもチラッとみてわかるような文字量とか表現方法(コピーライティングを含めて)にすることが、デジタルサイネージの可読性を高めるコツになる。

たとえば俳句程度の文字数にまとめるコピーライティングが重要だろう。これくらいなら静止画ではなく、動きのあるビジュアルとはある程度共存できるが、もっと文字数が多くなると画面の動きは邪魔になり、むしろ静止画の方が読み易い。しかしそうなると人の足は止めにくくなる。

 

文字の問題はいつも、動かした方が目をひきやすいということと、むやみに動かすと読みにくいということのバランスに悩むものだが、動きに耐えられる堅牢なコピーを心がける。人は文字列の最初から一文字づつ順番に読んでいくのではなく、言葉になった文字の固まりを認識する。だから次のような間違いでも、ぼやっと見ていると読めてしまったりする。

実際にこんな間違いは起こさないだろうが、これくらい当たり前のフレーズなら、バックに動画が動いていても、ゆっくり文字が動いてもわかってもらえる。わかりにくい言葉や難しい言葉などの文字表現は避けた方がよく、むしろ馴染んだ言葉を使う方がビジュアル表現との相性はよくなるだろう。

またデジタルサイネージは紙のパンフレットよりは看板に近いものなので、印刷物では行いがちな微細なフォント加工はかえって邪魔になる場合がある。そういう点ではテレビのテロップに近いものだろう。もし印刷物やWebとサイネージのコンテンツに連携をもたせて最初から設計できるならば、最初に印刷のデザインをするよりは、画面向けのデザインを先行させて、後で印刷用に凝った表現を加えて使う方が、サイネージとしては見やすいものになるのかもしれない。

 

2018.2.23

サイネージのコントラスト  コンテンツシリーズ⑤

昭和のムカシ、映画の看板は職人さんが手で描いていた。旅行していると同じ映画でも各地の看板に筆の差が出ていて、中には役者さんに申し訳ないほど似ていない場合もあった。

これは今のように写真を大きく伸ばすデジタル技術がなかったからでもあるが、写真よりも職人さんの筆の方が好まれた面もあった。親しみを持てるという点では似顔絵的でもあり、また迫力という点では劇画的でもあった。イケメン役はさらに美男子に、悪役はさらに残忍に、という表情の脚色もされただろう。

また実際のグラフィックスの効果としても単純な写真再現では看板として役不足で、下の右のもの写真なのだが職人の手が入ったレタッチになっている。

 

プロのカメラマンが綺麗に撮った写真でもレタッチ職人が筆でお化粧をしている理由は、写真は遠目で見た場合にボヤッと間延びした絵になってしまいがちだからだ。つまり写真に何か欠陥があるのではなく、こういう屋外看板が掲げられる場所の問題なのである。

白昼の太陽光の元ではくっきりとした陰影がつき、人の目にとってはコントラストの強い情景が晴れの日の屋外である。この強コントラストの情景に負けないようにグラフィックスを掲げようとすると、写真もすごくコントラストの強いものに直さなければならないからだ。

サイネージのコンテンツにの場合でも、屋外用はコントラストを強くすることは意識した方がよい。でもそれでサイネージが屋外で使えるというわけにもいかない。

サイネージを屋外に設置するのはいろいろと設備面のハードルが高くなるが、パネル設備の明るさや温度管理ということよりも優先して、いったいどういった向きに設置するのかというのが問題になる。

上の写真の街角でいえば、右に白い壁面がみえるが、おそらくそこは南向きで、そんなところで使えるような液晶ディスプレイはないだろう。正面に絵が描いていあるところがあるが、ここは西向きで西日はあたらないだろうから、デジタルサイネージもいける。もっとも日の出には照らされるだろうが、そんな時に看板を見ている人はいないだろうから問題ない。

逆にカメラの位置ではきっと西日が強烈にあたるので、夕方の人通りを対象にする場合は、あまりサイネージには向かない。夜間用ならよいだろう。

写真の左側の日陰になっている壁面は北向きで、手描きの看板なら目立たない場所なのだが、発光するデジタルサイネージの場合はむしろ見やすく好都合になろう。

 

実際には映像を制作する時点でサイネージの設置条件はわからない場合が多く、コントラストの不足とか過剰については、設置されたパネルのリモコンなどでの調整を行うのが関の山である。一方でショッピングモール内とか、ちょっと薄暗いホテルのロビーなどのような環境は屋内設置なのでコントラストを強めることは必要ない。

コンテンツの制作前にある程度設置場所が予測できたとして、屋外でもボヤケないコンテンツとしてどんな工夫があるのだろうか? それは写真中心よりもイラストとか大きな文字とかを効果的に使うことだろう。